ロンドンマラソンで初の2時間切りを達成したサウェ(C)ゲッティ=共同

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【スポーツ時々放談】

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 マラソンの世界記録がついに2時間を切った。

 4月26日に行われたロンドンマラソンで、ケニアのセバスチャン・サウェが1時間59分30秒で優勝。2位のケジェルチャも1時間59分41秒、3位のキプリモまでゾロゾロと世界記録(2時間0分35秒)を更新した。

 天井知らずのハイペースだ。ハーフの1時間0分29秒はともかく、後半が59分1秒のネガティブスプリット。40キロから1キロ=2分40秒まで上げた。今年の東京マラソンのペース設定が2分53秒前後、終盤でそれを上回った。

 ケニア出身の31歳。ケニアがマラソンに進出したのが1990年代。プロ化が進み、サウェの育ったリフトバレーに高地拠点ができた時期と重なる。時代の申し子だ。

 一昨年、高速コースで知られるバレンシアマラソンでデビュー(2時間2分5秒)、昨春のロンドン(2時間2分27秒)、秋のベルリン(2時間2分16秒)に続くマラソン4戦4勝の勢いに、厚底シューズが貢献したのは言うまでもない。

 軽量化に驚く。サウェが履いたアディダス「プロエヴォ3」は97グラムだとか。中山竹通が全盛期に履いていた超薄底シューズは約100グラムで、路面の衝撃をモロに受けながら2時間も走れば故障は必然だった。アスリートの奮闘がメーカーに素材開発を促し、メーカーの競争が記録を生んだ……。

 2時間切りは、2019年にキプチョゲが達成している(1時間59分40秒)。周回コースにペースメーカー41人を配置し、厚底の元祖ナイキ社がその威力をアピールするための非公認記録だった。

 レース後、サウェが沿道に対し「みんなの記録」と称えたのは、お世辞ではない。今年のロンドンマラソンの応募者は空前の113万人、参加者は5万9000人。この盛り上がりを受け、ロンドンは来年から2日間で10万人参加という計画をぶち上げている。スポンサーはアシックスだ……これまでのマラソンの概念から一変した大衆の熱気もメーカーを刺激し、記録を後押ししている。

 日本はどうだろう。サウェが勝った昨年のベルリンの2位は、パリ五輪6位の赤崎暁だった。差は4分。頑張っているが差は大きい……。

 マラソンの最大の特徴は、大会の独自性だ。コースも気候も、取り巻く人間の思惑も違えば、道路使用には国それぞれ制限がある。記録や参加人数の比較だけでなく、いかにその大会らしさを出せるか。日本ではどこよりもマラソンの醍醐味が理解されている強みがあると話すのは、東京マラソンの大嶋康弘レースディレクターだ。

「東京らしさを意識しながら、いつか世界記録を狙いたい」

 来年、東京マラソンは生まれ変わって20回目の節目を迎える。焦らずゆっくり期待しよう。

(武田薫/スポーツライター)