CMSA(中国載人航天工程弁公室)は2026年3月25日付で、「宇宙人体研究プログラム」の提案公募を4月1日から開始すると発表しました。CSS(中国宇宙ステーション)「天宮」での長期滞在や、将来の有人月面着陸ミッションを見据えて、宇宙環境が人体に及ぼす影響を体系的に研究することが狙いです。


【▲ 神舟16号の帰還時に撮影されたCSS=中国宇宙ステーション(Credit: CASC)】

「宇宙人体アトラス」の作成と研究データベースの構築を目指す

今回公募が始まるプログラムは、宇宙空間における人体の変化を網羅的にまとめた「宇宙人体アトラス(Space Human Atlas)」の作成と、宇宙人体研究データベースの構築を目標に掲げています。3月25日にCMSAが公開したプログラムガイドラインによると、長期的な宇宙滞在や月面ミッションにおいて、人類が健康を維持しながら活動するための戦略的・基礎的な科学課題に取り組む方針です。


研究対象にはヒト由来のサンプルやオルガノイド(臓器の構造や機能を模した立体的な細胞組織)、培養細胞が含まれます。具体的には、微小重力環境が骨や筋肉に与える影響のほか、長期の宇宙飛行や地球帰還後における心血管系・代謝機能・認知機能・老化への影響が主要な研究テーマとして挙げられています。


CMSAはこのプログラムについて、宇宙飛行士の健康管理に役立てるだけでなく、地上の医療・健康分野にも貢献する研究成果の創出を目指すとしています。


天宮ではすでに53件の宇宙医学プロジェクトを実施

宇宙医学の研究は天宮における重要な実験分野の一つです。CMSAによると、2023年6月に最初の公募を実施して以来、合計387件のプロジェクトが応募され、82件が採択、そのうち53件が天宮の軌道上で実施されました。


中国宇宙飛行士研究訓練センターの研究者であるLi Yinghui氏によると、中国はこの分野ですでに複数の成果を上げています。中国初となる宇宙オルガンチップ(Organ-on-a-Chip)研究の完了や、世界で初めてとされる人工血管組織チップの宇宙実験がその代表例です。これらの研究成果は、心臓の健康、筋骨格系、神経変性疾患、老化のメカニズム解明、さらには薬剤の防護効果評価やスクリーニングといった分野に理論的・技術的な基盤を提供しているとのことです。


2026年は中国初の「1年間滞在ミッション」も控える

今回のプログラム公募は、中国の有人宇宙活動が新たな段階を迎えるなかで発表されました。CMSAは2026年2月に発表した計画のなかで、2026年は有人ミッション2回と貨物補給ミッション1回を実施すると明らかにしています。なかでも注目されるのが、神舟23号のクルー1名による約1年間の長期滞在実験です。NASAやロスコスモスはISS(国際宇宙ステーション)で1年間のミッションを複数回実施してきましたが、中国にとっては初めての試みとなります。


中国は2030年までの有人月面着陸を目標として掲げており、長征10号ロケットや有人宇宙船「夢舟」、月着陸船「攬月」の開発も進んでいます。宇宙飛行士が長期間にわたって安全に活動するためには、宇宙環境が人体に与える影響を深く理解する必要があります。


今回の人体研究プログラムは、こうした長期化・本格化する有人宇宙活動の安全を支えるための基盤研究として位置づけられています。


 


文・編集/sorae編集部


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