「日本最大のヤクザ組織は警察です」【ニコ生×BLOGOS第3回】 - BLOGOS編集部
※この記事は2011年11月11日にBLOGOSで公開されたものです
ニコニコ生放送とBLOGOSがタッグを組んでお送りしている、「ニコ生×BLOGOS」第3回は「ヤクザの実情」について考えました。10月1日、暴力団排除条例が東京・沖縄で施行され、全都道府県に条例が制定されまし。それに先駆けて、「暴力団と付き合いがあった」という理由から、芸能界の大御所が引退しています。暴力団排除条例によって、ヤクザはどうなるのか。そもそも指定暴力団とは何か、芸能界、角界は癒着を断ち切ることができるのか。父が京都のヤクザの組長で、裏社会に精通する作家の宮崎学氏と、暴力団に詳しく、自らも「オジキ」と呼ばれるジャーナリスト須田慎一郎が明らかにしました。【番組ディレクター:BLOGOS編集部 田野幸伸】
【出演】
司会:大谷広太(BLOGOS編集長)
アナウンサー:小口絵理子
コメンテイター:須田慎一郎(経済ジャーナリスト)
ゲスト:宮崎学(作家)
紳助とたけしの違いは
小口:紳助さんの逮捕以来、暴力団排除条例の話がずっと出ています。市民からすると背景含めわかりづらいことがあり、歴史的背景、どういった経緯で報道が加熱しているのかなどを論じていきたいと思います。暗黙の了解みたいな感じでしたが、なぜいまさらそんなに取り締まるのかというところも取り上げていきたいと思います。ご覧のみなさんからもご質問をお寄せ下さい。たとえば年金とか保険金とかどうなってるんでしょうね。
宮崎:ありません。
小口:そうですか。やっぱりないんですね。老後の蓄えは自分でということなんですね。
須田:(島田紳助とビートたけしの)2人の違いは、紳助さんの場合は外部から指摘されて認めた。たけしさんは指摘される前に自ら進んでそういう付き合いを認めたということです。だからまったく状況が違うんです。リスク管理でいうと僕はビートたけしさんの対応は100点とは言わないが、かなり高得点。おそらくいろいろな濃淡こそあれ、みんなそういう付き合いはあったはず。リスク対応をどうするかはみんな個人で考えるべき。
宮崎:一番得した人は誰で、一番損した人は誰かを見る必要があります。一番得した人は週刊誌やジャーナリスト。まだ特集をやっても売れる。彼らがこの問題で一番金を稼いだ人たち。それともう一つは、紳助さんにしろたけしさんにしろ、違法行為があったのか、なかったのかが一番問われるべきであって、たとえば人と人との付き合いとか、一杯飲みに行ったとか、誰と仲がいいとかはそれこそ自己責任の世界なんですね。だからそれは一般の人たちが評価すればいいのであって、たとえば紳助さんの場合、最終的にその職業まで奪ってしまうまでに叩いてしまうことは、違法行為があれば法律にもとづいてやればいいわけであって、そうじゃない部分をことさらやるのは週刊誌の部数稼ぎにみんな乗っかったということ。
メールのやり取りの情報は誰が流したのか。ここが一番の情報じゃないですかね。たしかその前にあった大阪府警が操作してた事件で出てきたものですね。とういうことは、どこかからリークされた。リークにはリークの目的がある。そのへんを見ていかないと下手に踊ってしまい、真実を見誤ってしまうことがある。紳助が悪いんだと言い切ってしまうと、全否定してしまうことになる。
全否定してしまうと、彼の芸人としての生きていく道を絶ってしまうことになる。週刊誌に果たしてその権限が社会的に与えられているのかということも考えましょう。だから売れてなんぼという世界でやられたことに過ぎないんじゃないか。誰が誰と付きあおうが勝手だよというのが私の考え。それでリスクがあったら自分でリスクは取りますという考えです。
須田:もう一つこれはなかなか指摘されないんで、ここであらためて指摘しておきたいんですけど、紳助さんが右翼から街宣をかけられました。テレビでの発言が原因で。それに困ってヤクザに対応を頼みました。ここは事実関係として間違いないと思うんです。その場合に考えなければいけないのは、なぜテレビ局にしろ、あるいはその時に所属していた吉本興業にしろ、紳助さんを守らないのか。あるいは警察もそうですよ。右翼が街宣かけていたことは警察も認識していたわけですから、なぜ個人にそのリスク管理を全部押し付けたのか。そこにそもそも間違いがあったのではないかと私は思う。そこは警察に依頼するとか、弁護士に依頼するとか、そもそもやっていれば、ああいう状況にはならなかったのかなと思いますけどね。
