三流は「資料を読む」、二流は「丁寧に説明」、では一流は?…プレゼンで評価を上げる人・下げる人の決定的な差
※本稿は、望月安迪『コンサルタント3年目までの必修ビジネススキル』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■「読み上げ」「丁寧な説明」では相手の心は動かない
僕がマネージャーだった頃、クライアントからこう指摘されたことがあった。
「役員の○○さんに向けて、資料をそのまま説明しちゃだめだよ。そんなんじゃ伝わらない」
「資料を説明する」とは、スライドに書かれたテキストをそのまま読み上げたり、「図表のこの部分は□□、このページの結論は△△です」と、資料の内容を書いてあるままに伝えることだ。それでは相手は、資料を音読されているようにしか感じられない。決して、そこに込められた意味は伝わらない。
「資料を説明しちゃいけないのか……じゃあどうすればいいんだろう」と僕が思っていると、次のアドバイスをいただいた。
「資料“を”説明しちゃいけない。資料“で”説明するんだよ」
それは、スライドはあくまで思いを伝えるための手段として活用し、そこに込められた真意を語ることに集中をせよ、という教えだ。スライドに載っている図解やテキストは、あくまで聞き手の理解を深める道具だ。
それを使って、プレゼンター自身の言葉で、思いを込めて伝える。そうすれば、聞き手も無機質な“スライドの内容”ではなく、“1人の人間の思い”として聞いてくれるようになる。そうすれば互いの理解も関わり合いも、より深まる。
■評価を上げる人は「求められていること」に応えている
この言葉をきっかけに、プレゼンテーションの本質について考えるようになった。
僕らが資料を作るのは、ただ読み上げるためではない。自分の“伝えたいこと”を相手に届け、判断を促し、行動を引き起こすことが目的だ。スライドは、その内容を相手に届ける“手段”に過ぎないのだ。
プレゼンテーションでよくある失敗が、相手が聞きたいことではなく、資料を読み上げるなど自分の話したいことをひたすら並べてしまうことだ。プレゼンの内容に抑揚が失われ、説明が長引くのはもちろん、一方的に情報を押しつけられた相手からは疑問を抱かれてしまう。
こうした失敗に対して僕がフィードバックするのは、「それはサプライヤーロジックだよ」ということ。供給者目線に陥ってしまい、顧客目線に立てていない姿だ。
プレゼンテーションで大切なのは、“何を届けるか”の前に、“何を相手が求めているか”を考えることにある。高額なフィーで雇ったコンサルタントに対して、クライアントは当然「自分の知らない新しい発見」や「意思決定のための示唆」を期待している。
関心がないことを延々と聞かされるクライアントの頭の中を想像してみよう。
・「知りたい疑問は○○なんだけど、それはどこで出るんだ?」
・「この内容って当たり前だよな……、もっと新しい情報はないのか?」
・「わかり切ったことをそんなに説明しなくていいのに」
・「ここは資料を見ればわかるから、早く先に進めてくれないかな」
■抑揚とリズムが印象を変える
このように話し手と聞き手がすれ違ったままでは、プレゼンテーションが台なしになってしまう。プレゼンテーションで大切なのは、相手の“知っていること”と“知りたいこと”を見極めることにある。それがはっきりしていれば、
・「ここは相手も知っているから、前提として触れる程度でさっと流そう」
・「ここは前から関心があったところだから、しっかり時間を使って丁寧に伝えよう」
といったように、プレゼンテーションに抑揚やリズムが宿る。
相手の関心に沿って抑揚やリズムをコントロールすること、それがプレゼンテーションの成功の秘訣だ。人間のコミュニケーションは、単に事実やデータを受け渡ししているだけではない。言葉が抑揚とリズムを伴って相手に届けられたとき、そこに意味と“命”が宿るのだ。

同じプレゼンテーションの内容でも、その伝え方ひとつで印象や説得力は大きく変わる。「何を伝えるか」とは別の、「どのように伝えるか」という側面だ。
たとえロジックが完璧でも、小さな声でボソボソと「○○だと考えていまして……」と語尾を濁していては、相手に「この人、自分が言ってることに自信ないのか?」と不信感を抱かせてしまう。中身はよくても、伝え方のせいでクライアントに刺さらず、「なんともったいない……」と思ったことは少なくない。
■「声の大きさは2倍、語尾ははっきりと」
クライアントに疑問を抱かせる要素は、プロフェッショナルとして完全に排除しなければならない。そこで、単純ながらも効果的なアドバイスは、「声の大きさを2倍に、語尾をはっきりと!」ということだ。声が小さいと、それだけで相手に信じてもらえなくなる。
対して、大きい声量で語尾を堂々と言い切ることができれば、言葉に迫力が生まれ、内容や発言者への信頼につながる。
その際に大切なのは、声を張れるだけの“内容作り”にある。単に声だけ大きくしても、内容に自信がなければ、自然と声は小さくなり、語尾が尻すぼみになってしまう。言いたいことが明確にあり、議論の筋道に揺るぎがなければ、自然と口調も力強くなり、語尾もはっきり断言できる。
「何を伝えるか」と「どう伝えるか」は、互いに支え合うのだ。
哲学者のメルロー=ポンティは、僕らは身体によって世界を経験すると説いた。プレゼンもまた、身体を通した言葉によってこそ相手へと響く。虚勢を張った自信はたやすく見抜かれる。自分の論理や準備した内容に確信を持ち、“身体”から声をしっかり出すこと。それによって言葉は、現実の場で力強く響いていく。
では、相手に刺さる資料を作成するにはどうすればいいのか。次からは具体的なエピソードをもとに紹介する。
■スライドの片隅に「答えるべき論点」を書いておく
コンサルタントの岡崎さんは、クライアントが導入を検討している新技術の調査を任されていた。岡崎さんは最新の調査レポートや論文に目を通して情報収集を徹底的に行い、完成したスライドには、技術の性能や実装方法、競合技術との比較データなど、詳しい情報がわかりやすく整理されていた。
ところが、もともとのゴールは「新しい技術がどのように顧客価値を創出し、ビジネスに貢献するのか?」という論点に答えることだった。そのスライドを見た僕は、「いや、こういうスペックの説明が欲しいわけじゃない。このスライドで答えるべき論点は何だっただろう?」と指摘をした。
この失敗から学ぶべきは、資料を作り始める前に“これで何の問いに答えるのか”を見失わないことだ。実際にスライド作りに取りかかると、どうしても「どんなデザインにしよう」「どんな情報を入れよう」といった体裁面に気を取られがちになるが、論点がズレていてはいくら見栄えを整えても正しいメッセージは伝わらない。
この原則を忘れないために、たとえば「○○の新技術はどんな顧客価値を生むのか?」というように、スライドの片隅に答えるべき論点を書いておくといい。結果、作業にのめり込んでも答えるべき問いを忘れなくなり、不要な情報を削ぎ落としゴールに集中することができるようになる。もちろんそれだけ、メッセージもブレずにクリアになる。

