両親の離婚を望む32歳会社員の「悲願」は…喧嘩ばかりしてきた還暦の父と53歳の母、驚愕の本音

写真拡大 (全5枚)

「夫婦ゲンカの最も大きな被害者は子供です。愛着の基盤であり、安心な場所である家庭で、信頼する大人同士が攻撃しあっている環境により複雑性PTSDを発症するほか、複雑な“生きづらさ”の原因になることもあります」こう語るのは、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さん。彼女は、メンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。

山村さん連載「探偵はカウンセラー」は、山村さんが心のケアをどのようにしていったのかも含め、さまざまな事例から、多くの人が抱える困難や悩みをあぶりだしていく。個人が特定されないように配慮をしながら、家族、そして個人の心のあり方が、多くの人のヒントとなる事例を紹介していく。

今回山村さんのもとに相談にきたのは32歳の会社員・信也さん(仮名)。結婚33年になる60歳の父と53歳の母は、物心ついた頃からケンカをしており、二人を離婚させたいと、山村さんのところに相談に来たのだ。

高学歴を喜ぶ母と、美しさに惚れた父

慎也さんの両親は、父が27歳、母が20歳の時に出会っています。当時、父は現在も勤務する大手企業の正社員エンジニア、母は短大を出たばかりで、モデルの仕事をしていました。

友人の紹介で出会った父は、母に一目ボレ。半ばストーカーのようになり、母に求愛し結婚します。母も高学歴かつ大手企業に勤務する男性が好きでした。2人が結婚するとき、父方からも母方からも反対があったのを、両親は押し切ってスピード婚します。

しかし、その後、父が専門用語や難しい言葉を使うと母が「私をバカにしている」とキレるなど、些細なことからケンカに発展。お互いに手を上げることもあり、近所の人が警察と児童相談所に通報。慎也さんは小学校に上がる前、祖母の家で1年間暮らしていたことがあったそうです。その後もケンカは続き、慎也さんに「パパとママ、どっちが好き?」と聞き、選ばないと暴力を振るわれたそう。面前DVと身体的虐待を受けていたのです。

慎也さんはまた、パワハラ上司のターゲットになり、うつで休職したこともありました。その時、支えてくれた女性と結婚を考えるようになってから「両親は離婚した方が、お互いのためになるのでは」と思うように。

母は慎也さんが10歳の頃から、調査会社の正社員として勤務していますが、自分の収入は貯金しており、生活費として出さない。父が生活費を渡さないと、慎也さんに「10万円振り込んで」などと言ってくるそうです。

そんなこともあり、慎也さんは両親を離婚させたい。おそらく共依存状態にあり、このままだといい結果にならないと判断。母は今も「夫からベタ惚れされている」と信じている。父の浮気の証拠を押さえれば、2人が離婚を考えるきっかけになるのではないかと、私に調査を依頼したのです。

「父は浮気をしている」は事実か

慎也さんは「父は多分、浮気をしている」と断言していました。まず、父が自宅から出てくるところを追うために張り込みをスタート。「父は典型的な社畜です。愛社精神が半端ないです」というとおり、金曜日の朝5時30分にマンションから出てくるところをキャッチしました。

父は髪を七三にしっかり分けており、清潔感がある。ステンカラーコートにはしみもしわもなく、あの汚部屋に住んでいる人とは思えません。身長は175cmくらいで体もがっしりしており、若く見えます。

都内の大きなオフィスビルに通勤し、そこからしばらく動きはありませんでした。18時30分に小走りで出てくると、家とは違う方向の電車に乗り、乗り換えも小走りで駆け抜け、23区郊外の駅で下車。こぢんまりとしたマンションに入って行きました。

同世代らしき女性が

それから5分もしないうちに、デニムとダウンジャケットに着替えた父が自転車に乗って走って行きます。ペアの探偵は「どういうことだ」と父の姿を撮影した写真を解析すると、大きなリュックを背負っています。そこにはマルチーズのようなワンちゃんの姿が映っていました。

周辺のトリミングサロンを探しているうちに、父が戻って来ました。それから2時間後の21時30分に、50代半ばと思しき、美しい女性と一緒に家から出てきます。女性と父は夫婦のようで、スーパーに寄って肉やフルーツを買い、父が支払っている間にさっさと袋に詰めていました。

トリミングサロンでワンちゃんを受け取ると、父が支払っている間に、トリマーさんと女性が親しげに話している。ワンちゃんは散歩を嫌がり、父に抱っこされたくて甘えている。その様子を見て、父は大笑いしています。

父がワンちゃんを抱き、女性が荷物を持って帰宅。翌日の夕方、マンションから出てきた父は、女性に駅まで見送られて、改札でキスして帰宅していました。

以上を報告すると「あ、やっぱり。わかっていましたが、親のこういう生々しい写真は、ショックですね」と苦笑いしていました。

それから、慎也さんは父と2人で話す機会を持ちます。幼い頃の恐怖心があるので、友人の弁護士に近くの席で待機してもらうことに。女性のことを話すと、父は驚き「バレたら仕方ないな」と言ったそうです。

