過失運転致死傷の疑いで逮捕された若山哲夫容疑者(左・関係者提供)と磐越道で大破したマイクロバス(右・共同通信)

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「"先生"はもともとゴールデンウィーク前、『北越高校の引率で"富山"に行く』とおっしゃっていたんです。だから最初にニュースを見た時も先生とは思わなかった。もしかしたら行き先すら把握できていなかったのかな……」──ある飲食店店主が "先生" と呼ぶのは、磐越道でバス事故を起こした若山哲夫容疑者(68)。店主は若山容疑者の事故直前の様子について、そう訝しげな表情で話した。

【写真】「逮捕時とはまったく顔つきが...」陸上部のコーチとして、部員らと写真に写る若山哲夫容疑者ほか

 前編で報じたように、容疑者は最近、足腰の調子が悪く、徒歩5分の距離にもタクシーを使うような状態だったという。今年に入り複数回、自家用車やその代車で事故を起こしており、事故前の直近2週間だけで3回は事故があったことも判明している。

 周囲が抱いていたのは若山容疑者の足腰への不安だけではなかった。曰く、「魂が抜けたように、ボーッとすることが多い状態だった」という。【前後編の後編。前編から読む】

 若山容疑者はかつて、新潟陸上界の名将だった。自身も大学を卒業するまで選手として活躍し、その実績をもとに東京学館新潟高校に指導者として採用された。2009年ごろまでは同校の陸上部監督として生徒を指導し、その後も県内の開志国際高校や新潟医療福祉大学で陸上コーチを務め、県内の陸上界に貢献した。

「開校からわずか4年で、開志国際高校の陸上部を全国駅伝大会初出場に導いた人物。全国に優秀な選手を輩出しており、腕は確かです」(地元紙記者)

 そんな若山容疑者も2022年ごろまでに指導者の道を退いた。その後は胎内市の非常勤職員としてマイクロバスの運転などをしていたが、完全に陸上界から去ったというわけではなかったようだ。前出の地元紙記者によれば、ことし3月までは地元のランニングクラブに勤務していた。

 容疑者と懇意にしていた飲食店の店主が話す。

若山容疑者に起きていた変化

「1年ほど前、『新潟で子どもに陸上を教えることになった』と聞きました。先生はここ最近まで新潟市内にアパートを借りて暮らしていたんです。自宅からだと遠く、通いが大変だからだと思います。だから、胎内市にはたまに帰ってくる生活でした。こちらにくるときは『今日、帰ります』とメールを送ってきてくれてね。

 3月にお会いしたとき、『そろそろ(勤務が)終わりなんだ』と話していて、もしかしたら事故や、足腰が弱いことで続けられなくなったのかなと思いました。でもコーチを引退しても、陸上や子どもを心から愛している方でね。体があんなふうになる前は箱根駅伝の応援にも現地へ行くくらいでしたし」

 この店主によると、ランニングクラブを辞める前後、若山容疑者に異変が起きていたという。

「なんというか、覇気がなくなってしまったんです。いつものように店のテレビを観ている時も、一点を見つめて魂が抜けてしまったような感じでボーッと……。お歳のせいもあるかと思いますが、先生はここ最近かなり耳が遠くなっていた。これまで通り話しかけても、伝わらないことが増え、こちらも大きな声を出すようになりました。周囲の方からも"反応がない人"と思われていたでしょう」(同前)

 容疑者の自宅周辺では、複数の近隣住民が「最近、挨拶が返ってこなくなった」と話している。耳の聞こえに何らかの変化があったのだろうか。

「はじめは『富山遠征』と聞いていました」

「ゴールデンウィークの前の週くらいに『先生、連休はどうするの』と聞いたら、『6日だけ北越高校の引率で"富山に行く"』とおっしゃっていたんです。でも実際に事故があったのは方向でいえば真逆の福島県です。もちろん、遠征先が変わった可能性も大いにあると思いますが。

 だから最初にニュースを見た時も先生とは思わなかった。知り合いから『先生の名前が出ている』と聞いて、ようやく認識しました。最近の様子を見ていると、ボーッとして直前まで行き先を把握していなかったのかもしれないなと思ってしまいます」(同前)

 胎内市内のスナックでは、若山容疑者について「認知機能が落ちているのではないか」などとも囁かれていた。

「先生は長い間、教育者でしたから、聡明な方でした。何度も事故を起こしていたとなれば、本来はバスの送迎を断る倫理観は持ち合わせていたはず。ましてや、子どもが好きな人です。事件当時はそんな判断すらつかない状態だったんじゃないかと、そう思えて仕方ない」(同前)

 若山容疑者はなぜハンドルを握ることになったのだろうか。詳しい経緯の解明が待たれる。

(後編了。若山容疑者の直近の様子を報じた前編を読む)

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