『リブート』はなぜ“直球の家族愛”を描いたのか 最終章の狙いと重要人物を制作陣に聞く
日曜劇場『リブート』(TBS系)も佳境に入り、第8話では一香(戸田恵梨香)の正体が明らかになった。多くの視聴者が、「一香は夏海(山口紗弥加)である」と第1話から考察していたことについて、今作の脚本を手がけた黒岩勉はこう語る。
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「『夏海が一香に“リブート”しているのでは?』という考察は、今作の世界観を提示した時点で避けられないだろう、と予想はしていました。そう思わせずに進めるやり方もあったと思うんですけど、僕の感覚では、蓋を開けた瞬間にある程度の視聴者が予想していたほうが腑に落ちるし、『やっぱりそうだった!』と言ってくれていいと思っていて。全然わからないと肩すかしになる可能性もあるし、それはあまり求められていないんじゃないかと。ある程度情報を出していったほうがいいだろうとは考えていました」
意外だったのは反響の大きさ。「シンプルに主人公がどうなるんだろうと観ていただけるかなと思ったら、誰が他にリブートしているかの予想が多かったのがちょっと驚きでした。第7話で一度、一香は悪人だったことにして、一回裏返してから最後にもう一度戻すつもりだったので、そこまではある程度予想されていたほうがむしろいいかなと考えていたりしました」と脚本のプランを語った。
●戸田恵梨香だからこその第8話
今作は台本が完成した状態で撮影に入っており、東仲恵吾プロデューサーは「第8話で夏海が一香にリブートしていたことが明らかになりました。演じる戸田さんにとって一話から七話までの一香が、この事実を知ったと同時に同じシーンなのに別に見えるようにしなくてはいけないというのは、制作側からの挑戦状でもあり、黒岩さんから台本を受け取った制作陣もこれは難しいなと思いながらも、第8話の構成は本当に素晴らしく、この世界線をなんとか維持したいという気持ちがありました」と話した。
第8話では、夏海の視点から過去が回想される。東仲は「最初にクランクインしたのが第1話の(夏海の)葬儀シーンで、第8話にも影響してくるところなので、戸田さんにとっても、演じ方がすごく難しくて。自分自身の葬儀が開かれ、家族とも対峙しないといけないものすごく感情が揺さぶられる瞬間なんですよね。バレない芝居をすることもできたと思うのですが、このシーンに関しては夏海は落ち込んでいる最愛の息子を見てしまうシーンで、夏海としてはとても心揺さぶられるシーンだったので嘘はつかないほうがいいですねと、最初に(坪井敏雄)監督も交えて相談させてもらいました。戸田さんの何気ない視線や振る舞いで視聴者の方々も気づいてくださいましたが、それは最初から最後まで戸田さんの芝居が一貫していらっしゃるということでもあります。第8話をご覧いただくと、一人の女性が家族のために生きる姿が如実に表れているので、第1話時点でもわかってしまうなら、それはそれでいいと思っていました」と言い、演技を通して伝わる感情を重視した。
さらに、東仲は「戸田さんも鈴木(亮平)さんと同じようにストイックな方で、台本の一字一句やニュアンス、視聴者に何を伝えたいかという制作陣の意図も含めて常に確認しながら演じられていました。すごく難しい役だったと思うんですけど、魂のこもった芝居で、現場で観ていたときもすごく引きつけられるものがありました。そしてそれ以上に、編集でそれまで分断されていたものがつながったときに、ものすごいダイナミズムを感じて想像を超える世界がありました。戸田さんだからこその第8話になりました」と戸田の演技を絶賛した。
黒岩も、戸田の演技力について「戸田さんは前半からすでに素晴らしかったですけど、後半の一香さんが本当に素晴らしくて。第8話以降は圧巻ですね。軽やかに演じているんですけど、ずっと緻密に計算しているんです。今回は台本がそろっていたこともあって、最初から最後まで、自分が思っているものをどこまで出していけばいいか、内に秘めたものがどこまであるかを全部計算されて、第8話でひっくり返されたときの心動かされる、鳥肌の立つ演技が素晴らしいです。めちゃめちゃ頭がいい人だな、クレバーで勘の良い方だなというのをとても感じました」と最大級の賛辞を送った。
