YouTubeであがり症を治せる? 「緊張する」のメカニズムと対策を考える

写真拡大

人前では緊張してしまい、うまく話すことができない。
そうした「あがり症」の悩みを持つ人は多い。

仕事の場でも、プレゼンや研修などで登壇する際、
頭が真っ白になって何も話せない、動悸が速くなり声がでないなどの経験をしたことはないだろうか。

筆者も学生時代に生徒会に立候補し、全校生徒の前で演説をするという機会があったが、何も話すことができず「よろしくお願いします」のひと言しか言えなかった。
このことは、今でも鮮明に覚えている。

自分が登壇する側でなくとも、音楽やお笑いライブ、オーディションなどのステージで極度の緊張から普通に話せない状態の人を見て、
・「緊張」が原因
・「仕方がない」
・「性格的なもの」
このように思い、解決方法はないと思っているかもしれない。

しかし、インターネットで調べてみると、
緊張するメカニズムや対策方法が、数多く紹介されているのだ。

情報化社会と言われて久しいが、ここ数年では動画投稿サイト「YouTube」で情報を発信する人が急増している。
多くの人が、テキストベースのネット検索だけでなく、動画による視覚的、聴覚的な情報収集を行っている。

今回は、そんなYouTubeにアップされている動画で、緊張のメカニズムや極度の緊張状態を緩和する対策などを紹介していこう。


■緊張の仕組みと対策
はじめに紹介するのは、「【脳科学】〜ノルアドレナリンの暴走〜緊張のメカニズムと対策」と題した動画だ。動画の概要欄を見てみると多数の文献を参考にしていることがわかる。


【脳科学】〜ノルアドレナリンの暴走〜緊張のメカニズムと対策


動画投稿者が脳科学に関する専門家がどうかは不明だが、お笑いコンビ「オリエンタルラジオ」の中田敦彦氏が運営するYouTubeチャンネル「中田敦彦YouTube大学」に代表されるように、専門書籍をわかりやすく解説するYouTube動画がたくさんあり、この「緊張のメカニズムと対策」も、その類の動画だ。

中盤までは緊張の元になる物質や自律神経に関する解説をしているが、専門用語なども多く少々難しい内容になっているため人によっては理解が追いつかなかったり、疲れてしまったりするかもしれない。

冒頭で簡単にまとめられているが、緊張の原因となるのは、
・ノルアドレナリンの過剰な働き
・それに伴う交感神経の過剰な興奮
とのことだ。

ノルアドレナリンは神経伝達物質であり、緊張だけでなく認知症やうつ病を解説したほかの動画でもよく見かけるため、脳に関する知識を深めるためには重要な物質であることがわかる。

そして、動画の7分25秒から解説している「緊張の対策」を簡単にまとめると以下のようになる。

1)ノルアドレナリンと相互に抑制している「セロトニン神経」を活性化させるためにリズム性運動をする。
歩行や咀嚼、歌をうたう、など。

2)緊張の原因ノルアドレナリン神経の活性化を抑えるために刺激に慣れる。
実際に外的刺激を受けること以外にも、具体的なイメージトレーニングをすることでノルアドレナリンの暴走を予防する。

3)交感神経を抑制するために副交感神経を活性化させる。
深呼吸をする、水を飲む、など。

4)脳と身体の状況を一致させる。
無理やりにでも笑顔にすることで、脳が表情にあわせ心理的に明るい気持ちになる。

つまり、緊張しやすい人は、
根拠なく緊張している訳ではなく、緊張するにはその原因があり、対策もあるということだ。

よく緊張状態になる人はこれらの対策を試してみて、効果があるものを探していくとよいだろう。


■緊張をほぐすためのテクニック
メンタルに関する造詣が深いといえばメンタリスト DaiGo氏だろう。もちろんDaiGo氏も自身のYouTubeチャンネルで緊張に関する動画を複数投稿している。その中のひとつに手軽にできる緊張対策の解説動画がある。


