【内田雅也の追球】得点生み出す二塁打
◇セ・リーグ 阪神2―0ヤクルト(2026年4月9日 甲子園)
阪神の2点目を生んだのは佐藤輝明の二塁打である。4回裏、森下翔太が先制ソロを放った直後の打席。追い込まれながら奥川恭伸の外角151キロ速球をライナーで左翼線にはじき返した。
左翼線と書いたが、さほどライン際ではない。左中間寄りにいた左翼手ドミンゴ・サンタナはフェンス前で追いついた。
それでも佐藤輝は一塁を蹴り、二塁には余裕で滑り込んだ。打った瞬間から二塁を奪う姿勢で疾走し、一塁も小さく鋭く回った。果敢な走塁姿勢が光る二塁打だった。
一塁コーチボックスで回れと指示していた外野守備兼走塁チーフコーチ・筒井壮は「どう言えばいいでしょう」と少し言葉に詰まった。果敢さは認めたが「今のウチにとっては普通の走塁です。理由はいろいろありますが、相手もあることだし、内情は言えません」。相手野手の守備力や打者走者の走塁姿勢や技術もあるのだろう。
ただ、佐藤輝が二塁を奪ったのは大きかった。続く大山悠輔の左前打で生還を果たせた。プロ初先発の茨木秀俊を勇気づける2点目だった。
佐藤輝の二塁打は今季6本目でリーグ最多。得点は10点目で同じくリーグ最多だ。二塁打も得点もタイトル表彰ではないが、点取りゲームとして大切な要素である。
伝説の大打者、ジョー・ディマジオ(ヤンキース)は「打席では常に二塁打を狙っている」が身上だった。1954(昭和29)年2月、マリリン・モンローとの新婚旅行で来日した際も各地で野球指導し「二塁打を狙え」と繰り返した。外野手の間を抜くライナーを心がければ、打率も上がり、本塁打も出る。首位打者、本塁打王を各2度獲得している。
ディマジオは得点の多さも際立っていた。二塁打を放ち、本塁へ還る。ダイヤモンドを駆け回り、人気を得ていた。
佐藤輝が目下、打率首位にいるのは二塁打効果があるのではないか。期待される本塁打もそのうち量産するだろう。
もともと二塁打は佐藤輝の持ち味だ。4日の広島戦(マツダ)で通算150二塁打を放ったが、要したのは2471打数。16・4打数に1本である。歴代最多487二塁打の立浪和義(中日)の17・9打数をしのぐ。
試合は桜の花をぬらす雨の中で始まり、7回裏途中でコールド。茨木の初勝利を祝うように降っていた。 =敬称略= (編集委員)