小口:紳助さんを差し出すことで、吉本興業としては手打ちにしたということですか。
須田:我々は関係ないよと。全部お前が自分でやったことだから自分で解決しなさいと突き放したわけですよ。それを今になってあれはお前が悪かったと言うのはお門違いなんじゃないかと。
小口:ニコ生×BLOGOS、今回のテーマは。
大谷:「芸能界、角界にはびこるヤクザの実情」です。冒頭で申し上げたとおり、紳助さんの件があり、先月1日より、東京都と沖縄県で暴力団排除条例が施行されました。すでに他の都道府県ではすでにありましたが、今回東京でも施行されたことで、メディアでもクローズアップされたというわけですね。
そもそも「ヤクザ」とは何か
小口:須田さん、なぜ暴力団排除条例がこのタイミングで施行されたのでしょう。
須田:この流れはずっとありました。最大地域である東京で10月1日から遅れて始まったことで、何かいま急に始まったように思われがちですが、すでに他の都道府県では順次施行されていたという背景がある。
もう1つ言えば、今回の暴力団排除条例の最大のポイントというのは、暴力団、あるいはヤクザ組織そのもの、あるいはヤクザ組員そのものを対象としているわけではなくて、その周辺にいるカタギの人たち、あるいは普通の一般市民が暴力団と付き合うことによって、何らかのペナルティを課せられることになりますよと。要するに、その対象が一般社会まで広がってきた。そこが最大のポイントだと思いますね。
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宮崎:警察庁、警視庁の定義する暴力団員は、警察が認定した暴力団に属している人たちということです、簡単にいうと。全国で7万人です。指定暴力団だけではないです。指定暴力団というのは22団体あります。22団体以外にもまだ小さな団体を含めるともっとたくさんあるし、ヤクザというのは大きく分けると2つの種類があります。博徒といわれる人たちとテキ屋といわれる人たちです。この総称がヤクザなんです。
小口:博徒というのは。
宮崎:博打を生業というしていた人たちから派生した人たち。いまは博打を生業として食べてはいけませんから、元々は博打を生業として生きていた人たちが様変わりして現在に至った。これがもともと博徒と呼ばれていた。
テキ屋というのは、露天商をやっている人たち。その総称をヤクザと言っているわけです。そのヤクザの中で特に大きな団体を暴力団対策法という法律の中で指定団体として指定して、これに全国22団体が入っています。これが全ヤクザの90%を超える比率で、指定暴力団と呼ばれているわけですね。
だから暴力団員というのは、「暴力団という組織に加わっていると警察が認定した人」ということになりますね。全国で総数約7万人と言われています。
小口:須田さんは何組なんでしたっけ。
須田:いや、私はそういう人じゃありませんから。もう少し補足すると、暴力団組員、構成員となると、私は組員、構成員であるという自認行為が必要なんです。だから渡辺二郎さんが山口組、あるいは極真連合の相談役とか顧問とかいう肩書きが出てくるのは、あの方が自認していないからです。
勝手に警察が相談役と名付けている。だから構成員となるには自ら認める自認という行為が必要になります。なぜそんなのわざわざ認めるのかというと、やっぱり矜持があるんですよ。ヤクザのプライドのようなものです。私は山口組の組員です、ということに対してある種の一定の誇りがありますから、自ら組員であることを認めるわけですね。
小口:任侠映画ってありますけど、暴力団やヤクザはどこから派生してきているのかって遡っていきましょうか。
大谷:博徒というと映画とかにあるサイコロを振るイメージで問題ないのでしょうか。
