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カーデザインの中でも難易度が高いジャンル

今回取り上げる『日産ルークス』と、そのきょうだい車である『三菱デリカミニ』は、軽自動車のいわゆるスーパーハイトワゴンに属するモデルです。このカテゴリーは、実はカーデザインの中でも難易度が高いジャンルなんです。

【画像】『カーデザインの3重苦』を見事に克服!日産ルークスと三菱デリカミニ 全14枚

自動車のデザインはパッケージに大きく左右されますが、『背が高い』、『幅が狭い』、『タイヤが小さい』という3つの要素は、いわば『カーデザインの3重苦』。本来重要な低い構えやタイヤの踏ん張り感を出しにくい、真逆の条件だからです。そんな制約の中で、同じ基本構造を持つルークスとデリカミニが、どのようにキャラクターを作り分けているのかが見どころです。


今回取り上げるのは『日産ルークス』(上)と、そのきょうだい車である『三菱デリカミニ』(下)です。    日産自動車/三菱自動車

新型ルークスは、従来の乗用車的な方向性から大きく舵を切り、『箱』を強調したボクシーなデザインへと進化しました。

その象徴がフロントガラスの角度です。旧型よりも明確に立てることで、スーパーハイトワゴンらしい機能的なシルエットを強く打ち出しています。機能面では旧型の角度でも十分だったはずですが、『広く見えること』も重要な価値になっていると言えるでしょう。

箱でありながら上質さを両立したルークス

箱ながらスタンスも良いプロポーションが巧みですが、面白い試みとしては、一部グレードで採用されている、ドアハンドル付近で駆け上がる2トーンの塗り分けが挙げられます。

軽自動車はサイズの制約が大きく、面のボリュームだけで個性を出すことが難しいため、このようなグラフィック処理が重要になるんです。この特徴的なラインは、単なる2トーンより視覚的にドアの厚みを強調し、縦方向のボリューム感を補う役割も果たしていると言えます。


堂々とした佇まいの日産ルークス。箱でありながら、しっかりしたスタンスが感じられます。    日産自動車

フロントマスクも見どころのひとつです。ボンネットのキャラクターラインを横方向に回しているシンプルな基本立体をベースに、これまでの日産車の象徴だったVモーションのイメージからやや距離を置きながらも、迫力と先進性、そして道具としての信頼感をバランス良く表現しています。

リアまわりでは、コンビランプ下にくびれを設けることで、その下のフェンダーが張り出して見えるように処理され、スタンスの良いシルエットを創出。こうしたテクニックは、軽自動車特有のパッケージの中で、立体感を演出するためのデザイナーの技であり、単なる箱型に見せないための重要なポイントです。

全体としてルークスは、ボクシーで機能的なパッケージをしつつ、ダウンサイジング需要にも対応できる上質さも感じられ、軽スーパーハイトワゴンの中でも際立ったデザインだと思います。

道具感と親しみやすさを突き詰めたデリカミニ

一方のデリカミニは、ルークスと同じ基本ボディを使いながらも、より明確に『道具感』を打ち出したモデルです。旧型でもアウトドアテイストの強いデザインが特徴でしたが、新型ではその方向性がさらに磨かれています。

特徴的な半丸目のヘッドランプはアイコンとして継承されつつ、わずかにサイズアップし、印象としてはややマイルドになりました。一般的にSUV系のモデルチェンジでは、より力強く、威圧感のある表情へと進化することが多いですが、デリカミニは敢えて親しみやすさとのバランスを取ったように見えます。この点はデザイナーとして興味深い判断ですね。


絞り込まれた前後バンパー下端やアーチ周りの黒色部により、ちゃんとSUVのデザインになっているデリカミニ。    三菱自動車

また、今回のモデルでは、ボンネットとフロントフェンダーのパネルがそれぞれ専用部品になっており、ルークスがシンプルで上質な方向に振られているのに対し、デリカミニはよりラギッドでアウトドア志向の強いキャラクターを際立たせています。

ボクシーで道具感あるエクステリア全体を見ると、ひょっとしたら今回はデリカミニを優先させてデザインしたのかもしれません。どちらにしても、異なるコンセプトの車を見事に作り分けた手腕が見事ですね。

軽の枠を超えるインテリアの完成度

インテリアもこの2台の大きな魅力のひとつです。まず、大型ディスプレイをふたつ並べたレイアウトが採用され、軽自動車の枠を超えた上級感を演出。また中央部には表皮を巻いたパネルが使われ、大型トレイも設けられるなど、機能性と質感の両立が図られています。

シフトはオーソドックスなレバータイプを採用していますが、直感的に操作できる点で実用性は高く、日常使いにおいてはむしろ合理的な選択に感じられます。


デリカミニのインテリア。シートファブリックの質感やスマートなディスプレイまわりなど、従来の軽自動車的なイメージはありません。    三菱自動車

さらに注目したいデザインが、インパネ上部がピラーを伝って天井まで回り込むモチーフです。実車ではキャビン全体を包み込むような印象を生み出しており、空間としての一体感を演出。過去にあまり見られなかったアプローチで、デザイン的にも新鮮なポイントです。

基本構成は両車共通ですが、シート素材などでキャラクターの違いが表現されており、ルークスは上質さ、デリカミニは上質でありながらアウトドアフィールも感じさせるバランスも好印象です。

特にデリカミニの最上級グレードは約295万円と、軽自動車として最も高価格帯に位置しますが、デザイン的にも装備と質感がこれまでの軽自動車から大幅に上がりました。

様々な制約の中でここまで完成度を高めてきた点が、デザイナーにとって大変参考になるクルマです。