産業ガス大手のエア・ウォーターが営業利益212億円を水増し…手口は多岐にわたり、社員が調査妨害も
産業ガス大手のエア・ウォーターは3日、不適切な会計処理に関する特別調査委員会の最終報告書を公表した。
2019年度以降、6年間にわたって様々な手口で行われ、売上高で669億円、本業のもうけを示す営業利益ベースで212億円を水増ししていた。背景には、成長至上主義と豊田喜久夫・前会長兼最高経営責任者(CEO)(77)による過度なプレッシャーがあったと結論づけた。(松本裕平)
経営責任を明確化するため、松林良祐社長は月額報酬の100%、ほかの取締役と常勤監査役は50%、社外取締役と社外監査役は20%をそれぞれ4月から3か月、自主返上する。
報告書によると、不正は、エア・ウォーターを含むグループ37社で行われ、水増し額は2月に公表した中間報告書から、売上高で2億円、営業利益ベースで3億円増えた。手口は、在庫の過大計上や評価損の先送り、売上高の過大・先行計上など、多岐にわたった。
原因として、豊田氏のトップダウンで過大な業績目標が設定され、目標達成に向けて豊田氏から取締役らへ過度なプレッシャーがあったと指摘。継続的なM&A(企業の合併・買収)に伴う規模の拡大に管理体制の整備が追いついていないことも、不正の要因になったとした。
同社はコンプライアンス(法令順守)を最重視する企業風土への変革を掲げ、内部監査室の人員を直近の3倍超の50人体制とするほか、取締役会議長を社外取締役に変更するなどの再発防止策も公表した。
大阪市内で記者会見した松林社長は、自身の関与について「(不適切な会計処理を)指示したことはない」と説明し、「成長のスピードを落としてでも、正しくやれる体制を構築する。抜本的な改革で再生したい」と強調した。
書類偽造やデータ改ざんも
報告書は、調査の過程で、エア・ウォーターによる書類の偽造やデータの改ざんといった妨害行為があったことも明らかにした。
松林社長は記者会見で、妨害行為に関与した社員は3人だったと明らかにしたうえで「従業員の教育ができていなかった。大変責任を感じている」と釈明した。
豊田・前会長への過度な権力集中がコンプライアンス意識に欠ける企業風土に
特別調査委員会の調査報告書は、豊田喜久夫・前会長への過度な権力の集中が、コンプライアンス意識に欠ける企業風土につながったことを浮き彫りにした。

「(豊田氏から)『お前はクビや』『今まで払った給料返せ』と言われたことがあり、ひどく追い込まれた」。ある取締役は調査委のヒアリングに、こう語った。
豊田氏は業績の拡大にこだわり、特に「売上高1兆円」に固執した。2023年3月期はこの目標が必達とされたが、同年2月の会議で1兆円に届かない可能性が示されると、豊田氏は「仕事をしていないに等しい」「1年間何をやってきたのか」と役員らを叱責(しっせき)した。
19年に会長に就任した豊田氏は、役員の人事権を一手に握っていた。報告書は、役員らが不利な処遇を受けることを危惧し、豊田氏の意向を忖度(そんたく)して不適切な会計処理に関与したり、黙認したりしたと指摘する。
豊田氏は問題発覚後の昨年12月に会長を辞任し、今年3月末に相談役も退いた。だが、この日の記者会見にも出席せず、公の場で一度も説明していない。この点について、松林良祐社長は「辞任したことで責任を取ったという理解だ」と説明し、「(会社として訴訟などの手段で責任を問うことは)現時点ではない」と述べた。
