「これって港区では常識?」29歳女が、タワマンのパーティーで目撃した驚きの光景とは
空前のゴルフブームが到来している今、ゴルフは男女の出会いの場としても有効だ。
30歳を目前に、いい出会いがなく焦りを感じていた森脇那月(29)も、ゴルフを始めたが…。
東京のゴルフコミュニティーに、ヒエラルキーが存在することを知る。
同じ思惑を抱く女性たちが集うこのコミュニティーで、那月は最後まで勝ち抜き、理想の男性を捕まえることはできるのか―。
◆これまでのあらすじ
▶前回:“女だらけのゴルフコンペ”は、実は出会いの場。主催者も参加者にもある思惑があって…

Vol.5 新たな出会いは、タワマンパーティーで
― うわぁ、ゴージャスなタワマン。芸能人とかも住んでそう!
金曜日19時50分、私は、青山一丁目の高級マンションの前にいた。
先日のゴルフで知り合った“自称モデル女子”からの誘いを受け、ここで開かれるパーティーに参加することになったのだ。
今日の主催者は、ゴルフ好きで有名なIT系企業の社長。
私は、面識はないが、ネットの記事とかで見たことはある。
ゴルフで繋がった友人たちを呼んで食事をする会らしい。女性の参加費は、もちろん無料だ。
約束の10分ほど前に到着すると、すでに参加者と思しき5人のほど女性たちがスマホをチェックしながら、待っている。
『今、着きました!』
事前に連絡先を交換している“今日の取りまとめ”をしている男性に連絡を入れる。
『みなさんまとめて案内するので、少し待っててください』
彼に、事前に参加希望の連絡をしたところ、参加者情報を事前に把握するため、顔写真と年齢を送ってほしいという返事がきた。
まるで事前オーディションのようで、あまりいい気はしなかった。
でも、素性のわからない人たちが多く集まるパーティーなのだから仕方ないと諦め、私は、お気に入りの1枚を添えて返信をした。
20時過ぎに男性が降りてきて、同時刻に集まった女性たちと共に、案内されるがまま、ぞろぞろと部屋まで移動する。
― なんかこの光景、集団面接でも受けに行くみたいだわ…。
案内されたパーティールームに入ると、すでにかなりの人数が到着しているようで、何十足もの靴が玄関に並び、奥から賑やかな声が聞こえてくる。

奥に入ると、正面は東京の夜景が一望できる、一面ガラス張りのリビングになっている。
広いキッチンには、出張シェフと思われる男性が、豪華な料理を準備しているようだ。
食事のいい香りと、眺めのいいムーディーな雰囲気に、気分が高まっていく。
「那月ちゃん!こっち〜!」
すでに到着していたようで、今日誘ってくれた子が、大きな手振りとともに、私に呼びかける。
大きな声で呼びかけられ、一瞬注目を集めたことに恥ずかしさはあったが、知らない人ばかりでどうしていいかわからなかったので、この時ばかりは彼女の存在に感謝した。
部屋まで案内してくれた男性が“どうぞ”と差し出してくれたワイングラスを手に、『コルビュジエ』のソファにもたれかかる彼女の隣に、そっと座る。
「那月ちゃん、来てくれて嬉しいよ〜」
「誘ってくれてありがとう。今日は、誰か知り合いがいるの?」
「うん、何人か!」
彼女が、こっそり指を差しながら、いつ出会っただの、どんな企業の人だの、それぞれのスペックを教えてくれる。
男性は、アラフォー世代の経営者や医者が多い。
「ハイスペの男性に気に入られて、色んなところ連れて行ってもらったりと、いい思いをするもよし!女の子の友達を作って、ネットワークを広げるのもよし!満喫しよ」
彼女が耳元で囁く。
部屋を改めて見渡すと、すでに知り合い同士まとまっていたり、部屋の端々で男女がペアになって話している姿が目に入る。
すると、さきほど家主と紹介されたプラダのスポーティーなジャケットを着た男性が、立ち上がって挨拶を始めた。
「みんな来てくれてありがとう。今日は楽しんでいってください!」
少し大きな声を出して、乾杯を促す。
彼の挨拶を合図に拍手が起き、出張シェフが、雲丹が乗せられたステーキなど贅沢な食事をテーブルに運んできた。

