山本太郎を辞職に追い込んだ「多発性骨髄腫の一歩手前」とはどんな病か? 国会を蝕む「過労と高齢化」

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骨や腎臓、免疫に不可逆的な障害

れいわ新選組代表・山本太郎氏(51)が、自身の健康問題を理由に議員辞職を決断した。その背景にあったのが「多発性骨髄腫の一歩手前」という、血液がんへ進行するリスクを抱えた状態だ。働き盛りの年代で、国政の第一線から退く選択を迫られた事実は、政界に静かな衝撃を広げている。

多発性骨髄腫は、骨髄で抗体をつくる「形質細胞」が、がん化し、異常な免疫たんぱく(M蛋白)を大量に産生する血液のがんである。進行すると、骨がもろくなり骨折しやすくなるほか、貧血、腎機能障害、免疫力低下による重症感染症など、全身に深刻な影響を及ぼす。

医療法人社団五良会理事長の五藤良将医師が解説する(以下、「」は五藤医師)。

「多発性骨髄腫は初期には自覚症状が乏しく、疲れやすい、腰や背中が痛い、貧血気味といった、年齢や過労のせいにされがちなサインしか出ないことが多い病気です。しかし、一度進行すると骨や腎臓、免疫に不可逆的な障害を残すこともあります。

山本氏の言う“一歩手前”とは、医学的にはMGUS(単クローン性免疫グロブリン血症)や無症候性多発性骨髄腫といった“前駆状態”を指す可能性が高いと考えられます。その場合、がんそのものではありませんが、将来的に多発性骨髄腫へ進行するリスクを抱える段階にあります。

MGUSでも毎年およそ1%が多発性骨髄腫へ進行します。無症候性骨髄腫では初期数年間の進行率がさらに高く、定期的な血液検査や画像検査で厳重に経過を追う必要があります。“一歩手前”は決して安心できる状態ではなく、生活や仕事の負荷を大きく見直すべき段階です」

ここで浮かび上がるのが、政治家という職業環境の過酷さだ。

長時間労働、睡眠不足、国内外の移動、極度の精神的緊張――これらは免疫やホルモンバランスを乱し、がんや心血管疾患のリスクを高めることが知られている。さらに日本の政界は、権力の中枢に70代後半から80代の政治家が少なくない「高齢化構造」を抱える。

健康と職責の限界

医学的には、この年代はがん、心筋梗塞、脳卒中、腎不全、認知機能低下の発症率が急上昇するハイリスク層だ。五藤医師はこう指摘する。

「高齢に加え、慢性的なストレスと睡眠不足が続くと、免疫の監視機構が低下し、血液がんを含む悪性腫瘍のリスクが高まる可能性が指摘されています。政治家の生活は、医学的に見て決して“健康に優しい環境”とは言えません」

つい先日、菅直人元総理(79)が自らの認知症を公表し、また菅義偉元総理(77)も政界からの引退を表明した。いずれも、第一線での責務を自覚したうえでの「身の引き方」を示した例だといえるだろう。

だが、このように自らの健康状態や限界を率直に明かし、潔く進退を決める政治家は、決して多くはない。

政治家にとって健康問題の公表は、支持率低下や選挙での不利につながりかねない。病気や体調不安は「弱さ」として切り取られ、票を失う要因になる可能性があるからだ。そのため、多くの場合、多少の不調は伏せられ、「気力で乗り切る」「責任感で続ける」という言葉で覆い隠されてきた。

しかし、国家のかじ取りを担う立場にある者が、万全でない状態のまま重大な判断を下し続けることのリスクは計り知れない。

51歳の山本氏が、「ベストな状態で国政に向き合えない」と判断し、議席を返上した一方で、後期高齢者に該当する年齢の政治家が今なお国家の重要な意思決定を担っている現実がある。そこには、「過労」と「高齢化」という二重の負荷が、国会全体に時限爆弾のように積み重なっている構図が透けて見える。

山本氏の病と決断、そして菅直人氏の認知症公表、菅義偉氏の引退表明は、いずれも「健康と職責の限界」を正面から見据えた選択であり、政治家としての誠実さと責任感を示す行動だったといえるだろう。