クラス担任も呆然……、あっという間に学級が盛り上がる教材「五色百人一首」のすごすぎる効果

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「五色百人一首」という教材をご存じだろうか。百人一首というと、いかにも時代がかった印象を拭えないが、そんなことはない。正しく使えば、文字通りあっという間にクラスが「知的興奮の坩堝(るつぼ)」と化す、優れものなのである。今回はそのパワーのほどを、現役の公立中学校教師である長谷川博之氏が実体験を交えつつ綴ってくれた。

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【前編を読む】300万人の子どもが夢中になった! 単なるカルタ遊びではない伝説の教材「五色百人一首」の新たなる進化形

教室の空気を一変させる五色かるたの威力

学級をもたない今も、授業に出ている全学級で五色かるたを行っている。担当している二学年は、昨年度一年間継続して名句百選かるたに取り組み、今年度満を持して百人一首に挑んでいる。

一学期も終わる頃、担任の男性教師から次のように言われた。

「特別日課で学活が続いたので、用意したメニューがすべて終わってしまいました。主任、何か良い活動はありませんか」

そんな時はもちろん百人一首である。担任に子どもたちの「熱中する顔」を見てもらう良い機会でもある。

「20分もらえますか。国語の授業で取り組んでいる百人一首をしましょう」

教室に入る時間を打ち合わせ、職員室で待った。

時間どおりに教室に向かう。

室温36度。夏休みを目前に控えて、生徒は若干そわそわしている。

後方から「はい、こんにちは」と入る。「こんにちは!」と大きな声が返ってくる。

前に立って全体を見渡す。緊張感が走る。

「百人一首。準備」

子どもたちは即座に五色百人一首を準備し始める。

「ご用意よければ空札一枚〜東海の〜」

連続5試合。教室に入る前の空気とは一変して、知的興奮の坩堝(るつぼ)と化す。その変化を、担任は呆気にとられたような表情で見ていた。

片づけまでして、ちょうど20分で終了。同時に、チャイム。

担任も興奮した様子で、生徒個々の活躍ぶりを伝え、褒めていた。良い光景だった。

中学現場での取り組みの実際

中学校と小学校の違いは様々あるが、こと授業に関して言えば、次が言える。

「担任学級の授業が一コマもない日がある」

中学担任が国語科だとすると、学級での週の授業時間は以下となる。

●1年 国語4時間と道徳・学活で6時間。

●2〜3年 国語3時間と道徳・学活で5時間。

朝は朝練習や朝読書・朝学習、放課後は部活開始時間が決まっている。ある学級だけ特別な取り組みをする、ということはできない。

私の学級では清掃のとりかかりが早く、その分終了も早い。7分くらいの隙間時間ができる。その時間を使って五色百人一首に取り組んだこともある。

それはそれで意味があったが、慌ただしさは避けられなかった。

そんな状況だから、毎日(のように)五色かるたを行うのは難しい。

取る力を育てたり、負けを認める力を培ったりするのには取り組みの継続が不可欠だ。だが、それができない環境に、中学校はある。

そんな状況下でも、かるたに取り組んでいる中学教師は多くいる。

なぜ取り組むか。

・楽しみながら力をつける。

・ルールを身に付ける。

・人間関係が改善される。

など、教育効果が高いからである。時間対効果、費用対効果を考えても、抜群の教材なのである。

百人一首初挑戦の、中学教師の声

以下は、あるサークルメンバーが紹介したエピソードである。

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今年度、2回目の百人一首。いつも、何をするにも無気力で、ぐで〜っとしているS君。

なんと百人一首のときに、「はいっ!」と大声で札を取り、「よっしゃ〜〜!!」と声をあげた。

さらに、なんとバンザイをして小躍りする姿も!

その様子を見て、びっくりしてしまった。

S君は、いつも落ち着かず、初日から学年の先生に、

「先生のクラスの、あの子(S君)、落ち着かないね。なんか変だよね」

と言われた生徒だ。

勉強ができないわけでもないし、運動神経も悪くない。でも、なんだかだるそうに毎日過ごしている。四月から二日、体調を崩して休んでいる。

声をかけ、褒め、少し笑顔が見られる時もあったが、表情が浮かないことが多いので、心配している。そのS君の、百人一首。

そして、その、はしゃいでいるS君が全然目立たない、クラスの盛り上がり。

五色百人一首の力に驚いている。歌を読み始めた時のシーンとした空気。「はい!」という声。「よっしゃ!」「くそ〜〜」などの盛り上がる声。そしてまた、静まりかえる教室。

なかなかやる時間がとれなかったので、「明日から、朝の会の最後にやろう!」と話したら、「わぁ〜、やったぁ」と歓声があがった。

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この先生は、担当教科が国語以外であることと、学級でもなかなか時間が確保できないことから、百人一首に取り組めずにいた。取り組んだら、見事な事実が生まれた。「今年は年間を通して取り組みます」と力強く述べた姿が印象的だった。

ここで注意せねばならないことが、ひとつある。

せっかくの教材も、教師が我流で使っては効果が大きく減ってしまう。

これはどんな教材もそうである。教師なら誰もが知っていることだ。

五色百人一首もまた然り。ユースウェア(効果的な使い方)に従って使わなければ、かえって逆効果になる。そのことがよくわかるエピソードを次回、紹介する。

*初出『教育トークライン』2011年6月号。一部に加筆修正を行った。

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