セブンが挑む「カジュアル衣料」の茨の道…ファミマとの決定的な差と、消えた“ヨーカドー”のノウハウ

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コンビニ業界最大手のセブン-イレブンが、このほど「衣料品の強化」を打ち出しました。具体的には、昨年10月の関西万博で話題となった「セブン」ロゴ入りTシャツを筆頭に、カジュアルアパレルを展開していく計画だといいます。

これは明らかに、先行して好調を維持するファミリーマートのカジュアル衣料、通称「ファミマ服」を追随する狙いがあるのは明白です。果たして、アパレルはセブンの「新たな成長エンジン」になり得るのでしょうか。

王者セブンの焦り? 異例の衣料品強化

かつてはサークルKサンクスやam/pmなど、多くのチェーンが覇を競っていたコンビニ業界。しかし現在は、セブン、ファミマ、ローソンの大手3社による寡占状態にあります。

その頂点に君臨するセブンですが、国内店舗数は飽和状態に達し、成長率には陰りが見え始めています。従来の主力品である惣菜や弁当、スイーツなどは各社ともに差別化が難しくなってきました。消費者も新奇性を感じにくくなっており、これ以上の売上高の積み増しは容易ではないのが現状です。

そんな中、世間の注目を集めたのが「ファミマ服」の成功でした。

黒幕は伊藤忠? 「ファミマ服」最強の裏

’19年に靴下からスタートし、SNSやメディアの注目を集めた「ファミマ服」。ファッションブランド「ファセッタズム」のデザイナー・落合宏理氏とタッグを組み、今やTシャツ、ブルゾン、パンツへと拡大。’24年には売上高130億円に到達したと発表されています。

これまでコンビニで売られていた衣料品は、急な出張や宿泊などの目的を見据えた肌着、ワイシャツ、靴下、ストッキングなどの実用衣料ばかりでしたが、カジュアル衣料品を大々的に発売したのは画期的な出来事でした。

全店売上高3兆円を超えるファミマからすれば、130億円という数字は経営を左右する規模ではありません。しかし、ブランドイメージを向上させる広告塔としての価値は極めて高い。王者のセブンがこの成功を黙って見過ごすはずがありません。

ただ、セブンが同じ道を辿るには大きな壁があります。アパレルには高度な専門性が必要だからです。ファミマの成功の背後には、繊維事業に圧倒的な強みを持つ親会社・伊藤忠商事のノウハウが惜しみなく注入されています。

ローソンも挫折…「通年販売」の高い壁

先行事例を見ると、ローソンもオリジナル衣料に挑戦していますが、ファミマのように通年での展開はできていません。人気ブランド「フリークスストア」とのコラボニットなどを断続的に投入していますが、あくまでスポット的な販売に留まっています。直近では昨年11月に第5弾と銘打って、12ゲージニット(税込2999円)が発売されています。

アパレルを継続するには、単に作るだけでなく、緻密な「年間商品計画」が不可欠です。「いつ、何を出し、いつまで売るか。その後は何を投入するか」というエンドレスのサイクルを回すノウハウは、一朝一夕に得られるものではありません。

Tシャツ5500円! セブン強気設定の罠

かつてのセブンなら、傘下にイトーヨーカドーという総合スーパーがあり、そこからノウハウを移植することも可能だったはずです。しかし、イトーヨーカドーはすでに売却されており、肌着・靴下以外の自前の衣料品売り場も廃止。衣料品の通年展開ノウハウも雲散霧消してしまっている上に、セブン-イレブンとの関連性も薄れてしまっています。ここからのバックアップはほぼ期待できないでしょう。

このままでは、今回のロゴTシャツが成功したとしても、ローソンのような「単発のスポット販売」に終わる可能性が高いと思われます。

また、価格設定も大きな課題です。ファミマの無地半袖Tシャツが1490円(税込)、長袖無地Tシャツは1998円(税込)で展開されているのに対し、セブン-イレブンとNO COFFEEのロゴ入り半袖Tシャツは5500円(税込)という強気な設定でした。もし、これと同じような店頭販売価格になるなら、そう簡単には売れないのではないでしょうか。

チャレンジすることは悪いことではありませんが、カジュアル衣料品にチャレンジするのであれば腰を据えてじっくり取り組むことをセブン-イレブンの首脳陣にはお勧めします。

取材・文:南 充浩

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。