「やりがいがある仕事を任されている」。山口蛍の決心。長崎がビッグクラブになっていく過程で、自分に何ができるか
この敵地での一戦に特別な思いを抱いていたのが、キャプテンの山口蛍である。
2019年のヴィッセル神戸移籍後は、毎回のように大ブーイングを浴びせられていたというが、長崎の一員として初来場した今回は大きな拍手で迎えられることになった。
「中学生の時からお世話になっているクラブなんで、ブーイングされるのは悲しい。今日はみんな温かく迎えてくれたんで、胸に来るものがありました」と、35歳になったベテランMFは感慨深げに語っていた。
それでも敵として対峙する以上、C大阪には負けられない。長崎は序盤からアグレッシブなプレスに打って出る。その流れから25分には山粼凌吾がPKで先制点をゲット。良い入りを見せたかと思われたが、その3分後には最終ラインの隙を突かれてチアゴ・アンドラーデの同点弾を食らってしまう。
そのまま前半は主導権を握られるも、1−1で何とか終了。後半に巻き返しを図ることになった。
しかし、C大阪はさらにギアを上げてきて、長崎は劣勢を強いられた。63分に右CKから田中駿汰に打点の高いヘッドで2点目を奪われた際には万事休すかと思われた。が、72分に途中出場のマテウス・ジェズスが鋭いカウンターからネットを揺らし、再びゲームを振り出しに戻すことに成功した。
ただ、終盤に2つのPKを献上。その1本目である中島元彦のPKは守護神の波多野豪がストップしたが、2本目の香川真司のPKは止められず。C大阪の底力を見せつけられ、山口は悔しさを滲ませた。
「この試合だけじゃないんですけど、先制して、すぐ追いつかれたりというのは今シーズン、何試合かある。そういうところがゲームマネジメントの僕らの課題だと思います」と山口は改めて反省の弁を口にした。
この試合の終盤には、香川とのマッチアップも何度かあった。37歳になった香川はPKで決勝点を叩き出すと、ベンチに駆け寄ってみんなに号令をかけて、ゆりかごダンスをするなど、リーダーらしい一面を見せていた。
プロ1年目に少しだけ香川と共闘した山口は、先輩の姿を目の当たりにしながら、「自分の現役も長くないので、長崎がビッグクラブになっていく過程で、自分が何を残していけるのか。やりがいがある仕事を任されていると思うので、苦しみながらも頑張っていきたいです」と新たな決意を抱いた様子だ。
「今の長崎は、勝っている時と負けている時の差がすごく大きい。今日みたいな試合でも勝点1を拾うことをやっていかないと。今季は勝ち数だけで見たら多い方に入っていると思うけど、PK戦が1回しかない。それが他のチームとの違いだと感じます。
逆転負けも3〜4試合くらいあるから、そういうところで勝点を拾っていく必要があるし、そこが次のシーズンに向けて修正すべきところですね」と、山口は2026-27シーズンを見据え、やるべきことを明確にしていた。
粘り強く勝点を拾えるチームへ変貌を遂げようと思うなら、失点数を減らすことが最優先だ。今季の長崎はここまで15試合を戦って計25失点。目下、長崎は波多野と後藤雅明の両GKを競わせ、最終ラインもエドゥアルドや照山颯人らを中心に3バックで戦っているが、鉄壁というレベルには至っていない。
攻守のつなぎ役である山口は、高度な意思統一を90分間、保てるように仕向けていく必要がある。そこは本人も自覚しているところだろう。
「やっぱり守備が安定しないと、チームはうまくいかない。今のチームは何かが完成しているわけじゃないけど、試合が続いていくなかで失点があると、流れに乗れないことも多い。まずはそこを直していかなくちゃいけないと思います」と強調。悔しい敗戦を喫した古巣対決を糧に、再び這い上がっていく覚悟だ。
凛々しい表情を見せる山口が、発展途上の長崎をどう浮上させていくのか。興味深く見守っていきたいところだ。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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