気候変動は「食べ物の量」だけでなく「質」も下げている
気候変動というと、猛暑とか洪水とか、目に見える災害を想像しがちです。でも、その影響は、私たちの食卓にも入り込み始めているみたい。
最近の研究で、「野菜や穀物そのものの栄養価が下がっている可能性」が指摘されているんです。米テックメディアFuturismが、The Washington Postや最新研究をもとに報じています。
今の食べ物は祖父母世代より栄養が薄くなっている
「同じものを食べていても今の食事は昔より栄養密度が低い」と語るのは、ワシントン大学の環境健康学者クリスティ・エビ氏です。
2025年に学術誌『Global Change Biology』へ掲載された研究では、米や小麦、大豆など43種類の作物を調査。その結果、1980年代後半から、タンパク質や鉄、亜鉛などの栄養素が平均3.2%低下していたことがわかったそうです。
3%程度なら誤差に見えるかもしれません。でも、世界にはすでに栄養不足ギリギリで暮らしている人たちが大勢います。研究チームは、このわずかな低下が、数百万人規模の健康問題につながる可能性があると警告しています。
特に影響を受けやすいのは、子どもや妊婦です。鉄分不足による貧血は、発達障害や妊娠トラブル、場合によっては命に関わることもあります。
原因は「空気の変化」だった
では、なぜ栄養価が下がっているのでしょうか。
研究者たちは、その背景には大気中のCO2増加があると考えています。CO2は、植物にとって重要な存在です。植物は空気中のCO2を取り込み、光合成によって成長しています。そのため、一見すると「CO2が増えれば植物にとって良いことなのでは? 」と思ってしまいます。
実際、植物は大きく速く育つそうです。でも問題は、「大きく育つこと」と「栄養が増えること」は比例しないということでした。植物はCO2だけではなく、土から吸収する鉄や亜鉛も必要です。
ところが、CO2が増えても、ミネラルの吸収量はそれほど増えません。その結果、植物だけがどんどん大きくなり、栄養そのものは全体に薄まってしまうのです。
植物は効率化している
さらに厄介なのが、「気孔」と呼ばれる葉っぱの小さな穴です。小学校の理科で、葉っぱを顕微鏡で見た記憶がある人もいるかもしれません。口のように開閉する、あの小さな穴です。植物は、この気孔を開いて空気中のCO2を取り込み、光合成をしています。ただ、気孔を開くと、同時に葉っぱの中の水分も蒸発してしまいます。つまり植物にとって気孔は、「空気を取り込みたい。でも水は失いたくない」というジレンマを抱えた場所なんです。
ところが、大気中にCO2が増えると、植物はそこまで大きく気孔を開かなくても、必要なCO2を取り込めるようになります。すると、水分の蒸発も減ります。
一見すると効率化ですよね。でも、植物は水と一緒に、土の中の鉄や亜鉛などのミネラルも吸い上げています。 そのため、水の動きが変わることで、ミネラルの取り込み方にも影響が出る可能性があるそうです。 研究者たちは、こうした変化が、作物の栄養価低下につながっている可能性があると考えています。
この現象を長年研究してきたコロンビア大学の植物生物学者ルイス・ジスカ氏は、「植物は効率化しているが人間にとっては代償がある」と語っています。
実際、過去の研究では、CO2増加による栄養低下によって、将来的に1億7500万人が亜鉛不足の影響を受ける可能性があるとも指摘されています。
気候変動の話題が出るたびに、氷山や気温、昆虫の減少などにばかり注目していましたが、まさかこんな形で食べ物の栄養素にも影響が出るなんて。心配になると同時に、全ては繋がっているのだなぁと感心させられました。いや、感心している場合じゃないんですけどね。
Source: Futurism

