3代目『日産リーフ』を作る人々:開発責任者編 例えるなら毎日食べても飽きない和食 痒いところに手が届く技術とは
EVのネガティブな要素を徹底的に排除
3代目『日産リーフ』が日本でデビューして、半年以上が経過した。今回は改めて、開発責任者に新型の狙いやこだわりについて話を聞いた。
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3代目の開発ポイントは大きくふたつ。ひとつ目はEVとしての実用性能で、充電性能や航続距離などEVのネガティブな要素を徹底的に排除すること。ふたつ目はクルマとしての魅力を上げることだ。

新型日産リーフの開発責任者を務めた、日産自動車の磯部博樹さん。 内田俊一
「スーッと滑らかにいつまでも乗り続けられるクルマをキーワードに、使いやすいクルマを目指しました」。そう話すのは、開発責任者の磯部博樹さんだ。
3代目の航続距離はB7グレードでWLTCモード値が702kmと、先代の450km(60kWhバッテリー/e+)から大幅に伸び、充電性能も向上した。先代までのリーフは空冷式のバッテリーを使用していたこともあり、夏冬の充電がしにくいという声が多かった。
そこで季節による影響を排除すべく、熱マネジメントシステムを搭載。これは、モーターやバッテリーで発生する熱を暖房に使ったり、充電中に発生する熱をバッテリーに回すなどして、無駄なく熱を使い尽くす仕様だ。
航続距離を伸ばすため空力に着目
また、大型バッテリーを積まずに、効率を優先しながら航続距離を伸ばすため、電費に効果がある空力に着目。欧州向けではCd値0.25、国内およびアメリカ向けでは0.26を達成した。
結果として「前型に比べて100km/h走行時の航続距離は、10%くらい伸びています。プログラムデザインダイレクターと一緒に風洞にこもって、粘土を盛ったり削ったりしたのは初めてです(笑)」と磯部さん。
「デザインは、きりっとした顔のかっこいいクルマにしたい。でもそうすると空力的に悪化してしまうので、フロントフェイスの表情を見ながら丸くしたり尖らせたりを、ミリ単位で形を決めていきました」
切り始めなどの『始め』を大切に
滑らかな走りについて磯部さんは、「例えばアクセルペダルの踏み始め、ステアリングの切り始めなどの『始め』を大切にしました」という。
アクセルペダルを踏んだ時に過敏に反応するのではなく、ステアリングを切り増していった時にも、「リニアにグライダーが滑降するように、スッと滑らかに動くことを実現したかったです」と語る。

リニアにグライダーが滑降するように、スッと滑らかに動くことを実現したかったという。 日産自動車
そこでプラットフォームに合わせて、ステアリングシステムも全て変更。実際に走らせても急激なトルクの立ち上がりや、低重心過ぎてグラッと車体が傾くこともなく、素直なクルマという印象に仕上がった。
実は磯部さんは先代リーフも担当していたことから、その強みも把握している。それは圧倒的な信頼性だ。
「我々はバッテリーを守ったり不具合を出したりしないことに関して、非常に高い信頼性を得ています。すでに15年間EVを作っている間にバッテリー起因の事故は起こしていませんし、それは新型でも確実に継承しています。これは絶対に他社は追いつけないアドバンテージです」
そう自信を見せるのは、EVのパイオニアとして自負があるからだ。
「最初に出したときに変なことが起きると、市場そのものがなくなってしまいます。とにかく初代から石橋をたたいて渡るように、徹底的にレビューをした上で、さらに実験もいろんな意地悪な、まるで拷問のような実験をしました。火あぶり、水攻め、落っことしたりと、クルマ好きの人が見たら目を覆いたくなるような試験を繰り返して成し得た信頼性と安全性、これはずっと継承していくものです」
裏付けのある技術を使って先進性を出す
また磯部さんは、「リーフはちゃんと地に足がついた技術で、お客様に先進性を感じてもらうクルマです」と説明する。それはプロパイロット2.0やインテリジェントディスタンスコントロールなど、裏付けのある技術を使って先進性を出すことで、『日産の最先端技術が盛り込まれているクルマ』とイメージさせるのだ。
そのうえで磯部さんは、リーフを和食と例えている。

「リーフはちゃんと地に足がついた技術で、お客様に先進性を感じてもらうクルマです」 日産自動車
「和食は毎日食べても飽きませんし、料理ひとつひとつが懐石料理のようにきちんと設えてありますよね。リーフに乗ると気の利いた技術がある、痒いところに手が届くような技術が設えてあると思ってもらえるでしょう」と述べ、前述の先進技術がそれにあたるとした。
先日リーフの長距離テストを行った際に、それを感じる場面があった。
高速道路では、グーグルマップと連動したインテリジェントルートプランナーによって、目的地までの距離とバッテリー残量を計算すると同時に、充電スポットの出力や満空などをリアルタイムに検知し、最適な充電を加味したルートを提案。
また、自動でバッテリー温度も管理するので、効率よく充電も可能になるもので、まさに和食のようにひと手間入った機能と感じたのだ。
BEVのパイオニアとしてこれからも、ユーザー目線に立った使いやすいクルマを目指してもらいたい。
