先の大戦から80年が経過し、記憶の風化が懸念されている。

 戦争体験者が残した歴史的な資料を廃棄や散逸から守る取り組みが急がれる。

 戦争体験者は年々減少している。戦死した兵士らの遺児もすでに80歳を超えた。世代の交代が進み、当事者の体験が十分に伝承されない状況が生まれている。

 家の代替わりに伴って、当時の日誌や手紙、軍装品や軍隊手帳などの遺品が大量に廃棄されるケースが目立っている。インターネットのオークションにも、軍装品などが多数出品されている。

 苛烈な戦争体験を語りたがらない人もいる。そのため、家族に資料の意味や価値が伝わらないことも多いのだろう。

 また、資料を自治体の博物館などに寄贈しようとしても、「展示の趣旨に沿わない」「収蔵場所がない」と断られることもある。

 これでは、戦争の記憶の風化が進み、歴史の教訓が忘れられてしまいかねない。

 山形県は2月、戦争関連資料の収集・保存や展示、記憶の継承策を議論する検討会を発足させた。資料の残存状況を把握する方法や保管・活用法、体験者の証言を残す取り組みなどを1年程度話し合い、報告書をまとめる。

 「戦後80年」の節目だった昨年、戦争を語り継ぐ取り組みを進める中で、時の流れとともに資料が散逸し、記憶の継承が滞ることへの危機感が高まったという。

 富山県も今年度、終戦間際に大きな被害を受けた富山空襲などの資料収集や展示方法を検討する協議会を設置する方針だ。

 資料がどこにあるかを把握し、保管先を決めるには、都道府県と市町村の連携が欠かせない。どのような資料を収集するか、基準を作ることも必要となろう。

 厳しい財政状況を考慮すれば、新たな施設をつくるより、軍服などは博物館に寄贈し、日記や手紙は文書館に収めるなど、既存の施設を使い分けることも一案だ。

 保管については、適切な温度や湿度の管理が必要な資料以外は、学校の空き校舎などを活用する手もある。地域の高校や大学との連携が深まれば、若者の関心を高めることにもつながるはずだ。

 各自治体は、現在の体制で将来にわたって資料の保存や記憶の継承ができるか点検してほしい。

 国の責任も重い。自治体の取り組みを支援するとともに、民間や大学の研究者らが収集した資料についても、必要なものは残す方法を検討すべきだ。