【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#34 渡辺敏史、スッポン丸に乗る!
スッポン丸はオードリー・ヘプバーン!
我が愛車のスッポン丸(フェラーリ328GTS)は、すべてが最高だ。その素晴らしさは、生産から約40年後の今乗ると、時代が生んだ奇跡に思える。
【画像】渡辺敏史、スッポン丸こと清水草一の愛車『フェラーリ328GTS』に乗る! 全13枚
適度な加速の鋭さと、スタビリティの低さが織りなすハーモニーは、すべてのドライバーを冒険者にしてくれる。

清水草一(右)の愛車『スッポン丸』を渡辺敏史(左)が試乗! 清水草一
そしてもちろんデザインはあまりにもキュート。女優で言えばオードリー・ヘプバーンだ。
そんなスッポン丸に試乗して、同業者の渡辺敏史氏(以下ナベちゃん)はどう感じるのか。ナベちゃんは、正確無比な新車インプレッションに定評のある自動車ライターであり、自身、FD (3代目RX-7)を所有する古いスポーツカー愛好者でもある。
当日はあいにくの天気で、直前に雨が降り出した。これじゃ限界性能を試してもらうことはできないが(アタリマエ)、とにかく味見してもらいたい。
広いところまで私がクルマを移動させ、そこでナベちゃんに運転席を譲った。その瞬間が、最もドラマチックだった。
その瞬間が最もドラマチック!
ナベちゃんは身長181センチ、体重約100キロの巨漢。一方、スッポン丸のキャビンは極めて狭く、特に天井がかなり強烈に低い。乗り込もうとする彼を見た瞬間、ひょっとしてムリかも? という危惧が芽生えた。
オレ「の、乗れる?」

スッポン丸に何とか乗り込む途中の渡辺敏史(身長181センチ、体重約100キロ)。 清水草一
ナベ「ちょっとシート下げさせてもらいます」
ナベちゃんは動きの渋い328のシートをいっぱいまで下げ、狭いキャビンに巨体を少しづつ押し込んだ。一番キツそうなのは、ぶっといフトモモをステアリングの下に通すところだ。
オレ「は、入った!」
それはかなりムリヤリな姿勢だった。ステアリングは大きく開いた股ギリギリ。幼児用の足漕ぎ車に大人が乗っているみたいに見える。
次なる難題はシートベルトだった。スッポン丸のシートベルトはロック機構の調子が悪く、1センチづつ辛抱強く小刻みに引き出さねばならない。ナベちゃんは、窮屈な姿勢に耐えつつ、なんとかそれを実行した。ボンデージショーみたいに。
昔のレーシングカーのように!
ナベ「はぁ。では発進します」
オレ「よろしく!」

「328ってこんなに乗りやすかったでしたっけ?」 清水草一
ナベ「1速、ここですよね」
オレ「うん。ここ」
ナベ「あれ、ずいぶん発進ラクですね」
オレ「そうなんだよ! すごいトルクあるでしょ?」
ナベ「エンジンレスポンスの鋭さからすると、ストッて止まっちゃいそうですけど、粘るんですね」
オレ「うん。不思議なほど!」
328のエンジンレスポンスの良さと低速トルクの両立は、排気系の軽さとフライホイールの適度な重さよるのかもしれない。アクセルを軽く煽れば、昔のレーシングカーのように軽やかに吹け、それでいて3速発進すら可能なのである。
雨の中、ワイパーを動かしながらスッポン丸は走る。ワイパーを動かしたのは6年ぶりか。久しぶりすぎて動くかどうか不安だったけど、動いてよかった。
オレ「328の助手席、意外と快適だなぁ」
ナベ「運転席も快適ですよ。328ってこんなに乗りやすかったでしたっけ?」
オレ「考えようによっては、快適GTだよね!」
ナベ「そうですね。速度レンジを上げるとわかりませんけど。ウフフ〜」
328は古いだけに、個体差がデカい(たぶん)。そしてスッポン丸のコンディションは猛烈にスバラシイ(たぶん)。それでも一度、走行中に炎上したんだけど。
渡辺敏史の328GTS短評!
試乗後、ナベちゃんから328GTSの短評が届いた。
「まあとにかく小さくて見切りがいい。ピラーが細くても成立した時代のクルマゆえの繊細な成り立ちが、昔のクルマの良さなわけですが、それに加えてパワートレインの特性もクラッチの躾けもよく、ド渋滞の中をまったくストレスなく扱わせていただきました。

「絶対速度より疾走のライブ感が最大の美点!」 清水草一
ほぼほぼ40才というクルマに対して絶対的な動力性能を価値として求める人もいないと思いますが、カチ回さずともエンジンの存在感にケチのつけようはありません。加えてシフト操作には金属同士の触れ合いがこれでもかと味わえるわけです。
絶対速度より疾走のライブ感こそが多くの旧車、そして328の最大の美点ではないでしょうか」
ありがとうナベちゃん。これもひとつの自動車ロマンだよね!
(つづく/隔週金曜日掲載、次回は5月29日金曜日公開予定です)
