『プロジェクト・ヘイル・メアリー』北米V2、世界興収3億ドル突破 ホラー映画人気に異変も
3月27日~29日の北米映画週末ランキングは、ライアン・ゴズリング主演『プロジェクト・ヘイル・メアリー』がV2を獲得。週末3日間の興行収入は5453万ドルで、前週比マイナス32.3%という健闘ぶりだ。2026年のハリウッド映画として最高のスタートを切った前週に続き、批評・口コミ効果がきわめてよく出ている。
参考:『プロジェクト・ヘイル・メアリー』大ヒットで北米No.1 『オッペンハイマー』以来の記録も
北米興収は1億6430万ドル、全世界興行収入は3億ドルを早くも突破しており、2026年のアメリカ映画では現時点で最高記録。Amazon MGM Studiosとしては史上最大のヒット作となった。
比較対象として挙げられているのが、同じく非フランチャイズ作品の『オッペンハイマー』(2023年)と、SF映画のヒット作『デューン 砂の惑星PART2』(2024年)で、どちらも北米オープニング成績は8250万ドル規模。ただし、両者が2週目にマイナス43%~44%の下落を示したのに対し、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』ははるかに健闘している。
10日間の北米興収は『デューン 砂の惑星PART2』をやや上回り、『オッペンハイマー』にはやや届いていない。北米での最終興収は2億6500万ドル程度と見込まれているが、今後の需要次第では北米だけで3億ドル超えの可能性もある。
Rotten Tomatoesでは批評家スコア95%・観客スコア96%と変わらぬ高評価を維持しており、作品のユーモアやハートフルな側面――監督のフィル・ロード&クリストファー・ミラーが得意とするところだ――が優れた評判につながったとみられる。男女比はやや男性優位で、若い女性観客をつかみきれていないが、口コミで今後こちらの層が増えてくる可能性もありそうだ。
特筆すべきは海外市場の人気であり、2週目の海外興収は5410万ドル。下落率は前週比わずかマイナス5%で、クリストファー・ノーラン監督『インターステラー』(2014年)がマイナス21%だったことを鑑みてもその強さは明らかだ。特に優れた成績を示しているのはイギリスの2010万ドル、中国の1900万ドルとなった。
このように世界的に異例の安定ぶりを見せている本作だが、日本市場の推移は例外に近い。累計成績は510万ドルと悪くないものの、2週目の成績は130万ドルで、前週比マイナス50%。海外市場においては下落幅が唯一大きく、洋画の集客に苦戦する市場傾向がもろに出た形だ。
すでに賞レースでの活躍が期待されている本作は、続編の可能性も浮上している。報道によると続編の製作はありえる状況で、原作者アンディ・ウィアーにもアイデアがあるというが、現時点で正式な協議はなされていないとのこと。ウィアーの新作小説も映像化権を各社が争うことになるとみられる。
第3位にはワーナー・ブラザースが放つ新作ホラー映画『ゼイ・ウィル・キル・ユー』が初登場。しかしながら、週末興収は北米2778館で500万ドルとかなり渋く、事前に期待されていた800万ドルには及ばなかった。
『デッドプール2』(2018年)や『ジョーカー』(2019年)のザジー・ビーツ主演で、ニューヨークの高級マンションを舞台に、雇われメイドが悪魔崇拝者の住人たちと戦う脱出型ホラーアクション。『ハリー・ポッター』シリーズのトム・フェルトン、パトリシア・アークエット、ヘザー・グラハムらが共演し、監督・脚本はキリル・ソコロフが務めた。
世界興収は900万ドル。製作費は2000万ドルと低予算だが、劇場興行での回収は厳しい推移だ。ワーナーは『罪人たち』や『ファイナル・デッドブラッド』、『ウェポンズ/WEAPONS』と2025年はホラー映画のヒット作を連発したが、今年は『ザ・ブライド!』に続いて苦戦を強いられている。本作に関しては、ワーナーを買収するスカイダンス社のデヴィッド・エリソンがプロデュースを務めている点でもかなりつらい結果だ。
Rotten Tomatoesでは批評家スコア65%・観客スコア80%、映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでは「B-」と、賛否が分かれやすいホラージャンルとしては必ずしも悪い評価ではない。それでも苦しい結果となったのは、ホラー映画をめぐる市場状況が影響を与えているのではないか。なんと北米では、14週連続で新作ホラー映画(あるいはホラーに近いスリラー映画)が公開されつづけているのである。
今週は『ゼイ・ウィル・キル・ユー』だけでなく、公開2週目の『Ready or Not 2: Here I Come(原題)』も北米興収1627万ドル、世界興収累計2347万ドルと同じく苦戦。どちらもスラッシャーホラーであり、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』とも客層が競合したようだが、それ以上に供給過多がホラージャンル自体の需要を削いでいる可能性は高い。
