Amazonをはじめとする多くの通販サイトでは、注文したはずの商品が届かなかったり商品に不備があったりした場合、問い合わせると返金してもらえる仕組みがあります。この仕組みを悪用して大金を稼ぎ出す大規模な「返金詐欺グループ」の実態について、テクノロジー系メディアの404 Mediaが報じています。

How a 'Refund Fraud' Gang Stole $700,000 From Amazon

https://www.404media.co/artemis-refund-group-stole-700-000-from-amazon/



さまざまな裁判記録について報じる独立系メディアのCourt Watchと404 Mediaが共同調査した起訴状によると、アメリカ政府は「Artemis Refund Group(ARG)」と呼ばれる大規模な返金詐欺グループのメンバーを起訴したとのこと。

返金詐欺とは、誰かがAmazonやウォルマートなどの通販サイトで高額な商品を注文し、商品到着後にさまざまなトリックを悪用して小売業者から返金してもらい、実質的にタダで手に入れた商品を転売して利益を得るという詐欺です。ARGはこの返金詐欺をビジネス化して、商品を注文・転売する役割の共犯者をTelegramチャネルなどで募集していたそうです。

ARGが行った詐欺の仕組みはシンプルで、まずは共犯者のアカウントで高額商品を注文し、商品が到着したら通販サイトに「商品が届いていない」あるいは「商品に欠陥があった」と伝えて返金してもらいます。その後、共犯者は入手した商品を転売して利益を得る一方、ARGは商品購入価格の15〜20%を手数料として共犯者から徴収していました。



海外掲示板のRedditやDiscord、Telegramチャネル、ハッキングフォーラムなどでは、返金詐欺について公然と議論されています。返金詐欺が機能するのは、小売業者の「優れた顧客サービスを提供したい」という意図と、実際に配達中に荷物が破損したり、誤配が発生したり、置き配後に盗まれたりするケースがあるという事実が背景にあります。

Amazonのような大手の通販サイトにとって、配達された荷物の盗難はユーザーエクスペリエンスを損なう大きな問題です。さらに、大手通販サイトはユーザーに対して返金したり2個目の商品を発送したりすることをいとわないため、個々の案件をそれほど精査せずに返金することが多いとのこと。

違法なライフハックについて議論するRedditの「illegallifeprotips2」というサブレディットでは、実際に小売業者ごとに異なる返金詐欺の戦略があると説明されています。これによると、「Amazonでは荷物が配達済みになってから1日待ってから連絡するべき」と記されており、配達した荷物が盗まれたという主張がうそであっても、必要があれば警察と共に虚偽の報告書を作成してもOKだとのこと。Redditユーザーは虚偽の盗難事件をでっち上げても大丈夫な理由について、「なぜなら、警察はそのような問題を優先したり、捜査したりすることは決してないからです」と述べました。

また、返金に応じるかどうかの判断がカスタマーサービス担当者によって異なることもあるため、返金に応じてくれる担当者に当たるまで「担当者ガチャ」をする戦術も、場合によっては有効だそうです。



ARGが用いた返金詐欺の手法はさらに洗練されており、通販サイトが商品の返送を求めてきた際に空箱や別の商品送ったり、偽のトラッキングIDを生成して商品の送り先をごまかしたりすることもありました。実際に購入した商品が通販サイトに戻ってくるわけではありませんが、記録上は「配達済み」となっているため、多くの通販サイトは返金してくれるというわけです。

起訴状によると、ARGは2019年4月以降だけで数千回もの返金詐欺を実行しており、一部の商品はeBayやメルカリで販売されていたとのこと。Amazonは一連の詐欺によって70万ドル(約1億500万円)以上の損失を被っており、その他の通販サイトも総額数百万ドル(数億円)を失ったと見積もられています。

なお、ARGのTelegramチャネルは記事作成時点ではもはや存在していないとのことです。