「エースはお前だ!」「驚きの発見」蘭レジェンドたちも絶賛する8戦8発の上田綺世、わずか2か月の“進化と変化”に絶好調の真相を見る【現地発】
スペインのマジョルカから買い取りオプション付きで9月2日にフェイエノールトと契約したラリンは、これからコンディションを上げて本調子を取り戻そうとしているところ。ファン・ホーイドンク以外にも、オランダ国内では「正位置を争うライバル不在が、上田の不安を取り除いている」という声がかなり多い。
「エースはお前だ」という指揮官からの信頼、ゴールを重ねることで生まれた自信、「綺世にパスを出せばアシストが付く」というチームメイトの期待――。これらが噛み合って、今のフェイエノールトは全員が上田との成功体験を共有し合っている。すると、さらに上田のプレーコンテンツが上質なものになっていく。ユトレヒト戦の上田は、前線に張ることで作ったスペースに自ら降りて、頻繁にビルドアップの経由基地になっていた。また、スローインを近くで受けたり、遠くで胸トラップしてから逆サイドに展開したり、ヘディングで競り勝ったり、スローインのファースト・ターゲットになっていた。
今から2か月前、エクセルシオール戦で、前線に張ってチームに奥行きを作るタスクを実行した上田と、こういう話をした。
「相手のCBと戦うことがチームのビルドアップで求められていること。なるべく高い位置を取って、中盤にスペースを作って。そのスペースを自分が使ってもいいけれど、僕はビルドアップに参加して、降りて組み立てるタイプでもない。だから逆に空けておいて自分がプレーしているエリアを確保している。そうしたら味方もうまく使えますしね。だから、自分は下がらないようにして、相手を高い位置で止めるように意識してます」
最近のアストン・ビラ戦(EL)後、私が彼に「引かなくなりましたよね」と訊くと「いえいえ、まあ」と一旦、間合いを入れてから「フォワードらしいプレーを、フォワードらしく求められるようになりました」と答えた。その「いえいえ、まあ」の一言に、「細かく言うと違うんだけど」というメッセージを受け取った。というのも、アストン・ビラ戦の上田は、中盤でパスを受ける前にターンして相手を置き去りにしたり、中盤に引いてからスルーパスを通したりしていたからだ。
そのことをヒントにユトレヒト戦の上田を見ると、ユトレヒトのDFとMFのライン間にポジションを取って、安定したポストプレーを披露していた。また、彼がもともと得意としている相手の背後を突くフリーランニングでも、ちょっと引いた位置からスプリントを開始している。タルガリネのスルーパスを受けて、先制ゴールを決めたシーンもそう。ユトレヒトの選手が付きづらい曖昧なゾーンにポジションを取ってから、上田はトップスピードに乗って味方からのパスを引き出した。
わずか2か月前、「僕はビルドアップに参加して、降りて組み立てるタイプでもない」ということで、自分が作ったスペースを味方のために供給していた上田は、そのスペースに降りて活用する頻度を増やしていた。
フェイエノールトの前エース、サンティアゴ・ヒメネス(現ミラン)に対し、アルネ・スロット監督(当時。現リバプール)は「ヒメネスはもうちょっとビルドアップなどチームプレーの改善が必要。今はゴールを決めているからいいが、ストライカーは決まらない時期があるもの。特にフェイエノールトから次のステップに進んだとき、ゴール以外での貢献が大事になってくる」と懸念していた。
一方、上田のプレーを観察していると、スロット前監督やファン・ペルシ監督からのオーダーを一つひとつ取り組んで、自分のモノにしているのが伝わってくる。エクセルシオール戦からユトレヒト戦までの2か月間で、明らかにプレーゾーンが広がったのは、その表われのひとつだ。ノーゴールの日があっても、今の上田なら信頼を失なわないだろう。
