この記事をまとめると

■ダイハツはかつてシャレードをベースにしたホットハッチを発表していた

■このシャレード デ・トマソ926Rは120馬力のエンジンをミッドシップに配置していた

■WRCのグループBが中止となったことで市販化されることはなかった

ダイハツの幻となったミッドシップスポーツ

 前輪駆動レイアウトの実用ハッチバック車であったルノー5(サンク)をベースとし、WRCに出場するためにターボで武装したエンジンをミッドシップにマウントするというとんでもない手法を繰り広げたルノー。のちに2代目ルーテシア(本国名:クリオ)でも同様の超絶マシンを作り上げたことでも知られている。

 そんな突飛な発想で周囲を驚かせたルノーだったが、日本でも同様のコンセプトのモデルが発売寸前を思わせる完成度で登場したことがあったのだ。それが1985年の第26回登場モーターショーに展示された「ダイハツ・シャレード デ・トマソ926R」である。

 シャレードは前年の1984年に、当時のターボ係数をかけても1.3リッター以下クラスに参戦できるように排気量を926ccに調整した前輪駆動のモータースポーツベース車「926ターボ」というモデルがリリースされていた。

 ちなみにルノー5にも5ターボが登場する前に前輪駆動のままチューニングを施した5アルピーヌ/アルピーヌターボが登場しているため、この前段階も共通するポイントとなっている。

 デ・トマソ926Rは、この76馬力を発生する926ターボのエンジンをベースにさらなるチューニングを実施して120馬力を発生させ、それをミッドシップに搭載して後輪を駆動させるものとなっていた。

 車名のとおりイタリアのデ・トマソが深く関与していると言われており、装着されるパーツもカンパニョーロの15インチマグホイールにピレリのタイヤ(フロント205、リヤ225サイズ)、アンサのデュアルマフラーにモモのステアリング、キャレロのフォグランプとビタローニのドアミラーと、イタリアンブランドで固められていた。

※画像はシャレード デ・トマソ用のオプション

 このモデルはモーターショーを賑わすだけのハリボテのコンセプトカーではなく、実際に走行が可能な仕上がりとなっており、テスト走行ではラリー用にクロスしたトランスミッションを搭載していながら、200km/hのマキシマムスピードを記録したほか、当時のメディア向けに試乗会も実施されていたほどの完成度を誇っていた。

 しかし、残念ながらデ・トマソ926Rは市販化されることなく、活躍の舞台と目されていたWRCのグループBも1986年の不幸な事故が発生してしまったことによって廃止が決まった。

 その後、1993年に登場した4代目シャレードには再びデ・トマソの名前を冠するグレードが用意され、2018年と2019年のオートサロンにはデ・トマソをオマージュしたカスタマイズカーが展示されるなどしたが、結局ここまで尖ったモデルが市販されることはなかったのはつくづく残念である。