宮崎:ヤクザの派生起源についてはいろいろな学説があるんです。たぶん1500年代の中頃、戦国時代後期にいわゆる野武士というのが生まれる。野武士というのは今日は徳川、明日は豊臣という傭兵なんですね。これは主に農民層なんです。傭兵が集団を作って、武力を持って、戦争の手助けをするわけですね。
そのときに発生したという考えが1つあります。それが江戸時代にはいまの源流となるヤクザに発展していった。たとえば町火消しとか町奴とか言われるような人たちはいまのいわゆるヤクザの元となっているところですよね。
だから幡随院長兵衛とか清水の次郎長とかもヤクザですよ。「街道一の大親分」とかいう話があるくらいですから。こういう放送を見ている人はあまり興味がないかもしれないが、明治になって、明治政府のやり方に対していろいろな反発があったときに、秩父で秩父困民党事件という一揆が起きたんです。
この一揆はものすごい広い範囲で起きて、焼き討ちが起きて、無政府状態になるわけですけど、その一揆の中心にいたのがヤクザだと言われています。だから社会的な活動であれば、一揆がいいか悪いか別にして、ある面ではずっとヤクザと呼ばれる人たちも社会的活動をしていたし、彼らはある種乱暴ですから、いまふうの綺麗な言葉でいうボランティアのようなことはできなかったかもしれない。でも社会の中で必要な役割をそれぞれ果たしてきたと言えると思います。
だから元は戦国時代、江戸時代に確率して、明治維新以降、博徒が発生したと言えると思います。
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昔、ヤクザと芸能界は一体だった
大谷:さらに芸能や興行、今回テーマにしていますが相撲の世界にも関わりがあったということですね。
宮崎:もちろんそうですが、考え方を変えていただきたい。芸能界という社会があって、ヤクザ界という社会があって、ヤクザが利益追求のために芸能界に浸透しているんだという考え方は間違いです。芸能界とヤクザは元々同じ家にいた人たちと考えればいいんですね。
元を正せば同じなんです。江戸時代に歌舞伎者というのがいたでしょ。これはヤクザなのか侍なのか、芸人なのかわからないわけですよね。元を正せば、それで興行をして、お客さんを集めて、そこで観覧料をもらって、生きていくのは芸人ですよね。それを取り仕切るのがヤクザ、興行師だったわけです。だから元々同じところからスタートしていると考えなければいけないのであって、確立した社会があったわけではないんです。
渾然一体だった時代から来ていると見た方がいいです。あとは芸能界といわれる業界が生まれて、ヤクザ界とつながりがあるとかないとか言われてますけど。たとえば一番の好例は、山口組三代目の田岡一雄は美空ひばりと非常に親交があったから、美空ひばりは紅白を外されるということになるんですが、それに対抗して、紅白の日に紅白よりも豪華なメンバーを集めて山口組三代目は歌謡ショーをやるんですね。そちらの方がNHKの紅白よりもメンバー的にはすごいメンバーが出ていました。それくらい力があったわけです。芸能界におけるヤクザの力というのは元々あったわけです。排除されることになっていくのは逆にテレビができてからなんです。
テレビができて、コンプライアンス問題がうるさくなってから、ヤクザと芸能界の付き合いがやっちゃいけないみたいなことになって、付き合いがあるとされた芸能人はテレビに出られなくなり、自動的におまんまの食い上げになるというわけですね。
須田:視聴者の方も意外に思われるかもしれないが、かつて美空ひばりさんが結婚されるときに記者会見を開いたんんですけど、そのときに田岡一雄組長は同席をしてきちんとマスコミ対応をやったんですよ、当時は。
小口:そこに対してマスコミは特に違和感は
須田:違和感は何も感じてないよ。そういう時代がずーっと続いてきたんですから。
大谷:法律などができてきて、少しずつ意識が逆に出てきたということですか。
須田:法律ができる前に排除の論理ですよね。さっき宮崎さんが言われたように、どういう圧力がかかったかわかりませんが、要するにNHKの紅白歌合戦からそういった人たちを排除しようという動きが起こってきた。そうするとビジネスとしても成り立たないということで、そこは一線を画すという動きになってきた。