●2026年にあえて「直球の夫婦愛」を描く意義
終盤に入り、家族の絆、なかでも夫婦愛がテーマとして浮上。東仲は「いろいろな愛の形がある」と語る。「日曜劇場という枠で、家族愛を根底にしたものを描きたいと思っていました。極限状況に置かれて家族を思う気持ちは普遍的なものだと思っていて、その中で、どんな形であれ家族を守ろうとする夫婦の話と、それを信じる子どもを描きたいと思ったことがきっかけですね」と作品の原点を明かした。
黒岩は「東仲さんと『ラストマンー全盲の捜査官ー』(TBS系)をやったんですが、『ラストマン』は兄弟愛と家族愛だったんです。そのときに、『“究極の夫婦愛”を描きたいですね』と話していて、そこから夫婦愛が試される状況を自分の中で考えました。昔の任侠映画みたいな人間同士の熱量ある芝居がいいなと思ったんですけど、現代に落とし込んで裏社会が絡めば、ある程度デフォルメされた熱い芝居も許される世界観ができるんじゃないかというところで試行錯誤した記憶があります」と構想の過程を振り返った。
あえてストレートな夫婦愛を描いたことについては「不倫とかじゃなくて純愛にしたのは、入り口が究極の夫婦愛だったので、そこは裏切りのないものにしたかったですし、出てくる人たちそれぞれにちゃんとした愛がある。真北(伊藤英明)は少し違うんですが、それでもやっぱりみんな愛しているんですよね。夫婦で、妻を愛し、夫を愛しているという世界は裏切らずにやりたいという思いがあります」と熱弁した。
2026年のいま夫婦愛を描くことについて、東仲は「夫婦愛や家族愛は普遍的なものだと思うんですけど、刺激的なものが流行り、変化球が多い時代だからこそ、もう一度ストレートに描くことで、視聴者の方に届いたらいいなという思いは強くあります」と言い、黒岩も「本当にドロドロしたものが増えましたよね。直球のまま家族ドラマをやっても新しくないので、パッケージは今までにない展開にしながら、その中で直球の夫婦愛をやれたらいいなと思いました」と意義を語った。
●最終回に向けた「最後の大きな再起動」
第8話では、永瀬廉演じる冬橋の冷徹さが際立っていた。黒岩は「第8話で、早瀬から夏海を殺すなと言われて、『あいつが誰だろうと関係ない』と返すんですけど、予想や想像を捨てて事実だけを見ろと。一香は合六が殺せと命令し、マチ(上野鈴華)を殺した奴らを雇って連絡しているのが事実だというリアリズム、現実を見る姿勢はたぶん合六から教わっていると思うんですよ。彼がそれをどう変えていくか。合六から教わったルールを変えるのか。変えるならなぜそうするのか。最終的に冬橋が元の場所に帰れるかも含めて、どういう結論にたどり着くかは最終回でお示ししています」と注目ポイントを挙げた。
最終章となる第9話以降の見どころについて、東仲は「早瀬夫婦が幸せな人生を歩んでいくために、もっと言うと息子のためにどうするべきかという中で、合六を潰すしかない、組織を倒すしかないという意味で、平凡な夫婦が息子を守りたい一心で裏社会に挑む活劇になっています。キーパーソンが市川團十郎さんですね。市川さん演じる人物がどう絡んでくるかが大きな見どころ。最終回は大きなサプライズを用意しています」と語った。
黒岩は「第8話までご覧になった方は『ほぼほぼ全部、皆さんお分かりになりましたね、この世界が』という状況です。『リブート』というタイトルのとおり、ドラマ自体が再起動を何回かするのですが、ここが最後の大きな再起動になります。早瀬夫妻が家族の元に戻れるかという前向きなエンターテインメントになり、家族の感動物語として楽しく観ていただけるところです。ここから最高に面白いです。あとは、真北兄弟だけ唯一まだめくれていない何かを持っているので、兄弟と真北夫婦を観ていただければと思います。最終回の最後で『リブート』というタイトルが付けられた理由が伝わると思うので、再起動の意味合いを感じていただけたら嬉しいです」と期待を込めた。
(文=石河コウヘイ)
