20年かけて貯めた「へそくり」が、離婚で夫のものに――知らないと損する財産分与の落とし穴【解説:夫婦問題カウンセラー 岡野あつこ】
夫婦問題カウンセラーとして35年以上・約4万件の相談実績を持つ岡野あつこ氏が、熟年離婚を考える女性に向けて書いた一冊、『その熟年離婚、妻は絶対「損」します!』。本記事はその中から、「へそくり」と「退職金」をめぐる知られざる財産分与の落とし穴についてご紹介します。

(本記事は『その熟年離婚、妻は絶対「損」します!』から一部を抜粋・編集して掲載しています)


あなたの周りに、こんな奥さんはいないでしょうか。

夫はゴルフや飲み会が大好きで、家のお金はどんどん減っていく。妻のYさん(58歳)はそんな夫に愛想を尽かしながらも、「まあ、今すぐどうこうするわけじゃないし」と自分に言い聞かせながら、こっそりパート代を自分の口座に移すことを覚えました。

食費を1円単位で削って、夫には言わずに積み立てる。チラシを見比べながら安売りの食材を選んで、そのぶんを貯金に回す。「いざというときのための、私だけのお金」——20年かけて、気づけば500万円になっていました。

「これがあるから、なんかあっても大丈夫」と思うと、不思議と夫の小言にも少し余裕をもって耐えられる。お金って、お守りみたいなものですよね。

ところがある日、友人から「離婚するとへそくりも財産分与になるって知ってた?」という話を聞いて、Yさんは顔面蒼白になりました。半信半疑で弁護士に確認したところ、返ってきた言葉はこうでした。

「奥様名義でも、婚姻中にパートや生活費の残りで貯めたお金は、夫婦の共有財産になります。ご主人の口座の100万円と合わせた600万円が財産分与の対象です。つまり奥様は、200万円を夫側に渡すことになります」

——20年間、爪に火をともすようにして守ってきた500万円から、200万円を渡す。浪費してきた夫に。

「冗談じゃない!」とYさんが怒り狂ったのも、無理のない話だと思いませんか。

婚姻中に貯めたお金は、妻名義でも「夫婦共有財産」

離婚を考えていなくても、このルールだけは頭の片隅に入れておいてほしいのです。

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で協力して築き上げた財産を、離婚時に分け合う制度です。基本的には、名義が夫であろうと妻であろうと、結婚してから貯めたお金は「共有財産」とみなされ、「2分の1(半分)ずつ」に分けるのが原則です(民法768条)。

「私が節約して貯めたのに」という訴えは、残念ながら法的には通りません。どれだけ夫が浪費家でも、どれだけ妻が苦労して貯めたお金でも、婚姻中に形成した財産である以上、原則として「夫婦のもの」になるのです。

また、万が一離婚という話になったとき、へそくりを「黙って隠し続ければいい」と思うかもしれません。でも、弁護士や裁判所が財産の調査に入ると、名義や金融機関をまたいで財産の全容が明らかになることがあります。事前に知識を持っておくだけで、いざというとき慌てずに済みます。

退職金も「もらえるとは限らない」現実

もう一つ、多くの人が思い込んでいる「退職金神話」についてもお伝えしておきます。

「うちは大手だから、定年で2000万円は出るはず。もし何かあっても半分の1000万円は確保できる」——そんなふうに、夫の退職金を"いざというときの保険"として考えている方は多いのではないでしょうか。

ところが現実には、退職金の多くは「住宅ローンの完済」に消えてしまいます。30代で35年ローンを組んだ家庭では、60歳の定年時にまだ数百万〜一千万円以上のローンが残っているケースが少なくありません。「退職金2000万円出たけれど、ローンの残債1500万円に消えた」という話は珍しくないのです。

さらに、慰謝料についても誤解が広がっています。ドラマのイメージから「長年モラハラを受けてきたんだから慰謝料は取れるはず」と思いがちですが、法律上、慰謝料が認められるのは不貞行為(浮気)・明らかなDVなど、証拠のある「法的な不法行為」がある場合のみ。「お茶しか言わない」「いつも上から目線」——そうした日常的なモラハラでは、残念ながらほぼ認められないのが現状です。

今すぐ何かしようということではありませんが、「退職金と慰謝料を当てにした皮算用は、崩れることがある」と知っておくだけで、将来の判断がずいぶん変わってきます。

逆に「知っていれば有利に使える」財産のルールもある

怖い話ばかりではありません。知識があれば、自分を守ることができます。

まず覚えておきたいのは、財産分与の対象はあくまでも「婚姻中に形成した財産」だということです。婚姻前から持っていた貯金や、親から相続した財産は、夫婦の共有財産とは切り離して考えられます。「これは結婚前から私が持っていたお金」と証明できれば、分与対象から外れる可能性があるのです。

そして、もっとも大事なことをお伝えします。

財産分与の基準となるのは「別居した時点での財産」です。感情的になって「もう無理!」と家を飛び出してしまった後では、その後の財産調査は格段に難しくなります。本書では、今のうちから夫の財産の全体像をつかんでおくための具体的な方法——通帳・保険証券・郵便物からの口座特定・退職金の見込み額確認など——が詳しく紹介されています。

「今すぐ何かするわけじゃないけど、万が一に備えて」という感覚で、少しずつ情報を整理しておく。それだけで、将来の選択肢はぐっと広がります。感情で動く前に、知識を持っておくこと。これが、自分の人生を守るための第一歩です。

他にも本連載の原案書籍『その熟年離婚、妻は絶対「損」します!』では

・「年金分割で半分もらえる」という甘い罠
・決意した日から始まる「完全ポーカーフェイス」戦略
・夫を油断させる「魔法のセリフ」と、完璧な家出のシナリオ
・賢い妻は「籍」を抜かない!遺族年金と住まいを確保する「損得勘定」
・コスパ最強!賢い妻が使いこなす「魔法の五文字」とは?

など、熟年離婚を考えているすべての女性に読んでほしい内容が詰まっています。


著者情報


岡野あつこ(おかの あつこ)


立命館大学産業社会学部卒業、立教大学大学院修士課程(社会デザイン学)修了。夫婦問題研究家・パートナーシップアドバイザー・公認心理師。35年以上にわたり約4万件の夫婦・離婚・男女関係の相談に向き合ってきた。「結婚・再婚のアツコブライダル」「離婚相談救急隊」主宰。YouTube「岡野あつこチャンネル」登録者7万人以上。岡野あつこのオンラインコミュニティ「卒婚塾」主宰。一般社団法人離婚相談連盟 理事。目白大学短期大学部 非常勤講師。

◆岡野あつこさんの記事一覧は


【ECHOES連載企画】その熟年離婚、妻は絶対「損」します!
第1回 「年金を半分もらえると思って離婚したら、老後が詰んだ」熟年離婚で損する妻の年金の誤解
第3回 「もう無理!」と家を飛び出したら、もらえるはずのお金が消えた――熟年離婚「準備不足」の代償(4月24日公開予定)

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