「ポリシーはないの?」ホンダとトヨタがガチンコの喧嘩…ついに社長まで!?記憶に新しいアノ車
大ヒットした初代ホンダ ストリーム!
ホンダ 初代ストリーム
2000年10月27日、ホンダから画期的なミニバンが登場しました。ミニバンの居住性と、セダンの運動性能を併せ持った7人乗りロールーフミニバン。それがホンダ ストリームです。
ホンダ ストリームは、全長4,550mmのサイズで7人乗りを実現し、全幅を1,695mmとして5ナンバーサイズに収められています。
最大の特徴は1,590mmまで低めた全高。それによって、ホンダらしいスポーティなイメージと運動性能とともに、過度にサスペンションを固める必要もないため乗り心地も良くできる利点が。
ホンダ ストリームは10ヵ月で累計販売台数が10万台を超える大ヒットを記録。初代ホンダ フィットや初代N-BOXは半年で10万台を達成しているものの、奇抜なコンセプトのミニバンで達成したこの数字は快挙といえるでしょう。しかし、そのストリームの栄華も長くは続きませんでした。
王者が送り出した刺客、トヨタ ウィッシュとは?
トヨタ 初代ウィッシュ
大ヒットしたストリームの登場から約2年後の2003年1月20日、トヨタは初代ウィッシュを発売しました。
ウィッシュの特徴は、全長4,550mmで7人乗り、全幅を1,695mmとして5ナンバーサイズに収め、全高1,590mmの低めのルーフとしたスポーティなミニバンです。以上からわかる通り、ウィッシュのパッケージングはホンダ ストリームとまったく同じです。
その時代ごとに需要傾向があるため、他メーカーから似たようなコンセプトの車が登場するのは珍しいことではなく、ライバル車として競合するのはよくあることです。しかし、このウィッシュはひとつ大きな問題がありました。
珍しい?メーカー間の応酬に発展
トヨタ ウィッシュの問題点とは、ホンダ ストリームと外形寸法がまったく同じといった点です。5ナンバーであるため全幅が同じになるのは仕方がないとしても、全長と全幅までミリ単位まで同じになるのは非常に珍しい事態といえるでしょう。
当然トヨタは、ライバル車種となるストリームの寸法も知っているはずですので、変えることもできたはずです。にもかかわらず、トヨタはまったく同じ寸法でウィッシュを登場させました。
これがきっかけとなり、ホンダ ストリーム対トヨタ ウィッシュの10年以上にも渡る熾烈なやり取りの応酬が勃発しました。
■ホンダ「ポリシーはあるか?」
トヨタ ウィッシュは発売初年度で15万台を超えるヒットとなり、当然ストリームの販売台数は低下。ついにはシェアを逆転されてしまいます。そのホンダは、初代ウィッシュの登場から約半年後の2003年9月26日に満を持してストリームがマイナーチェンジモデルを発売しました。
その際のCMキャッチコピーが「ポリシーはあるか」です。普通に受け取れば、「車に対してのこだわりはあるか」という購買層に投げかけるメッセージに聞こえるでしょう。しかし、見方を変えればトヨタに対する「自動車メーカーとしての誇りはないのか」というホンダからのメッセージにほかなりません。
■トヨタ「ストリームがモデルチェンジしても負けない」
ホンダがここまで露骨なキャッチコピーを打ったのには訳があります。コンセプトをそのままトヨタに真似されたうえ、初代ウィッシュ登場時にトヨタの開発主任は「ホンダ ストリームがモデルチェンジを行っても負けないように仕上げている」といった旨を発言。
これがホンダの逆鱗に触れたようです。売り言葉に買い言葉として「ポリシーはあるか」と大々的な宣戦布告をしたのかもしれません。
■ホンダ「今度は真似されない」
2006年7月13日、ホンダはストリームのフルモデルチェンジを実施。その際に、当時の福井威夫社長自らが「今度は真似されないぞ、という気持ちで2代目ストリームを登場させた」といった旨をインタビューに答えた事は当時大きく話題になりました。
2代目ストリームは、全高を1,545mmまで低めつつ、室内空間は初代よりも広くなって登場。2代目トヨタ ウィッシュは、その3年後の2009年4月2日に発売されましたが、さすがにウィッシュはそこまで全高を低めるような真似はしませんでした。
それぞれの車の末路
それぞれの2代目も、結局販売台数で勝ったのはトヨタ ウィッシュのほうでした。2代目ストリームの低いスタイリングを真似されなかっただけでもホンダの溜飲は幾分下がったかもしれません。その後はミニバン人気自体が下火になり、ストリームは2014年に、ウィッシュも2017年に生産終了となりました。
正式な後継車ではないものの同様のコンセプトを採用するホンダ ジェイドを2015年に発売しましたが2020年に生産終了。トヨタ ウィッシュには後継車は存在しませんが、強いて挙げるならトヨタ シエンタやプリウスαが該当するでしょう。
車両開発は後出しジャンケンが有利
後出しジャンケンで市場を食い荒らし、そのまま去っていく事は企業間の競争では珍しい事ではありません。
とはいえ、商品化できるパッケージングやコンセプトは限られるため、トヨタが露骨に真似をしているわけではなく最初にトヨタ側でも企画があり、市場動向を解析した後に開発にGOサインを出していると見るのが順当です。
それは、魅力的なコンセプトやパッケージに対するリスペクトとも受け取れるため、後出しされた側は誇るべき偉業を成したといえます。しかし、競走に敗れることは会社経営に関わる事項であるため、後出しジャンケンで負ける企業の気分が良くないのは確かでしょう。
それどころか、メーカーや車種によっては完膚なきまでに叩きのめされている過去があります。この切磋琢磨により技術が磨かれるとはいえ、同時に資本主義経済の怖いところでもあります。
