変わりゆくF1と素晴らしき日本を鈴鹿で実感【森口将之の『もびり亭』にようこそ 第19回】
8年ぶりの観戦。観客層の変化に驚き!
鈴鹿サーキットで日本グランプリを見てきました。前回行ったのは2018年なので、8年ぶりになります。つまり僕はモータースポーツにさほど興味があるわけではないのですが、F1と言えばモータースポーツの最高峰。今の状況を見ておきたいという気持ちもあり、5年ぶりに復帰したホンダの協力もあって、観戦することができました。
といっても、レースの結果はさまざまなメディアで報じられているので、ここではちょっと違った視点で、現地で見て感じたことを書いていきます。

最終コーナーを立ち上がる2台のアストン マーティン・ホンダ。 森口将之
サーキットに着いてまず驚いたのは、観客が多かったことです。公式発表によると、来場者は20年ぶりに30万人以上となり、僕が行った決勝の日曜日だけで13万人を記録したそうです。国立競技場の収容人数の2倍近くと言えば、凄さがわかるでしょうか。
しかも以前と比べると、若い人、女性、外国人の姿が目立ちました。外国人は円安の影響もあるので理解できますが、若い人や女性が多かったことは完全に想定外でした。
レース前にHRC(ホンダ・レーシング)代表取締役社長を務める渡辺康治さんとともに説明を行った、HRC-UK広報・マーケティング戦略担当の鈴木悠介さんの話を聞いて、謎が解けました。
今、F1は世界的にブームで、とりわけアメリカで人気が高まっているとのこと。その理由のひとつとして挙げたのが、F1をテーマとしたネットフリックスのドキュメンタリー番組でした。女性ファンが多くなったのもこの影響だと言っていました。
ドライバーもファンも、世代交代
レース後にネットフリックスを契約している妻に頼んで見せてもらったところ、ちょっと感動してしまいました。クルマメディアが取り上げがちなチームやメカニズムより、ドライバーやチームオーナーの人間ドラマにスポットを当てていて、ドラマタッチで紹介していたからです。
サーキットとはまったく違う時間軸でストーリーが進んでいくのが新鮮だったし、トップチームに偏らないのは好感が持てたし、人にフィーチャーしたおかげもあって、まったく違うF1を見ることができたという印象でした。

好天に恵まれたこともあり、13万人が訪れた日曜日の決勝。 森口将之
ネットフリックスというと、野球のWBCを独占中継したことで不満を持った人もいるようですが、こちらもニュースによると、若年層や女性の視聴者の比率が増えたそうです。
中高年男性が中心というのは、野球ファンとクルマ趣味にある程度共通していると感じていますが、F1についてはネットフリックスがその状況を変えつつあるし、野球についてもそういう効果は見込めるのではないかと感じています。
広報の方の話を続けると、ネットフリックス経由でF1に入ってきた人たちは、メカニズムの知識は浅い代わりに、ドライバーの追っかけをする人が多いとのことです。
それが良いか悪いかはともかくとして、1990年前後のF1、アイルトン・セナが操るマクラーレン・ホンダの全盛期だった頃も、ファンの中心は当時の若者でした。
今年の鈴鹿では、メルセデスに乗る19歳のキミ・アントネッリがトップでチェッカーを受け、ポイントランキングでもトップに立ちました。
F1が続いていくうえでは、ドライバーはもちろんファンの世代交代も必須です。それを成し遂げようとしているネットフリックスの影響力に圧倒されました。
ホンダモビリティランドのマネージメントに感心
それはともかく、これだけ観客が多くなれば、アクセスが気になるところです。僕が属していたツアーは、名古屋とサーキットを往復するというプランで、高速道路のインターチェンジとサーキットの間はかなり渋滞していました。
8年前は最寄り駅である伊勢鉄道鈴鹿サーキット稲生駅から徒歩で向かったのですが、今回は稲生駅の混雑を避け、さらに遠い近畿日本鉄道の平田町駅を使った人も多かったようで、徒歩でサーキットを目指す人の姿も多く見られました。

バスを降りてサーキットに向かう人たち。手前は帰りのバス待ち用スペース。 森口将之
僕たちは鈴鹿サーキットホテルの脇にある駐車場からアクセスしましたが、観光バスがぎっしりと並ぶ駐車場からの人の流れは、乱れなく整然としていました。脇にあった柵を並べた空間は、帰りの路線バスを待つ人たちが並ぶ場所でした。
運転士不足という悩みを抱えながら、F1という大イベントのために一致結集して移動を支える交通事業者の方々とともに、鈴鹿サーキットを運営するホンダモビリティランドのマネージメントに感心しました。世界中の人々が日本の規律正しさを受け入れているのは、それだけ理想的な対応だったからでしょう。
実は僕もホンダオーナー、といってもスーパーカブですが、復帰したホンダのパワーユニットを積むアストン マーティンが、かつてルノーで2年連続チャンピオンになったフェルナンド・アロンソ選手のドライビングで初完走を果たしたことも、うれしいニュースでした。
それとともに、アジアでもっとも歴史の長い日本グランプリが開催される鈴鹿は聖地だと改めて感じたし、そこには多くの人が鈴鹿に行きたいと思えるホスピタリティが、大きく関係していると思ったのでした。