10年に及ぶ浮気

父の話によると、女性は元部下で現在55歳。交際は10年に及んでいるとのこと。女性が離婚後、再就職を相談されるうちに男女の仲に発展。家に行くようになったのは、女性の娘が独立した4年前からだそうです。

「父は母に『離婚した方がお互いのためだ』と何度も言ったそうですが、母から『私の人生を台無しにしたのはあんただ。一生責任を取れ!』と怒られたそうです。父は若い頃、かなり強引に結婚まで持っていったようです。父も、好きな人を幸せにできなかったという思いを抱えてており、『責任を取らなければ』と話していました」

母は父に対する被害者意識が強い。母はモデルとして成功し、キャリアを積んで世界的に活躍するつもりだったそう。それなのに、父によって可能性を潰され、家庭に縛り付けられたという恨みが、どんどん巨大化していったそうです。

「そのピークが20〜30代で、その時のケンカはとにかく激しく、僕はとばっちりを喰らいまくった。ただ両親はずっと仲が悪いわけではなく、情が濃い母が父にべったりしていることもありました。でも、次の瞬間に怒りが爆発していることがあり、腫れ物に触るように接していたことを覚えています」

今回、慎也さんにとってよかったのは、父から「本当に慎也には申し訳ないことをした」という謝罪を得たこと。

「思い返すと、父は少なくとも、僕を守ってくれていた。おばあちゃんちにいるときも、毎週様子を見に来てくれたし、学校の参観日に来ていたのも父。そういえば、父はお弁当も作ってくれていたんですよ。冷凍食品ばかりですけどね。

父にもだいぶ叩かれましたが、まあ、反省しているんだな、とは思いましたよ。それなら今後のために離婚をしてほしい。そのことを伝えると、『それはできない。ママのことは俺が面倒見るから』と言っている。その時、『は? あんた、女と付き合って、生活費を家に入れてませんよね。俺が金を払うこともあるんだよ』と言っちゃったんです」

すると、慎也さんの友人の弁護士が来て、「これからの話をしましょう」と間に入ってくれたそうです。

「父も母も関係はもう限界を迎えている。食うか食われるかのところに来ており、もう未来はない。母が父に暴力を振るわれた後に、仕返しのようにする浪費のこと、お互い離れた方がいいことなど、僕の気持ちを伝えました。友人は、『奥様が困らないように、財産分与をすればいいんですよ』とアドバイスしました。父は権威に弱いですから、弁護士の友人の言葉に気持ちも傾いたようです。そして友人が提案した、夫婦関係改善のためのカウンセリングに、両親は通うことになったのです」

「円満に離婚したいです」

第三者を交えて話すと、お互いの気持ちがわかるものです。それから2ヵ月後、慎也さんから「両親が離婚しました」と連絡がありました。

「二人でカウンセラーのところに行き、最初の質問で『離婚を回避したいですか、円満に別れたいですか』と聞かれ、2人同時に『円満に離婚したいです』と答えたそうです。母は父への憎悪で買い物したり、僕にお金を請求したりすることが健全でないことはわかっていた。母は父に対して怒りを抱えていたんです。その上、父が浮気していたとわかったら、さらにこじれる。父には浮気のことは伏せてもらいました」

そして、弁護士と相談の上、母にマンションと慰謝料を上乗せした財産分与をして円満離婚。

「なんか、あっけないというか、『あの苦しみはなんだったんだろう』という感じ。もしかしたら、母も彼氏がいるのかもしれませんね」

その後、慎也さんは父から「迷惑料だ」と100万円の振り込みがありました。「複雑ですけど、受け取るしかないですね」と言っていました。夫婦ゲンカを見ながら育った慎也さんは今も怒っている人を見ると動悸が激しくなったり、ふと消えてしまいたくなったり、アルコールを飲みすぎたりする心の不調を抱え、通院しています。

慎也さんは32歳。立派な大人です。それでもなお、目の前で繰り返されてきた両親の喧嘩が、心に闇を落としている。面前DVは虐待だということを、多くの人が知る必要があると強く感じます。

慎也さんはいま、寄り添ってくれる彼女がいますが、結婚の話もいざ現実味を帯びると「こんな家庭に育った僕が、幸せになれるわけがない」と、今は保留にしているそうです。慎也さんが、父や恋人のサポートを得つつ、幸せになってくれる日が1日でも早く来ることを願わずにはいられませんでした。

調査料金は35万円(経費別)です。

「両親を離婚させたい」36歳会社員が願う切ない理由。母親から「根性焼き」された凄絶な過去