2025年のワーナーの快進撃だけにとどまらず、一時はホラー映画がハリウッドの興行不振を支えていた。しかしながら、今年の興行傾向は“ホラーの季節”が終わりに近づいていることを示唆しているようにも見える。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』や『私がビーバーになる時』のように、ファミリー層が劇場に戻り、イベント性の高い作品に注目が集まる傾向は顕著だ。
ワーナーは今年、ブラムハウス製作による『THE MUMMY/ザ・マミー 棺の中の少女』も4月に北米公開を控えている。なお、日本では『ゼイ・ウィル・キル・ユー』は5月8日、『THE MUMMY/ザ・マミー 棺の中の少女』は5月15日と、ホラーファンに焦点を当てた連続公開戦略だ。
第2位『私がビーバーになる時』は北米興収1億3855万ドル、世界興収2億9755万ドルで、2026年のハリウッド映画としては『プロジェクト・ヘイル・メアリー』に次ぐヒット。公開4週目の段階で、同じくピクサー映画『マイ・エレメント』(2023年)の成績を25%上回っており、新たなフランチャイズ化への期待も高まる。第4位『Dhurandhar: The Revenge(英題)』は北米興収2276万ドルで、インド映画の北米記録を更新した。
【北米映画興行ランキング(3月27日~3月29日)】1.『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(→前週1位)5453万ドル(-32.3%)/4077館(+70館)/累計1億6430万ドル/2週/Amazon・MGM
2.『私がビーバーになる時』(→前週2位)1220万ドル(-31.5%)/3650館(-25館)/累計1億3855万ドル/4週/ディズニー
3.『ゼイ・ウィル・キル・ユー』(初登場)500万ドル/2778館/累計500万ドル/1週/ワーナー
4.『Dhurandhar: The Revenge(英題)』(↓前週3位)474万ドル(-52.7%)/987館/累計2276万ドル/2週/Moviegoers Entertainment
5.『Reminders of Him(原題)』(→前週5位)470万ドル(-41.3%)/3181館(-260館)/累計4107万ドル/3週/ユニバーサル
6.『Ready or Not 2: Here I Come(原題)』(↓前週4位)400万ドル(-55.9%)/3010館/累計1627万ドル/2週/サーチライト・ピクチャーズ
7.『Scream 7(原題)』(↓前週6位)260万ドル(-39.9%)/2345館(-215館)/累計1億1867万ドル/5週/パラマウント
8.『GOAT(原題)』(↓前週7位)220万ドル(-35.8%)/2246館(-291館)/累計1億86万ドル/7週/ソニー
9.『Undertone(原題)』(↓前週8位)165万ドル(-45.2%)/1852館(-718館)/累計1846万ドル/3週/A24
10.『Forbidden Fruits(原題)』(初登場)117万ドル/1525館/累計117万ドル/1週/IFC
(※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2026年3月30日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります)
【参照】https://www.boxofficemojo.com/weekend/2026W13/https://variety.com/2026/film/news/box-office-ryan-gosling-project-hail-mary-fsecond-weekend-they-will-kill-you-flops-1236702142/https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/hail-mary-epic-hold-box-office-they-will-kill-you-bombs-1236549448/https://deadline.com/2026/03/box-office-project-hail-mary-they-will-kill-you-1236767718/https://deadline.com/2026/03/box-office-global-project-hail-mary-hoppers-they-will-kill-you-1236768592/https://apnews.com/article/box-office-project-hail-mary-375a52c0dab0db48d822e17ad1971bde
(文=稲垣貴俊)
