歌川広重《東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景》【前期(4/18〜5/17)展示】

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 江戸時代を代表する浮世絵師、葛飾北斎(1760〜1849年)と歌川広重(1797〜1858年)。浮世絵コレクターとして名高い実業家・原安三郎(1884〜1982年)さんが蒐集した北斎と広重の優品を紹介する特別展「原安三郎コレクション 北斎×広重」が、京都文化博物館(京都市中京区)で開かれている。それぞれの代表作である浮世絵シリーズのほか、初公開となる江戸時代の肉筆画など計約220件を展示。くっきりとした摺り、鮮やかな色など状態の良さで知られる原コレクションの名品を通して、北斎と広重の手による生き生きとした江戸ワールドが立ち上る。

会場入り口
展示風景

 大胆な構図と躍動感で自然と人間を描いた北斎と、繊細な色彩で四季や天候、人々の営みを詩情豊かに表した広重。同展の最大の見どころは、2人の作風を比較しながら鑑賞できる点だ。たとえば愛知県岡崎市の矢作橋の情景を描いた作品は、長い橋の上を大勢の人が通っている様子は同じだが、橋の形状や背景の山は異なり、まるで別な場所のよう。展示を担当した有賀茜学芸員は「2人の表現の違いを見つけたり、同じところを描いている場合はそれぞれの目線について考えてもらうなどして楽しんでほしい」と語る。

葛飾北斎《諸国名橋奇覧 東海道岡崎矢はきのはし》【前期(4/18〜5/17)展示】
12 歌川広重《東海道五拾三次之内 岡崎 矢矧之橋》【前期(4/18〜5/17)展示】

 展示は第1章「北斎」と第2章「広重」に加え、「原安三郎の慧眼(けいがん)」と題した特集も。北斎の「冨嶽三十六景」「諸国瀧廻(たきめぐ)り」、広重の「東海道五拾三次之内」「冨士三十六景」など人気の名所絵シリースを展示する。

 特筆すべきは北斎の「千絵の海」シリーズ。各地の漁労風俗をテーマとした揃物(そろいもの)で、10図の刊行が確認されているが、現存数は極めて少なく、10図すべてがそろっているのは、確認できる限り原コレクションだけという。いずれの作品も北斎らしい多彩な水の表現とともに、荒波での漁や潮干狩り、捕鯨など、海を重要な食料庫としていた当時の暮らしぶりも読み取ることができる。中でも「総州利根川」(前期展示)は、不安定な舟の上で漁師が全身を使って網を引く様子がリアルに描かれ、網を透かして向こう側の景色が見える、印象的な画面だ。

 名所絵が並ぶ中で、シリーズ「百物語」は特に目を引く。百物語とは江戸時代に流行した怪談会のこと。夜、100本のろうそくに火をつけ、人々が順番に怪談を披露し、話が終わるごとに1つずつ火を消していく。最後の1つを消すと怪異が現れるとされていた。北斎が描いた「お岩さん」(前期展示)は、提灯から亡霊が飛び出す歌舞伎の演出から着想したとされるが、お岩の表情はユーモラスで愛嬌がある。また、「さらやしき」(同)のお菊は、井戸の中から長い首を出しているものの、その横顔はどことなくリラックスモード。よく見ると、首は皿が連なる不思議な構造となっていて、北斎の遊び心が伝わってくる。

葛飾北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴》【後期(5/19〜6/14)展示】
葛飾北斎《千絵の海 甲州火振》【後期(5/19〜6/14)展示】

 第2章「広重」では、江戸時代の人々の風俗が情感豊かに描かれた作品がずらりと並ぶ。広重の名所絵シリーズを数多く持つ原コレクションの中から、本展では、「東海道五拾三次之内」(保永堂版)、「京都名所之内」、「雪月花」、「冨士三十六景」の4つのシリーズを揃って紹介。どのシリーズも見応えあるラインアップとなっている。とりわけ京都を題材にした大判錦絵からなる「京都名所之内」は、「祇園社雪中」(前期展示)、「あらし山満花」(同)、「清水」(後期展示)、「金閣寺」(同)など、私たちがよく知る京都の人気スポットが登場。穏やかな色調の中からいにしえの賑わいが聞こえてくるような臨場感を醸す。

歌川広重《東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景》【前期(4/18〜5/17)展示】
歌川広重《京都名所之内 あらし山満花》【前期(4/18〜5/17)展示】

 原さんは徳島市に生まれ、父親は特産の藍を扱う仕事をしていたという。有賀学芸員は、「原さん自身もおそらく幼少期から藍に関心を持っていて、(作品の)退色しやすい藍を非常に大切に扱ってくださった。そのおかげで美しい色が鮮やかに残った。藍色のグラデーション、輪郭線もじっくり見てもらいたい」と話した。会期は6月14日(日)まで。

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