次回5月20日(水)よる10時 第7話を放送 日本テレビ系水曜ドラマ「月夜行路 ―答えは名作の中に―」(毎週水曜よる10時放送)。

数々の名作ドラマレビュー記事を手掛ける「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平氏は、5月13日(水)放送の第6話をどう見たか?場面写真とともに紹介する。

(※以下、第6話のネタバレを含みます)

本作は、家族から蔑ろにされ寂しさを抱える専業主婦の涼子(麻生久美子)が、文学オタクで洞察力に優れたバーのママ・ルナ(波瑠)と出会ったことから始まるロードミステリーだ。

涼子の“元カレ探し”、そしてその中で浮かび上がったルナの“ダーリン”の謎が解き明かされ、前回までの大阪編はひとつの大きな区切りを迎えた。そこから心機一転、今回から東京編へと突入した。再び、おなじみの文学ミステリーへと舞い戻るのか?と思いきや、その楽しさは存分に残しつつも、大阪編以上に“人情”の濃度を増した、とてつもなく“いい話”であった。

<映像と空気感に宿る“日本テレビらしさ”>

テレビドラマにおける“日本テレビらしさ”とは何だろうか。

個人的に思い浮かぶのは、知られざる名作『すいか』(2003年)に代表されるような、あの空気感だ。洗練され過ぎていない都会の風景。下町ほどコテコテではなく、ましてや高層ビルが立ち並ぶキラキラ感もない。かといって、小洒落ていて羨望を抱くような景色というわけでもない。けれど、なぜか落ち着く。そして、ちゃんと都会でもある――そんな説明しがたい“生活感”のある映像は、日本テレビのドラマでしか味わえないものだ。

そして、その感覚を、今回の第6話を見ながら何度も思い出していた。大阪編を終えて東京へ戻り、下北沢を舞台に描かれた今回は、どこかあの“日テレドラマ”特有の質感が確かに漂っていたのである。

<カジュアルさの美学と、人情で描かれる第6話の核心>

そして、もうひとつの“日本テレビらしさ”とは、やはりどこまでも“カジュアル”であることだろう。

たとえ作品に思想が込められていたとしても、それを前面に押し出さない。ギミックや構成が凝っていても、あくまで軽やかに見せる。難しさを感じさせず、どこまでも視聴者目線で物語を運んでいく。上から目線にならず、嫌味もない。それがテレビドラマにおける“日本テレビらしさ”だ。

もちろん、その“カジュアルさ”は時に、視聴者に寄り添いすぎたり、物語を簡単に描きすぎたりする危うさも孕んでいる。だが、配信ドラマが台頭し、放送局ドラマも“追っかけ配信”によって局ごとの色が薄れつつある今、この“日本テレビだからこそ出せるカジュアルさ”は、むしろ大きな武器になっているのではないか。

そう感じさせたのは、今回の第6話が、あまりにも“巧い”にもかかわらず、その巧さをおくびにも出さず、どこまでも自然体で、気軽に見せ切ったからだ。

<“ミステリーを超えた人情”と“バディの変化”>

第6話は、美しすぎるほどに完結した大阪編を経て始まる、第2章とも言うべきエピソードだった。だからこそ普通なら、再び“一話完結の文学ミステリー”へと仕切り直しても成立したはずだ。実際、表面的には今回もその構造をなぞっている。

しかし、そこで描かれていたのは、単なるミステリーではなかった。今作最大の魅力である“人情”が、これまで以上に深く描かれていたのだ。今回の強盗殺人未遂事件は、“悪意”よりも“誰かを思う気持ち”に重きが置かれており、その構図が、新たな縦軸である“ルナと家族”の物語とも見事に重なっていた。

さらに今回は、涼子がルナにとっての“ワトソン”であることも明確に示された。それは間違いなく大阪編を経たからこそ成立した関係性であり、二人がただの“事件を解決するコンビ”ではなく、互いを理解し合った存在になっていることが強調された形だ。

