航空業界は1回のフライトで膨大な燃料を消費しており、脱炭素化が最も難しい分野のひとつとして知られています。ところが、多くの旅客機に用意されているファーストクラスやビジネスクラスを廃止したり、最新航空機を導入したりするなどの効率化によって、二酸化炭素排出量を半減できる可能性があるとの研究結果が発表されました。

Large carbon dioxide emissions avoidance potential in improved commercial air transport efficiency | Communications Earth & Environment

https://www.nature.com/articles/s43247-025-03069-4

Scrapping business class could halve aviation emissions - new study

https://theconversation.com/scrapping-business-class-could-halve-aviation-emissions-new-study-275474

航空業界は世界の二酸化炭素排出量の約2〜3%を占めており、熱を閉じ込める飛行機雲の形成といった二次的要因を含めると地球温暖化への寄与は約4%に達します。オックスフォード大学の気候モデリング研究者であるミラン・クローワー氏は、この影響の大部分は富裕層が頻繁にビジネスクラスやファーストクラスを利用したり、プライベートジェットを使ったりするためだと指摘しています。

多くの場合、航空業界における効率性は「一定量のジェット燃料でエンジンがどれほどの推力を発生させるのか」という、工学的な課題として捉えられがちです。一方で、「同量の二酸化炭素排出量あたりの輸送人員はどれくらいか」という運航効率については、あまり注目されてきませんでした。

仮に1年間に航空機を利用する総人数が一定である場合、1つの便に乗る人数が増えれば増えるほど他の航空機を地上待機させることができ、結果として飛行する便数は減ります。航空機の二酸化炭素排出量に大きな違いを生むのは、航空機の重量やエンジンの効率性そのものであり、乗客やその荷物の重量が与える影響はほとんどありません。そのため、運航効率を高めることで航空業界からの二酸化炭素排出量を大幅に削減できる可能性があるとのこと。

クローワー氏らの研究チームは、2023年における各フライトルートや航空会社、航空機、空港ごとの運航効率を算出しました。その上で、実現可能な方法で運航効率を改善する複数の仮想シナリオをモデル化して、二酸化炭素排出量を削減できるかどうかを調べました。



航空機あたりの平均二酸化炭素排出量は、1980年だと乗客1人が1km移動するごとに約260gでしたが、2019年には約90gまで減少しました。これは大幅な減少ですが、低炭素エネルギーで動く電化鉄道の二酸化炭素排出量は乗客1人が1km移動するごとに5g未満であることを考慮すれば、やはり航空機の二酸化炭素排出量はかなり多いといえます。

乗客1人が1km移動するごとの二酸化炭素排出量は路線・地域・空港・航空会社・航空機の種類などによって大きく異なり、乗客1人あたり800g以上に達する路線もあれば、50g未満にとどまる路線もあったとのこと。

最も効率の悪いフライトはアメリカの空港を発着しており、次いで中国・ドイツ・日本と続き、小規模な空港やアフリカ、オセアニアでも多くみられました。一方でブラジル・インド・東南アジアでは効率的なフライトが一般的だそうで、これらの違いは座席利用率や使用される航空機の機種、そしてビジネスクラスやファーストクラスに割り当てられるスペースによって説明できると、クローワー氏は述べています。

格安航空会社はできるだけ多くの乗客を乗せるため、座席の効率性が高い傾向があります。広々としたビジネスクラスやファーストクラスの座席がない代わりに、手荷物料金や食事、予約の柔軟性といったサービスで収益を上げている場合が多いとのこと。また、比較的新しいボーイング787 ドリームライナーやエアバスA320neoといった比較的新しい機種は、乗客1人が1km移動するごとの二酸化炭素排出量が平均65g未満と、かなり効率性が高いことが判明しています。

他の要素としては、一般に長距離便は短距離便よりも効率性が高いことも確認されました。これは、同じ距離を飛行した場合は長距離便の方が離陸時のガス排出回数が減る点や、一般に長距離便は座席数の多い大型機が使われるため1便あたりの乗客数が多い点などが影響しているそうです。



研究チームは運航効率の改善が二酸化炭素排出量に及ぼす影響を調べるため、3つの仮想シナリオをモデル化して検討しました。まず1つ目のシナリオが、「平均搭乗率を80%から95%に引き上げる」というもの。これだけでも同じ乗客数を運ぶのに必要な便数が減るため、二酸化炭素排出量が16%も削減できました。

2つ目のシナリオは「最も効率的な航空機である『ボーイング787 ドリームライナー』と『エアバスA320neo』の2種のみが運航されている」と仮定したもの。航空機の耐用年数や製造数を考えると、今すぐすべての航空機を置き換えることは現実的ではないものの、仮に実現した場合は二酸化炭素排出量の27〜34%が削減されると推定されています。

3つ目のシナリオが、「スペースを取るビジネスクラスやファーストクラスを排除し、全席エコノミークラスにする」というものです。すべての航空機をエコノミークラスのみで運航した場合、航空業界の二酸化炭素排出量は26〜57%も削減できると報告されています。

クローワー氏は、「私たちの調査結果は、航空機の二酸化炭素排出量が『たまにエコノミークラスを利用する客』と『頻繁にビジネスクラスやファーストクラスを利用する客』の旅行格差により、いかに大きく左右されているのかを浮き彫りにしています。後者の多くはエコノミークラスの不便さを不満に思うかもしれませんが、これは必ずしも悪いことではありません。なぜなら、不必要な移動を減らすためのより強力な動機づけとなるからです」と述べました。