■現状分析だけはNG、「着目点」「強み」「有効策」を明示
コンサルタントの関川さんは、とある案件で業界分析を任されていた。市場規模のデータ、業界トレンド、競合他社の動向などを丹念に収集してスライドに盛り込み、スライド数にして30枚超えの調査資料ができあがり、情報の「量」は充実していた。
ところが、いざマネージャーに見せると「市場トレンドや競合の動向がいろいろあるのはいいですが、結局、この資料で言いたいことって何ですか?」と指摘されてしまった。情報をしっかり集めて整理したことで、かえって“何が言いたいのか”が見えにくくなってしまう、という失敗パターンだ。
論点が決まったら、まずやるべきことは「このスライドは何を伝えたいのか?」というキーメッセージを突き詰めることにある。先の例なら、
・市場や競争環境から、業界の機会と脅威は○○に着目すべき
・自社が強みを発揮できるポジションは△△の領域である
・差別化の方向性としては××が有効である
といったメッセージを先にはっきりさせておく。
逆に、次のようなメッセージを書いてしまうと、確実に上位者から指摘を受けることになる。
・「○○の調査を行った」→だから何?
・「現状分析」→それはメッセージではなくスライドタイトル
・「現時点でタスクの40%が完了」→順調? 遅延?
・「検討結果は以下の通り」→結果は何なの?
・(リード文なし)→そもそも何が言いたい?
■完成した達成感に浸らず、リハーサルを繰り返す
「スライド作りが苦手」ともし君が思っているなら、それは“スライドのデザイン力の問題”ではなく、“何を伝えるべきかが曖昧”であることが原因なのかもしれない。テクニカルなスキルに走る前に、「論点設定」と「メッセージの明確化」を徹底する。これが“ズレない”資料作成の最大の秘訣だ。
資料がひと通りできたとき、つい「やっとできた!」と達成感にひたっていないか。しかし、ここからさらに品質を高めるのがプロフェッショナルであり、その工程を僕は「資料のPoC(Proof of Concept)」と呼んでいる。いわば、クライアントに出す前に「この資料は本当にクライアントへ伝わる内容になっているか?」を自分で確かめる実証実験だ。
PoCを行う方法はいたってシンプルだ。実際にクライアントに説明をするつもりで、スライドを見ながら頭の中でリハーサルしてみるのだ。すると、
・「この部分は飛び飛びで流れが悪いな」
・「データや根拠が不足している、と突っ込まれそうだな」
・「クライアントが気にしそうな事項に触れられていないな」
・「誤字や表記のバラつきがあるな」
といったことに自然と気づくことができる。

■ストーリーがスムーズに流れるまで磨き込む

発見した修正箇所はスライドに反映させ、そこから再度PoCを行い、資料全体を何サイクルも磨き込んでいく。完了の目安は、「自分の中にモヤモヤが残らない状態」になること。説明するときに変な詰まりを感じず、一連のストーリーがスムーズに流れるようになっていれば、少なくとも自分の視点では資料の質を目いっぱいまで高めたと言える。
最終的にはプロジェクトマネージャーや先輩に資料をチェックしてもらうことになるが、自分が目いっぱい確認しても気づかなかったフィードバックを受けたなら、それは成長の大チャンスだ。そこから再度PoCを回し、もう一段レベルアップができる。そしてそれを自分の経験として取り込んでいく。
「資料作成」は単なる作業ではなく、自分自身の思考力・表現力を鍛える最高のトレーニングの場だ。丹念にこの磨き込みのサイクルを回すことで、基礎力を底上げしていこう。
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望月 安迪(もちづき・あんでぃ)
デロイト トーマツ コンサルティング ディレクター、戦略コンサルタント
1989年生まれ。飛び級で大阪大学大学院経済学研究科経営学・金融工学専攻修了、経営学修士(MBA)。2013年にデロイトトーマツコンサルティングに入社。長期ビジョン構想、事業戦略策定、新規事業開発、企業再生、M&Aの他、欧州・アジアにおけるグローバル戦略展開、グループ組織再編にも従事。新卒・中途入社社員の採用や人材開発にも携わる。著書に『目的ドリブンの思考法』『シン・ロジカルシンキング』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)。
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