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クリーンでジェントルなポールスター2

「地球は丸いですが、その最果てをここから見られますよ」。案内役のスタッフが冗談で笑わせる。ある意味本当かもしれない。筆者が今いるのは、ロンドンより遥か北のシェトランド諸島の端。北極圏までもさほど遠くはない。

【画像】上品なEVホットハッチ ポールスター2 PHEVのポールスター1 兄弟モデルのボルボも 全106枚

今から24時間前、フォトグラファーのマックス・エドレストンとグレートブリテン島の北東部に位置する、エディンバラで落ち合った。北を目指しドライブするために。


ポールスター2(英国仕様)

今回選んだクルマは、バッテリーEV(BEV)のポールスター2。英語で北極星を意味する単語をブランド名とする、ボルボと親戚関係にある自動車メーカーのクロスオーバーだ。北極星は航海の時の指標にもなる、北の天極へ近い恒星なことはご存知だろう。

グレードは1番ベーシックなもの。最高出力231psの駆動用モーターをフロントに1基搭載し、前輪を駆動する。航続距離は最長477kmがうたわれる。最高速度は160kmに制限されているが、実用モデルとしてまったく不足はない。

少し運転して、回生ブレーキの効きの強さとステアリングホイールの重み付けは、中間の設定が筆者の好みだと確認した。停まった状態でブレーキペダルを放すと、一般的なAT車のようにゆっくりクリープ走行もする。

エディンバラの北、フォース湾に掛かる壮観なクイーンズフェリー・クロッシング橋を越えると、ポールスター2の馴染みやすさが伝わってくる。高速道路を、しずしずとマナー良く進んでいく。クリーンでジェントルだ。

中世風の町並みと鮮明なコントラスト

このままグレートブリテン島の最北、ダン岬を目指してもいいが、今回の計画はもっとシリアス。港町のアバディーンから、先出のシェトランド諸島を目指す。ポールスター2で北極星へ接近するべく。

その前に最寄りのポルシェ・センターへ立ち寄り、一般に開放されているDC充電器へつなぐ。シェトランド諸島では、確実に充電できる保証はない。ノースリンク・フェリー乗り場へは、駆動用バッテリーの充電量が99%の状態で到着できた。


ポールスター2で巡ったシェトランド諸島の自動車旅の様子

巨大なゲートが開き、全長125mのMVフロシー丸へ乗船する。観光だけでなく、産業面でも需要な役割を持つ航路を結ぶ船で、600名の乗客と140台の車両を運搬できる。

ポールスター2は下のデッキに誘導された。客室は小さいもののツインルーム。夕食の合間にも、船は北海の北上を止めることはない。見知らぬ客同士でも、同じ目的地を目指す仲間という気持ちが湧いてくる。

デッキへ出ると、木星が南東で輝いていた。スマホのアプリで、星の位置を確認する。北極星の方向は雲で見えない。

北海はありがたいことに穏やかだったが、波による揺れは夜通し感じた。翌朝、シェトランド諸島で唯一の街と呼べる、人口7000人ほどのラーウィックに到着。午前8時、ポールスター2は古い市街地の間を静かに進む。

海へ背を向けた石造りの建物が、肩を寄せ合うように並んでいる。中世のようなランドスケープと、洗練されたスタイリングのポールスター2は対照的。鮮明なコントラストを生んでいる。

すこぶる上品なホットハッチのよう

諸島最大のメインランド島から、2番目に大きなイェル島へ向けて走る。島を貫く国道、A970号線が大地を左右に分ける。地面は低木と草に覆われ、背の高い樹木はまったく見えない。

諸島は古くから化石燃料が豊富だった。かつては泥炭が採れていたが、現在は北海や大西洋に点在する油田から原油とガスがパイプラインで送られている。北部のスロムヴォーにはコンビナートがあり、石油発電所も稼働している。


ポールスター2(英国仕様)

再生可能エネルギーへのシフトも進行中。103基の風力発電用風車が建設中で、すべて完成すれば50万世帯の電力をまかなえるという。グレートブリテン島へ、海底の高圧ケーブルで電気が送られる予定だ。

建設現場の横を走るポールスターは至って順調。インフォテインメント・システムのグーグルマップは、駆動用バッテリーの残量にも連動している。イェル島のフェリー港にある充電器を目的地に設定し、スピードを上げる。

今回のクルマは231psの穏やかな仕様とはいえ、車重が1940kgあっても活発に走る。0-100km/h加速を7.0秒でこなすが、体感はそれ以上に速い。シフトチェンジを介さないことも理由だろう。

すこぶる上品なホットハッチのようでもある。海岸線へ沿うような鋭いカーブでは、ボディロールも最小限。ステアリングホイールへは殆ど感触が伝わってこないものの、反応は正確でタイトだ。

酷く濡れた路面でなければ、タイヤを空転させることなく確実にパワーが展開される。トルクステアもほぼ生じず、前輪駆動のネガは感取されない。

映画のように壮大な景観へ感覚を集中させる

メインランド島の北部にある、トフトのフェリー乗り場へ到着。途中、スロムヴォーの製油所からオレンジ色の炎が立ち上がる様子が見えた。

再び乗船。イェル海峡は20分で渡りきれる。2艘のフェリーが、終日往復しているという。デッキに出て、無数の小島と、ブルーとホワイト、グレーとイエローが複雑に重なる空を眺める。この地域ならではの色彩だろう。


ポールスター2(英国仕様)

イェル島はメインランド島以上に静か。野生動物の楽園といえそうだ。すれ違うクルマは殆どなく、2頭の羊が道路の真ん中で佇んでいる。路面はとても滑らかで緩やか。自然とスピードも出る。

ハイパワーな内燃エンジンが欲しいとは感じない。BEVの平和な質感と、ドライバーへの要求が少ないポールスターの雰囲気が、映画のように壮大な景観へ感覚を集中させる。運転への意識が薄まっていく。

島を北上し、ブルーマル湾に面した場所は行き止まりだった。無骨なシフターをスライドさせ、方向転換のためにバックする。ポールスター2の後方視界は限定的。オプションの360度カメラが死角を補う。

少し南へ戻ったカリボーの町には、2021年に設置された無料の充電器が商用桟橋のたもとにある。ここの電気は、潮の満ち引きで発電されている。800m沖に4基の潮力タービンが沈められている。

カリボー周辺に電力を供給するだけでなく、BEVの充電も可能な余力がある。その事実を知ると、地球のエネルギーをわけてもらったようで感慨深い。

この続きは後編にて。