【漫画】本編を読む

 近年、高齢出産の増加によって若者が親の世話をしなければならなくなる状況が増えているという。『父が全裸で倒れてた。』(キクチ/KADOKAWA)は、高齢出産で生まれた一人っ子のアラサーである著者・キクチ氏が、倒れた父親の看病と介護から、終活を話し合うまでを描いたコミックエッセイだ。

 30代後半の母親と40代の父親から生まれたキクチ氏。小学生になると自分の親と友だちの親の年齢に差があることがわかり、そのことから思っていたよりも近くにあった「親の死」を意識するようになる。そして中学生になると母親が乳がんを患い、数年後、キクチ氏が20代のときに他界する。

 実家には父親が一人で暮らすようになり、そしてキクチ氏がアラサーとなったある日、虫の知らせのようなものを感じたキクチ氏が急ぎ実家に帰ると、父親が全裸で倒れており、まともに会話ができない状態だった。父親は救急車で病院に運ばれ、そこからキクチ氏の病院通い生活が始まるのだった。

 母親のときは父親がいたことで乗り越えられたのだが、今回はひとりという状況。本人との意思疎通ができないために今後の状況によって延命処置をするかの命を左右する判断を迫られたり、保険金をもらうための仕組みやその申請方法などを学んだりしながら、まさに手探り状態で父親の回復を信じて奔走する。作中で終始駆け回っているキクチ氏と同様に、いざというときに何から手を付けていいのかわからない人には、キクチ氏の経験がきっと役に立つはずだ。

 幸いなことに、働き盛りの若いキクチ氏の生活が高齢の親のために様変わりしてしまったわけではないが、それでも背負わざるを得なかった負担と心労は計り知れないものだ。あとがきでキクチ氏が述べているように、親が高齢であればあるほど、いずれやってくる「何かあった時」に備え、元気なうちに親子で話し合う時間を設けておくことの大切さを教えてくれる作品である。

文=nobuo