いざという時【2分でできる】緊張対策とは


DaiGo氏が動画の中で解説している緊張への対策は、
1)呼吸に集中する(腹式呼吸)
2)ボディスキャン(体のどの部分が緊張しているかを観察してリリースする)
3)センタリング(体の中心にネガティブな感情を溜めて身体から抜き出すイメージをする)
といったもの。ネガティブな感情を身体から排出するイメージをして、実際に緊張を緩和していくという手法だ。

緊張を緩和する方法を「技術(テクニック)」として身に着けてしまえば、緊張状態に悩まされることはなくなりそうだ。


■良い緊張と悪い緊張の違いと正体
先に触れた「中田敦彦YouTube大学」にも緊張に関する動画が投稿されている。実は今回紹介する動画は、中田敦彦氏の真骨頂ともいえる、参考書籍をわかりやすく解説する動画ではなく、自身の体験から導き出した「緊張の正体」について語っているものだ。


緊張せずに人前でプレゼンをするためのメンタルコントロール


お笑い芸人として数多くの舞台に立つだけでなく、タレントとして多くのTV番組にも出演した中田敦彦氏だからこそ語ることができる内容となっている。

この動画の中で中田敦彦氏は、緊張には「良い緊張」と「悪い緊張」の2つがあることを解説している。

・良い緊張
仕組み:しっかり準備をしたからミスをしたくないという緊張
状態:本番直前に緊張状態が高まるが、本番に入った瞬間に穏やかになる

・悪い緊張
仕組み:まったく準備をしていないからきっとヤバいよねという緊張(不安や焦り)
状態:本番まで緊張しないが、本番に入った瞬間に一気に緊張し、頭が真っ白・パニック状態になる

どちらの体験もしたことがある人なら共感できるのではないだろうか。
冒頭で筆者が学生時代に生徒会に立候補した際に全校生徒の前での演説で、何も話すことができず「よろしくお願いします」のひと言しか言えなかったのは、まさに準備不足によるものだ。

今思えば、演説はどういう環境でどういう空気感で、何をどのように話せばいいのか、そうしたイメージトレーニングもせず、原稿を作ることも練習することもせず、丸腰の状態で登壇していた。

その結果、目の前に広がる全校生徒がこちら側を見ているという環境に飲み込まれ、早くこの場から立ち去りたいという事しか考えられず、結果的に「よろしくお願いします」のひとことを発して、その場から逃げ去ってしまったのだ。

こうしたことに気付かせてくれるのも、色々な人の意見や考え方、導き出した最善の方法などに触れることが可能なYouTube動画ならではといえるだろう。


■「あがり症」は病気かもしれない
このように、YouTubeを活用して、緊張の原因や緊張状態を緩和する具体的な方法を見つけ出すことができる。

一方で、「あがり症」と検索すると「社交不安障害」という言葉を用い、精神科医が解説動画を投稿している。

一般的な緊張状態との境目は、普段の生活に支障をきたすかどうかという点だ。
常に人目を避けたり、過度な不安にかられたりするなどの症状があると「不安障害」と診断される場合があるというのだ。

病気として診断されれば、きちんと治療に取り組み、緩和できる可能性も高いため、過度な緊張状態に悩まされたり、人目を避ける行動を取り続けたりする人は、精神科や心療内科に訪れることを検討してもよいだろう。


このようにYouTubeの動画は、様々な情報を収集し、悩んでいる問題の解決に利用することもできる。
もちろん情報収集する際は、ひとつの動画だけで判断するのでなく、いくつかの動画を視聴し、比較し、原因と解決方法を見つけ出すことが大切だ。

いくつもの動画で、同じような内容や情報が得られる場合は、情報が同分野で一般的な情報であったり、確定された重要な情報であったりすることが多く、判断する材料にもなる。

こうした解説動画を参考にすることで、
「緊張する」現象の原因や仕組みについて理解し、対処方法を学べば、
緊張状態を緩和することができる可能性は十分にある。

そして、人前でも普段通りの実力が発揮できれば、
新たな自分の発見や成長にも繋がるだろう。

YouTube




執筆:S-MAX編集部 2106bpm