谷川十七世名人 永瀬九段の綿密な事前研究を打破した藤井王将
【王将戦7番勝負を読む 谷川浩司十七世名人EYE】谷川浩司十七世名人(63)が第7局を解説し、今後を展望した。戦型は角換わり腰掛け銀。この戦型の後手王は中住まいや右王を選択するケースが近年は多いが、永瀬は△2二王と深く囲った。
「少し前に指された旧式で、そこに鉱脈を見いだしたのでしょう」
事前研究による戦型理解度で先行し、時間消費も抑える。対藤井の数少ない「定跡」を用い、実際に57手目まで2時間半の大差で指し進めた。
ところが封じ手直前の58手目、永瀬は2時間54分長考する。銀得でもある藤井は永瀬の64手目△3八馬(A図)に千日手に甘んじる▲2六飛ではなく、▲5九飛で打開した。▲6九飛とより深く逃げる手も自然だが△4五桂打ちが受けにくい。そこで▲5九飛△4八馬▲5八飛。「AIは推奨していましたが人間的には見えにくい手順でした」。自陣で押し込められ、使いづらかった飛車を馬と交換して優勢になった。
永瀬は藤井から7番勝負で初めて3勝した。とはいえ、7度目のタイトル戦にして全敗。「よく頑張った、ではいけない」とあえて苦言を呈する。
時代をつくった棋士に大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人、羽生善治九段がいる。大山には升田幸三実力制第四代名人ら、中原には米長邦雄永世棋聖ら、羽生には森内俊之九段ら、好敵手はいずれも最初は勝てなくても後に追い上げた。藤井より10歳上の永瀬へ期待も込め「これまでの精進をさらに続けることで、道は開かれます」と説く。
一方、不調説もあった藤井は今年度タイトル戦で5勝1敗。棋王戦を残して「不調は(2月の)1カ月だけ。順調な、そして充実した一年でした」。第一人者の底力を証明した戦いを称えた。(構成・筒崎嘉一)

