“ヒルコ”の存在が鍵に? 『全領域異常解決室』と『サマータイムレンダ』に共通する魅力
影、ヒルコ、ミステリー……と聞いてTVアニメ『サマータイムレンダ』を思い浮かべた人にこそ観てほしいドラマがある。『全領域異常解決室』(フジテレビ系)だ。
参考:『サマータイムレンダ』は繰り返し観たくなる SF設定が活かされたアニメ表現に注目
『全領域異常解決室』は、身近な現代事件と最先端の科学捜査では解明できない不可解な異常事件に挑む、1話完結型のミステリードラマである。「全領域異常解決室」という特殊な捜査機関が、文字通り“あらゆる領域”に及ぶ謎に立ち向かう。「神隠し」「シャドーマン」「キツネツキ」といった現代科学の常識では説明のつかない“超常現象”の数々の中でも、特に注目を集めているのが、ヒルコの存在だ。これこそが、本作を観た多くの視聴者が『サマータイムレンダ』を連想する所以となっている。
ヒルコとは、「国生み・神生み」や「黄泉国」の神話でよく知られる「伊邪那岐神(イザナギ)」と「伊邪那美神(イザナミ)」の子として登場する存在だ。日本神話では、イザナギとイザナミは国土を作るため、天上世界・高天原から降り立つ。イザナギとイザナミはオノゴロ島を拠点に、夫婦の契りを結び、日本列島とともに数多くの神々を生み出していった。
その神々の中で、最初に誕生したのが「ヒルコ」である。しかし、生まれながらにして体が不自由だったヒルコは、葦で編んだ小舟に乗せられ、オノゴロ島から海原へと流されてしまう。それ以来、日本神話の中でヒルコの名が語られることは二度となかった。神としての物語は、その誕生と同時に幕を閉じたのである。
この謎めいた存在・ヒルコが現代世界に影を落としているという設定は、『全領域異常解決室』と『サマータイムレンダ』の両作品を貫く重要な軸となっている。実際に両作品を視聴した筆者の感想として、展開こそ大きく異なるものの、不可思議な現象の数々や謎を紐解いていく楽しさなど、共通する魅力に満ちていることは間違いない。
『サマータイムレンダ』の真髄は、人を模倣し捕食する得体の知れない存在「影」との戦いを通じて描かれる、先が気になってしまう展開と不気味な緊迫感の絶妙なバランスにある。1話30分というアニメーションならではの手軽さを持ちながら、重厚なストーリーを紡ぎ出すその魅力に魅せられ、“イッキ観”をした視聴者も多いのではないか。
そして、この「続きが気になって仕方ない」という強い推進力は、『全領域異常解決室』にも確かに見受けられる。『サマータイムレンダ』のファンなら、きっとこの作品にも夢中になれるはず。その理由は、ドラマの入り口からも明らかだ。
『全領域異常解決室』の主人公は、警視庁音楽隊カラーガード出身という異色の経歴を持つ刑事・雨野小夢(広瀬アリス)。彼女は「全領域異常解決室」(通称:全決)への出向を命じられ、そこで室長代理の興玉雅(藤原竜也)と局長の宇喜之(小日向文世)と出会う。「全決になれるのは素質のあるものだけ」。いい意味でアニメっぽさのあるこの謎めいたセリフは、これから繰り広げられる物語への期待を否が応にも掻き立てる。
しかし、本作の真価が発揮されるのは、現代に「神」が降臨している事実が明らかになってからだ。一見すると怪異絡みの事件(あるいはそう見せかけた人為的な事件)を解決していく推理ドラマかと思いきや、物語は神と神の抗争という壮大なスケールへと展開していく。
その展開を象徴するのが、第5話で明かされる衝撃的な事実だ。予知能力を持つ小学生・生嶋未琴(諸林めい)が「市寸島比売命(イチキシマヒメ)」という神の化身だったという真相とあわせて、ここで明らかになるのは「全決」の本当の役割だ。それは、人知を超えた能力を持つ神々が引き起こす不可思議な事件を、密かに解決に導くことだったのである。そして今、「全決」は謎の神「ヒルコ」との静かなる戦争状態にあるという。
さらに第6話の予告で興玉が「僕も神です」と告白したそのひと言は、SNSを騒然とさせ、視聴者の期待を一気に最高潮へと押し上げた。神の登場により、『サマータイムレンダ』だけでなく『DEATH NOTE』の雰囲気も醸し出し始めた本作だが、日本神話や蛭子伝説が好きな人にとっては、この冬のたまらない楽しみになっていることだろう。(文=すなくじら)
