「よくぞこれを」という映画もセレクト、「EUフィルムデーズ」…加盟各国の在日大使館が選んだ26作上映
欧州連合(EU)加盟国発の注目映画26作品を上映する「EUフィルムデーズ2026」が5月16日から東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで始まる。
上映作品を選んでいるのは、各国の在日大使館・文化機関。国のプロモーションの側面を持ちながらも、自国賛美一辺倒にはならないセレクションに「文化的な成熟度の高さ」がにじむ、ユニークな映画祭だ。
日本初公開作も多数
主催は、駐日欧州連合代表部と加盟各国の在日大使館・文化機関で、今年が24回目。メインプログラムで上映するのはそれぞれの国で近年製作された注目作だ。今回は26か国が参加。5月29日まで2週間にわたってそれぞれの国の映画が上映される。そのうち18作品は日本初公開だ。どんな作品が集められているのだろう。共催するイメージフォーラムの山下宏洋さんに聞いてみた。
一堂に会する面白さ
山下さんは、国内外から注目を集める映像アートの祭典「イメージフォーラム・フェスティバル」のディレクター。世界各地の映画祭・映像祭などでも審査員を務め、国際的な映像プログラミングも多数行っている。「EUフィルムデーズ」の運営には2024年から携わる。
「EU加盟国の在日大使館・文化機関が、日本の観客に向けて『自分たちの国を代表する一本』を選び、それが一堂に会するというのがとても面白いところ」と山下さんは話す。「単純に『自分たちの国は素晴らしい』というだけでなく、国によっては、現在抱えている問題を果敢に取り上げた作品を選んでいる。ほかにはない幅広さと深みのあるセレクションになっていると思います」
海外の著名映画祭などで注目を集めた作品もあれば、その国以外にはあまり広がっていない作品も。「日本にはなかなか入ってこないような作品も結構選ばれているので、そうした作品を見られる場としても魅力的なのでは」と山下さんは言う。
おお、こういうのが出てくるんだ
今回のセレクションでも、山下さん自身、「おお、こういうのが出てくるんだ」と面白く感じることが多々あったという。
中でも驚いたのは、アイルランド代表の「サナトリウム」。同国のガー・オルーク監督によるドキュメンタリーだが、撮影地はウクライナのオデーサ近郊。旧ソ連時代に建てられた黒海沿岸の保養所に去来する人々を映した作品だ。
「時が止まったようなのどかな場所なのですが、戦時下なので、空襲警報が鳴ったり、そこで傷を癒やしている兵士がいたり、戦争の影が実は入り込んできていることがビビッドに描出されている。EU全体にとってウクライナの戦争というのは重大な状況でしょうが、とはいえ、アイルランド大使館が、自国を代表する作品として、ウクライナを描いたこの映画を選んだことは、すごく興味深いと思います」
別の意味で「よくぞ、これを選んだな」と感じたのは、ポルトガルの「Fuck the Polis」。日本でも注目が高まる現代映画作家リタ・アゼヴェード・ゴメス監督による新作で、内容は「かなり先鋭的でアート的」。強烈な題名とは裏腹に古代ギリシャのポリスへの敬愛がこめられているという。ポルトガルはまったく出てこないが、日本のディープな映画ファンの熱いまなざしを集める上映となりそうだ。
ギリシャ代表の「マーダレス」にも山下さんは注目する。20世紀初頭、因習にとらわれた孤島を舞台にしたダークな衝撃作。過酷な運命に直面する少女たちを「救う」べく禁断の境界を踏み越える女薬草師の物語で、原作は、アレクサンドロス・パパディアマンティスの小説「女殺人者」だ。
とにかくセレクションは実に多彩。「世界共通課題である老いがテーマ」という作品も目立ったが、一方で、少年少女を主人公に現代を映す作品も。オランダの「心をつないで 思いを紡いで」や、昨年の東京国際映画祭で上映され話題を呼んだスロバキアの「大丈夫と約束して」などがそうだ。
さらに、愛され続ける絵本「ラチとらいおん」の作者と日本の関係を描くドキュメンタリー「ライオンにいてほしい」(ハンガリー)や、2024年のカンヌ国際映画祭でクィア・パルム賞を受賞した「世界の果てまで3キロ」(ルーマニア)など気になる作品ばかり。さまざまな人の関心を集めそうだ。(編集委員 恩田泰子)
国立映画アーカイブでの「クラシック・セレクション」も
今年は、EU加盟7か国のクラシック作品を上映する特別プログラム「EUフィルムデーズ2026―クラシック・セレクション」も東京・京橋の国立映画アーカイブで実施(5月19〜24日)。「ヨーロッパ映画の芸術的な部分を深めてきた映画作家たちの軌跡に触れられる機会」(山下さん)だ。
メインプログラムに関しては、ゲストによる上映後トークが用意されている回も。特別トークイベントもあり、16日には「文学作品を映画化する:ギリシャと日本の作り手から」が、「マーダレス」のエヴァ・ナテナ監督と三島有紀子監督を招いて行われる。
※「EUフィルムデーズ」は東京での会期終了後、名古屋、広島、京都、福岡でも順次開催される。公式サイト=https://eufilmdays.jp/year2026
