進む裁判のIT化 弁護士や裁判官がAIに代わられる日も間近?ひろゆき氏「AIと法律は相性がいい」と前向きも「刑事裁判の判決をAIに任せると冤罪が増えるかも」と懸念

5月21日から、民事訴訟の手続きが全面IT化される。裁判に関連する各種書面がオンラインでやりとりできるようになるが、海外ではすでに裁判にAIを導入している例もある。弁護士の世界でも、AI活用で効率化を進める流れがある中、IT化やAI化によって、どのような弊害があるのか。『ABEMA Prime』では、法律・技術の面から有識者が議論した。
■民事訴訟のIT化で件数が激増?

2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は、「AIと法律は相性がいい。裁判所の判決は必ず公開されていて、『こういう事件の正解はこれ』と、すべてデータが出ている。分野ごとに詳しい弁護士はいるが、すべての判例に目を通して判断できる人間は、ほとんどいない。いずれ弁護士も裁判官も、AIがベースになるのではないか」と予想する。
民事訴訟手続きのデジタル化は、5月21日以降に提訴された民事裁判が対象だ。訴状や証拠等のオンライン提出等、ウェブ会議で期日に参加(証人尋問)、訴訟記録の電子化・オンライン閲覧などが可能となる。目的としては「誰でも利用できる司法アクセスの向上」「手続の迅速化と効率化」「ペーパーレス化とコスト削減」「電子データによる訴訟記録管理」が挙げられる。
ひろゆき氏は「個人でも訴訟は簡単にできる。書式も決まっておらず、書いたものを事務員に修正してもらい、数千円からスタートできる。ただ、今までハードルが高かったために、訴訟が少なかったのだろう」と考える。「オンライン化により『Xの発言をコピペすると、訴状が裁判所に自動で届く』となれば、裁判は急増する。ただデジタル化によって裁判件数が100倍になっても、裁判所は儲からない。そこにコストが発生する時代になるのでは」。
元エンジニアでITアナリストの小林啓倫氏は、司法におけるAI活用には慎重さが必要と考える。「デジタル化自体には賛成だが、弊害はある。1つがAIによるスパムで、人間が『あいつムカつくから、訴訟を起こそう』と言えば、申請から何から全部AIがやってくれる」。
ひろゆき氏は「原告は証拠を適当にでっち上げ、本人が行かなくてもいい。しかし被告は、証拠を持って反論しないといけないため、AIではなく人間の弁護士に頼むことになる。AI利用により数千円でバンバン裁判を起こされて、弁護士代がすごくかかる被害者が増えるのでは」と心配する。
小林氏は「2025年にデジタルの議事法廷で、AIエージェント同士で闘わせた研究がある。自律的に計画を立てさせた結果、最終的に相手の負担を高めるような戦略を取り、バンバン証拠を出すようになった」といった事例を紹介した。
■AIが弁護士、裁判官になる日が来る?

弁護士でリーガルテック企業「GVA TECH」の山本俊代表は、「DXではオンライン上にデータを置くところで止まっているが、そのデータを前提としてAIに一定レベルの業務をやってもらう動きが進む」と推測する。
そして自社サービスでは「弁護士向けに『AI書面作成』を提供している。訴状を作るにあたり、弁護士の思考プロセスは複雑だ。原告と被告で食い違う証拠や時系列を整理してから、裁判官へ持っていく。裁判官から見て、主張立証が足りているかを整理して、勝てるように書面に落とし込むために、証拠の解析や、主張の分析をAIにしてもらう」のだそうだ。
一方で、AI活用について小林氏は、「弁護士が正しく使えるか。アメリカではChatGPTで作った訴状に、存在しない判例が載っていた例がある。ツールがそろうのと、正しく使えるのは別の問題だ」と指摘する。
山本代表は「弁護士向けにサービスを工夫しているが、裁判官の方が相性はいい」と語る。「弁護士はクライアントから証拠を集めて、いい証拠が集まれば勝つ可能性が上がる世界だ。裁判官は両者の主張も証拠も全部集まった状態で、データさえあれば、AIで適切な判断を下しやすい。裁判官は専門性が高いため、過去の判例で『どのような思考プロセスか』が決まっている。それを当てられれば、弁護士向けより良い結果が出そうだ」。
小林氏は「今のAIには、バイアスの問題もある。そして機械学習により、判例主義に基づく結果は出せるが、新たな判断を下せるか。アメリカでは差別に対する画期的な判決が下されたが、AI裁判官では絶対にできない」との問題点を示す。
加えて、「間違ったことを言う『ハルシネーション』があり、ここをつぶすのは非常に難しい。技術で解決するのか、運用で解決するのか。しっかり組まなければいけない」と話す。
ひろゆき氏は、今後は「資料を読み込まずに判断できるようになり、裁判官が余る時代になる。事故では大体、保険会社の計算書通りの判決になる。それと同じようにAI判決も使われるだろう」と考える。「ただし、判決を下した責任のハンコを押す係として、裁判官は残り続ける。ほとんど作業をせず、ハンコを押すだけの立場に変わり、『結婚の“両性”とは何か』といった所だけ、最高裁判所が一生懸命やる」。
AI裁判官の導入により、「冤罪が増えそう」といった意見もある。これには「日本の刑事裁判は有罪率99%のため、過去の判例を元に判断すると、ほぼ有罪を出してしまう。『同じ条件には、同じ結論』とすると、同じような冤罪事件を産んでしまうため、刑事事件で全面AI化は微妙かもしれない」と述べる。
小林氏は「段階を踏む中で、制度が決まってくるだろう。車で高速道路を突っ走り、事故を起こしても、さほど大きな損害にはならない。これはガードレールなどで守られているからだ。江戸時代にいきなり車が突っ走れば、皆死んでしまう。データにもガードレールを整備しないといけないが、その前にどんどんAIが進化して問題になっている」との現状に触れた。
(『ABEMA Prime』より)