<大胆な構成が導いた友情の物語、そして次回への期待>

また、俯瞰して見れば、本作の構成はかなり大胆だ。本来であれば、涼子の“元カレ探し”も、ルナの“ダーリン”も、終盤に向けて引っ張り続けるほうが、連続ドラマとしては定石だっただろう。ミステリーを小出しにし、終盤で一気に回収する。そのほうが盛り上がりも作りやすいからだ。

たとえこの構成が原作ベースであったとしても、テレビドラマでそれを組み替えることは珍しくはない。けれど今作は、あえてその方法を選ばなかった。なぜなら、このドラマはミステリーよりも、あるいはオリジナリティであり強みでもある“文学”よりも、最終的には“ルナと涼子の友情”を大きな柱としているからだ。

だからこそ、涼子の“元カレ探し”も、ルナの“ダーリン”も、序盤のうちに一度決着をつけた。そこで互いの傷や孤独を知り合ったからこそ、さらに進化(深化)した第2章へ進むことができる。つまり大阪編とは、“バディ誕生編”でもあったのだ。

その意味でも、あの“最終回のような余韻”を中盤前に持ってきた構成が生きてくる。第6話で展開された、大阪編の意味付け、人情の深度、新たな縦軸との関連性、そしてドラマ全体の構成。そのすべてが、見事に噛み合っていた。

しかし、“巧い”は時に、その技巧が鼻につくことがある。作者の技量を見せつけられているような圧を感じるときもある。けれど今作には、それがない。むしろ作者の優しさがにじみ出ているかのようだ。

ここまで巧妙な構成を組みながら、あくまで“いつもの感じ”として自然に見せてくる。しかも、その軽やかさの中で、大阪編よりもさらに深度を増し、面白さまで更新してくる。
「どうだ、面白いだろう?」と押しつけるのではなく、視聴者に寄り添いながら、それでも決して媚びることなく、しっかりと求められているエンターテインメントを差し出してくれる。そして、その期待を超えてくる――そのさじ加減こそ、実に“日本テレビドラマらしいカジュアルさ”だと感じたのだ。

再び現れた縦軸――ルナと父の関係性、父が残したパソコンのパスワード探し。作品によっては、「またすぐに解決されない謎解きに付き合わされるのか……」という煩わしさに転びかねない構成でもある。だが今作は、その題材すらどこまでもキャッチーで、巧く、けれどカジュアルに見せてくる。だからこそ、また来週が楽しみになってしまうのだ。

<番組情報>

原作:秋吉理香子『月夜行路』(講談社)
脚本:清水友佳子
音楽:Face 2 fAKE
チーフプロデューサー:道坂忠久
プロデューサー:水嶋陽、小田玲奈、松山雅則
トランスジェンダー表現監修:西原さつき、若林佑真、白川大介
演出:丸谷俊平、明石広人
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ

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・Instagram:@getsuyakouro
・TikTok:@getsuyakouro
・ホームページ:https://www.ntv.co.jp/getsuyakouro/
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<原作情報>

『月夜行路』 
四十五歳の誕生日、孤独な主婦の沢辻涼子は家を出た。偶然出会った美しいバーのママ・野宮ルナは、深い文学知識と洞察力を活かした推理で、かつての恋人への涼子の思いを言い当てる。最愛の彼はなぜ涼子のもとを去ったのか?二人が始めた元彼探しの旅先で、明らかになる秘密とは。涙のサプライズエンディング!
発売中 講談社文庫

『月夜行路 Returns』
元彼探しの旅から戻った涼子が再びルナを訪ねたとき、店に届いた古いノートパソコン。誰が、何のために送ってきたのか。涼子は、パソコンを開くパスワード探しを手伝うことに。行く先々で事件に巻き込まれながら、パスワードを試していく二人。願いを込めた仕掛けに挑めるチャンスは、5回。鍵を握るのは、1冊の本。
発売中 講談社

【秋吉理香子 プロフィール】
兵庫県出身。早稲田大学第一文学部卒業。ロヨラ・メリーマウント大学大学院にて映画・TV番組制作修士号取得。2008年、第3回Yahoo! JAPAN文学賞を受賞し、2009年に『雪の花』でデビュー。主な著作に『月夜行路』『悪女たちのレシピ』『終活中毒』『無人島ロワイヤル』『暗黒女子』などがある。