TikTok Shop売上1000%増 中国発「 ラブブ 」が生んだ熱狂のメカニズム

記事のポイント
ポップマートはラブブのバイラル人気を背景に、TikTok Shop売上を前年同月比1000%増まで拡大した。
わずか1300人のクリエイターと85%をライブ配信経由で売る異例の戦略が功を奏した。
K-POPやブラインドボックス文化など複数のサブカル要素が融合し、ラブブ現象を生んだ。
ポップマートはラブブのバイラル人気を背景に、TikTok Shop売上を前年同月比1000%増まで拡大した。
わずか1300人のクリエイターと85%をライブ配信経由で売る異例の戦略が功を奏した。
K-POPやブラインドボックス文化など複数のサブカル要素が融合し、ラブブ現象を生んだ。
今年、米国のTikTok Shop(ティックトックショップ)でもっとも注目すべき成功事例のひとつとなったのが、Pop Mart(ポップマート)である。その背景には、同社のコレクティブルフィギュア「Labubu(ラブブ)」をめぐるバイラルな熱狂がある。
少数のクリエイターとライブ配信に賭ける独自戦略
このような急成長の原動力となっているのが、「ラブブ」に対する消費者の有機的な熱狂だ。大きな目と尖った歯を特徴とするこのコレクティブルフィギュアは、いまやインターネット上のセンセーションとなっている。
ポップマートの成功が際立っている理由のひとつは、ほかの有力TikTok販売ブランドの多くが大規模なインフルエンサーネットワークに依存している一方で、ポップマートは比較的少人数のクリエイターと連携し、ライブ配信に大きく依存している点にある。この戦略により、ラブブの再入荷時に即完売するような熱狂的需要を直接取り込むことに成功している。
チャーム・アイオーによる分析では、TikTok Shopで成功を収めているブランドの多くは、少なくとも5000人以上のクリエイターと協業している。たとえば、プラットフォームで人気を誇るタルトコスメティクス(Tarte Cosmetics)は、2025年の年初からすでに約2万人のクリエイターとネットワークを構築しているという。それに対してポップマートが今年に入ってから協業したクリエイターはわずか1300人に過ぎない。
「これほど少人数のクリエイターベースで、あれほどの売上を出しているのは、非常に異例である」とチャーム・アイオーのCEO、アレックス・ニセンゾン氏は語った。「正直、クレイジーだと言っていい」。
売上の85%がライブ配信経由 「指名買い」がブランド成長を支える
さらに注目すべきは、ポップマートが売上の大部分を自身のライブ配信によって稼いでいる点である。2025年6月には、同社のTikTok Shop売上の約85%がライブ配信経由であり、従来型の動画コンテンツ(録画済み投稿)による売上はごく一部に留まった。多くの有力ブランドが録画動画を主軸とするなか、ポップマートのライブ配信主導のアプローチは明らかに異質であり、少人数のクリエイターによる運用ながらも高い成果を挙げている点が際立つ。
ポップマートはTikTok Shopの公式チャンネルで、数時間にわたるライブ配信を定期的に実施しており、ラブブの販売があるかどうかに関係なく、毎回数千人の視聴者を惹きつけている。なお、本記事の締切時点で、同社からのコメントは得られていない。
「このことが示すのは、ほかのブランドのように視聴者にリーチするための工夫をするのではなく、消費者側から積極的に商品を探しに来ている、という点である」とニセンゾン氏は述べた。「インプレッションを稼ぐ必要すらないのだ」。
TikTok Shopに逆風のなかでも独自に拡大 グローバル展開にも注目
ラブブの成功によって、ポップマートはTikTok上で際立つ存在となっている。これは、TikTok自体のeコマース事業が舞台裏で苦戦している状況とは対照的である。2025年に入ってからTikTokは複数回にわたるレイオフを実施し、米国における規制不確実性にも直面している。親会社であるバイトダンス(ByteDance)は、アプリの売却か、もしくは米国での禁止措置という重大な判断を迫られており、その期限は9月中旬に設定されている。
こうした逆風のなかでも、TikTok Shopは依然として同社のグローバルビジネスにおける成長分野であり、最近ではメキシコやブラジルといった国際市場への展開も加速している。これは、米国での禁止リスクを回避するための布石とみられている。
マーケットプレイスでも加熱する「ラブブ」人気
ラブブの人気はTikTokだけにとどまらない。TikTok上では開封動画が数百万再生を超え、ライブ配信では最新フィギュアをめぐる争奪戦が繰り広げられている。Modern Retailが以前報じたように、ラブブ人気はWhatnot(ワットノット)やStockX(ストックエックス)といったサードパーティマーケットプレイスにも波及している。
eBay(イーベイ)によると、2025年5月には「コレクティブル」カテゴリで「Labubu」が1時間あたり450回以上検索されており、初めて同カテゴリの検索トップ10にランクインした。そこには、ポケモン(Pokémon)、レゴ(LEGO)、PSA 10、ホットウィール(Hot Wheels)、バービー(Barbie)、モンスターハイ(Monster High)といった名だたるブランドと並んで、ラブブの名前が入っている。また、「Labubu blind box(ラブブ ブラインドボックス)」の検索件数は、4月から5月にかけて260%以上急増したという。
ラブブはAmazon(アマゾン)に正式出品すらされていないが、同社の巨大なECサイト上でも存在感を示している。データ分析企業ジャングルスカウト(Jungle Scout)によると、ラブブをテーマにしたアパレル、ぬいぐるみ、ステッカーなどの収益は、この12カ月間で1930%増加し、36万1000ドル(約5780万円)から734万ドル(約11億7400万円)に急伸した。売上の98%は、第三者セラーによる「ラブブ風商品」によって占められていた。
サブカルの接点が生んだ「奇跡の穴」
「ここまでの現象が起きたのは、いくつものサブカルチャーが絶妙な形で重なったからだ」と、デジタルマーケティングとZ世代コンサルタントであるノア・マリン氏は語る。その要因として、K-POPファンダム(ラブブはBLACKPINK(ブラックピンク)メンバーのリサに支持されている)、キダルト(大人向け子供趣味)向けコレクティブルのトレンド、そして「開けてみるまで中身が分からない」ブラインドボックス文化を挙げた。「スイスチーズの穴が、いくつも重なってひとつの通路になったようなものだ」とマリン氏は表現している。
ラブブ現象が今後も続くのか、それとも一過性のブームで終わるのか。チャーム・アイオーのニセンゾン氏によれば、インターネットで話題のこの人形が失速する気配はまったくないという。実際、ポップマートのTikTok Shop売上は過去10カ月連続で拡大を続けている。
「むしろ、今後さらに成長していくと考えている。見たところ、関心はますます高まっているように感じる」とニセンゾン氏は述べた。
ジュリア・ワルドー氏が本記事に寄稿した。
[原文:Pop Mart’s Labubu craze supercharges TikTok Shop sales]
Allison Smith, Julia Waldow(翻訳・編集:戸田美子)
