山形放送

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日本三大植木市の一つ「薬師祭植木市」が8日、山形市で開幕します。400年以上の歴史を誇るまつりの移り変わりと、大切に育ててきた植木を搬入する業者の思いに迫ります。

7日午前9時前、山形市中心部の住宅地には県内外の造園業者が集まっていました。
植木市に向けて、販売用の植木や花などの搬入作業に追われていました。
日本三大植木市の一つと言われる、山形市の「薬師祭植木市」。山形城主の最上義光が、大火で失われた城下に緑を取り戻そうと住民に呼びかけたのが始まりとされ、400年以上の伝統があります。
植木市に50年以上、出店を続ける山形市下椹沢の高橋卓雄さん(76)が手塩にかけて育てているのは、日本で古くから庭木として親しまれる「ゴヨウマツ」です。

高橋卓雄さん「これが一番古いかもしれない。若い頃、福島に行って買ってきた。その時でも樹齢70年だった。そこからずっと持っているから120年ぐらい経っている木」「樹齢何年でこの大きさだとこのぐらいの価格、という目安はあるが、こういう木はいくら高い値を付けても恥ずかしくない」「出店を始めたのは23、24歳ごろだったと思う。出店を続けて53年ぐらいになる。にぎわいは素晴らしかった。歩く所がないくらい」
57年前、高橋さんが出店し始めた頃の植木市の様子です。

番組ナレーション「そして、お祭りの呼び物、植木市がにぎやかに幕を開ける。市には地元を始め、秋田・宮城・福島など東北一円、遠くは関東方面からも植木屋さんが集まり、およそ200軒が出店を張る。植木の前は品定めをする人でいっぱい。道路はたちまち人の波で埋まる」

今では五中通りしかない植木の露店は、当時は他の通りにも並んでいたといいます。

高橋卓雄さん「場所取りで人を頼んだりしたが、なかなかいい場所は取れなかった。私は五中通りには出せなかった。五中通りは昔からの人がいっぱいだった。新築西通りの元・県警察本部、現県営駐車場辺りの隅の方にやっと場所を取って販売した。それでも売れた。楽しいぐらい売れた」

山形の初夏を彩る植木市。バブルの頃になると、さらにぎわいが増します。当時は、1トントラックの荷台いっぱいに積んだ庭木や盆栽が、3日間で全て売れたといいます。
1990年代に入ると、変化が見られるようになります。

高橋卓雄さん「植木の需要が少なくなった。また、ホームセンター辺りでいくらでも買える、気軽に買えるようになった。時間をかけてよく見て買える」

多彩な庭木や鉢植えを揃えるホームセンターや専門店の増加で、植木市を訪れて購入する意味合いが薄れていきました。
2010年代に入ると、高齢化の影響などもあり、植木業者は減少。植木市を長年支えた山形植木商組合には、かつては200軒以上の組合員がいましたが、10年ほど前には10数軒にまで減少しました。
さらに追い打ちをかけたのがコロナ禍でした。

高橋卓雄さん「お客さんも戻らないが、業者さんが戻らなくなった」

組合員数の減少などにより、組合は2020年に解散しました。また、かつて植木市に出店していた県外の業者も、コロナ禍を機に廃業したり、出店しなくなったりしたといいます。
こうした中、高橋さんが出店を続ける理由は。

高橋卓雄さん「とにかく5月8日を無くしたくないという、そういう思いがある。今からでも少しずつ努力していけば、もっと客足が戻ってくると期待している。今より良くなるという希望を持ってやっていくしかない」

歴史ある植木市を守りたい。思いを同じくする造園業者がいます。

今野庭園 今野久仁正社長「太い根がないみたいだね」
職人「ないみたいだっす」

県造園業組合連合会会長で、今野庭園社長の今野久仁正さんです。今野さんらは15年ほど前から出店しています。

県造園業組合連合会 今野久仁正会長「根の周りを掘って、根が崩れないように縄で縛っていく。ぐるぐると。出品する物の中で一番大きいのはこれでしょうね、この松でしょうね。5メートルくらいあります。樹齢は60~70年ぐらいでしょうか。夫婦松ですね。2本立ちで。植木市について小さい頃の記憶はにぎやかだったですね。大きな木がいっぱいあって。植木を買い求める人も多かったですね。毎年買っていく人もいた」

今野庭園は、祖父である先々代が切り盛りしていた昭和初期までは植木市に出店していましたが、その後は造園業がメインとなり、出店は長く途絶えていました。
およそ70年ぶりに出店を再開したのは、年々、植木業者が少なくなっている現状を見たからでした。

県造園業組合連合会 今野久仁正会長「植木市は400年の歴史がある。山形にいるなら何とかしなきゃいけないと造園業組合に話をして、組合で出店しようとなった」

連合会では毎年、複数の造園業者が品物を出し合う形で出店していて、ことしは県内各地から16の業者が参加しました。
そして、植木市前日の7日朝。今野さんが大切に育ててきた松の搬入作業が行われました。
重さ2トンある松を置くのは簡単ではありません。他の業者も手伝い、8人がかりでやっと設置しました。
大きな庭を作る家が減りつつある今、大物を出品しても必ず買い手が付くわけではありません。それでも今野さんらは、大物の出品を続けます。

県造園業組合連合会 今野久仁正会長「松とか伽羅は昔からの木。大物を出しているのは我々の組合だけ。山形の植木市といったら日本三大植木市。それを守っていきたいというのが一番の所です」

山形の初夏の風物詩を守りたい。業者たちの思いがこもった薬師祭植木市は、8日から10日までの3日間、開かれます。