モデル女子が、私に耳打ちする。
「あの家主の彼、右隣にいる子のパパなの。
彼女よりいい子がいないか、こういう場で探してるみたいなんだけど…。揉め事になりかねないから、本気じゃないなら、変に彼に手出ししないほうがいいよ」
彼女は、そう呟くと、知り合いを見つけて席を離れた。
彼は既婚で、この家はこうやってパーティーをしたり、彼女と過ごすための場所として借りているらしい。お金があるからできる遊びだ。
― 今日も、この間のゴルフみたいに、私とは世界が違う人たちばっかりだな…。
先ほどのモデル女子の話が耳に残り、私は、積極的に誰かに声を掛ける気分になれなかった。
せっかくなのでと少し食事をお皿に盛って、ワイングラスを手に、窓際の席にひとりで座る。
部屋のムーディーなライティングが、ひとりであることを余計に惨めに感じさせる。
― ゴルフを通して、あわよくば婚活もと思っていたけど、うまくいかないな…。
大輝さんとの距離は一向に近づかない。
今日だって……。
素敵な出会いがあるのではないかなんて淡い期待を抱いて来たけど、思い描いてた出会いはなさそうだ。
「…隣、いいかな?」
ぼんやりと外の景色を眺めながら食事をしていると、後ろから声を掛けられた。
最初に部屋に案内してくれた男性だった。
「どうぞ?」
広めのスペースをひとりで占領していたことに気づき、少し端に寄ると、彼は隣に座った。
「…楽しくない?」
「いえ…!こういう場に慣れていなくって…。すみません」
「僕も同じ。こういうところ、得意じゃないんだよね」
そう苦笑いして、乾杯、とワイングラスをこちらに向けられる。同じ気持ちの人がいたのかと、少しほっとした。

彼は、前川サトル君。私よりひとつ下の28歳。
今日は会社の上司が参加するということで、手伝い要員として参加させられたのだという。
「那月さんは、今日は誰つながりで参加したの?」
「ゴルフで知り合った女の子に誘ってもらって、共通の趣味の人といい出会いあるかな、なんて来てみたんだけど、正直思っていた雰囲気と違って…」
「出会いの場といっても、ちょっと意味合いが違う感じだよね。女性側も、お付き合いする男性を探してるというよりは、パパ探しって感じだし。
僕は、こういう場だってわかっていたから、来るのは気が重かったんだけど、同じ気持ちの人がいてちょっと安心した」
何をしていいかわからず持て余していたところに、同じく場に馴染めていない雰囲気の私を見つけて、声を掛けてくれたらしい。
「サトル君は、ゴルフするの?」
「上司の影響で、結構行くよ。ゴルフ友達も最近増えたし、行く機会はより増えたかな」
彼と話していると、大輝さんと出会った日の感覚を思い出す。
サトル君とは、ギラギラと欲望がぶつかり合う空間の隅に追いやられたもの同士だが、決して惨めではなく、楽しかった。
「今日は本当に、那月さんがいてよかった!ひとりじゃつまんなかったよ」
「私もサトル君がいなかったら、惨めな思いをしていたかも!」
結局意気投合したのは、今日無理やり連れてこられたサトル君だなんて、自分でも笑える。
でも、彼に対して、いいなという感情が芽生えていた。
「今度一緒にゴルフ行きません?友達も呼んで!」
少し恥ずかしそうに誘ってくれる彼に、心が動かされる感覚が確かにあった。
「ぜひ!」
まずは連絡先を交換しましょうと、サトル君がスマホを取り出す。
私も、鞄にしまい込んでいたスマホを取り出すと、一件の通知がきている。
『大輝:この間はごめん。ご飯でもどうかな?』
先日の食事からしばらく連絡を避けていた大輝さんからの連絡だった。

― こんな時に限って、ずるい…。
私は、大輝さんからの通知を閉じた。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない。サトル君、交換して終わりは嫌だよ?ちゃんと誘ってね」
「絶対に誘います!今日こんな出会いがあるなんて想像してなかったのに…那月さんに出会えて嬉しいです」
サトル君の淡い好意を感じながら、心をくすぶり続ける大輝さんの顔を胸の奥にしまい込んだ。
▶前回:“女だらけのゴルフコンペ”は、実は出会いの場。主催者も参加者にもある思惑があって…
▶1話目はこちら:「イイ男がいない」と嘆く29歳女が見つけた、最高の出会いの場とは
▶Next:12月31日 土曜更新予定
「那月ちゃんに会いたい。」大輝からの連絡に、心が揺さぶられるのを止められず…?

