「一部の追い越しは“偽物”だ」マンセルがF1新レギュレーションに痛烈批判 “危険な減速”事故にも懸念示す

マンセル氏が現在のF1に物申した(C)Getty Images
元F1王者のナイジェル・マンセル氏が英『AUTO SPORT』誌の取材で新たなレギュレーション下で始まった今季のF1レースの戦いぶりについて「こんなことを言うと撃たれるかもしれないが、残念ながら一部の追い越しは全くの偽物だ」と苦言を呈した。
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F1のレギュレーション改正に伴い、今季から熱エネルギー回生システムを廃止した新型V6ハイブリッドエンジンが導入され、エンジンと電気モーターの出力比率が従来の「8対2」から「5対5」に変更された。この結果、電気モーターへの依存度が高くなり、パワーブーストの影響で追い抜きシーンが多くなったものの、エネルギー回生を考慮して最高速で走らない戦術も増え、関係者やファンの間では「レースが人工的になった」と不満の声が上がっていた。
マンセル氏は1992年のF1王者で、アクティブサスペンションなどハイテク技術が次々と導入された時代を最も良く知るレジェンドの1人だが、新ルールを好ましく思っていない。
「追い越しの中には素晴らしいものもあるが、次のコーナーを抜けた途端、車が猛スピードで追い抜き、相手の車は後退する。これはコンピューターが適切なタイミングで余分なパワーを与えていないから。ドライバーはそれを制御できないのは当然だ。なぜなら、ドライバーがそれを使うはずがないからだ」と冷静に見つめ、「自分のことはさておき、世界中のファンは非常に不満を抱えていることを知っている。公平に言って、ファンの気持ちはよく分かる」と様変わりしたF1に落胆する多くのファンの考えに同調した。
F1のステファノ・ドメニカリCEOは最近になって複数の欧州メディアの取材で、アクセルを緩めて惰性で走行することについて、1980年代にもドライバーは同じことをしなければならなかったとの見解を示唆したが、マンセル氏は「いや、リフトアンドコースト(アクセルを緩めて惰性で走行)はしなかった。アクセルを緩めるのはスリップストリームで誰かを追い越さないと決めたときにスロットルを微調整するよう時で、燃料を節約し、スマートに走ることになるんだ」と反論した。
前戦日本GPではハースのオリバー・ベアマンが高速でクラッシュした。スプーンコーナー手前で、前を走るアルピーヌのフランコ・コラピントが急に減速したのに気付いて、接触をさけようとコースオフしてアウト側のバリアーにぶつかった。速度差は50キロだったとされるが、これはエネルギー回生の影響だったという。マンセル氏は「私たちの時は高速コーナーに進入する際に時速50キロから70キロの差で減速することはない。コンピューターが車両の走行とバッテリーへの電力供給を完全に引き継ぐ現況とは全く別物。ドライバーには本当に同情する。今の状況は非常に危険だと思う」と嘆いた。
F1は約1か月の中断期間を経て次のマイアミGPで再開される。問題を払拭すべく各チームなどが協議して新ルールが導入されることになったが、「人工的」とされる戦いぶりに果たして変化は見られるか。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