だからこれまでは非常にうまく芸能界、マスコミ含めてうまくやっていたわけですよ。あるいは相撲界もいまでこそなんで砂かぶりに弘道会がいるんだなんて問題になっているけども、そもそも砂かぶりを作ったのが、田岡組長なんですよ。いるのが当たり前なんですよ。
ヤクザと相撲界に共通する制度とは
宮崎:それよりももう少し考えなければいけないのが、ヤクザと相撲界というのは非常に体質が似ていることです。親方、子方、これは親分と子分という関係です。擬似家族関係が結ばれているんですよ。関係している部屋があるじゃないですか。そこは親戚部屋というわけです。ヤクザの親戚付き合いと同じです。
親分、子分関係と親方、子方関係はまったく同じものです。これは芸能界にもありましてね。師匠と弟子の関係ですよ。つまり、エンターテインメントだからもっと近代的な人間関係があそこに存在しているのかというと、そうではなくて、封建的な人間関係がベースにあって、それによって芸が磨かれる、あるいは相撲が強くなるというようなことになっていくわけなんですね。
その方が厳しいと思います。近代的な人間関係の方が楽かもしれない。それが須田さんが最初に言われた矜持の問題ともつながってくると思います。
元々「組」という言葉は、ヤクザが集団を作るときにつける名前ではなかった。これは「組む」という同士から来ているわけですよね。組むというのは協力するということです。たとえば協力して農作業をやらなければいけないときは組むわけです。
そういうことから、組という言葉は共同で物事を実行するということから発生しているわけです。だから建築関係の会社でいまでも上場会社で○○組というのがありますが、その名残なんですよね。
だから組というのはヤクザの仮称ではなくて、元々は「組む」という動詞から来ています。それからもわかるように、力のないものが寄り集まってある種の勢力を作るということを意味するんです。だからこれは同時にヤクザ的な形であれば、ヤクザ的な趣向のある人たちが組むというのは自然なことなんですね。
大谷:さきほど芸能の話がありましたが、我々一般市民からすると、かつては清水の次郎長もそうですし、歌舞伎の演目も侠客とかがヒーローでしたし、高倉健さんの仁義無き戦い、北野武さんの映画作品なんかでもいわゆるヤクザの方々は出てくるわけですよね。だからいつの時代もけっこう民衆の側からするとある意味でヒーロー的なところはあるのではないかという気はしているんですけど。
須田:もう一つの役割として、江戸時代に十手越というのがありましたよね。十手越というのはある意味でヤクザと裏腹の関係にあるのかな。元々ヤクザの存在自体がここ最近までずっと続いてきたんですけど、ある意味地域の顔役であって、トラブルシューター的な、何か問題があるとそこに行って解決してもらうという。そういう顔役のところに十手を持たせた。そして市民の安全なんかを守らせたというような歴史的経緯がある。
そういう日本の歴史的経緯を見ていくと、あまり裁判とか法的な解決とかを好まない人間性ってあるじゃないですか。弁護士を頼んで、裁判をやるよりは、ちょっと顔役のところに行ってなんとか収めてもらおうじゃないかという土壌がずっと続いてきたわけですよ。その中で一定の役割を果たしてきた人たちでもあったわけなんですよね。
小口:意外と私たちの生活にどっぷりと浸透しているような。
大谷:そうですね。その話でいうと、今日まさに秋祭りの時期で、お持ちいただいた新聞記事があります。
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祭りの出店、熊手はヤクザの営業活動
小口:「秋祭り、暴排(暴力団排除)手探り」という見出しの記事です。ちょうどおとりさんの時期ですね。みなさん、おとりさんの時、何を買いますか?もう須田さんなんかは毎年買っているという熊手ですよね。この熊手の屋台、テキ屋ももちろん暴力団で、それらの営業活動もいま妨げられているということですね。
須田:まあ暴力団というか、そういう人たちもいますよ。みんながみんなそうではないのですが、テキ屋系の人たちにとっては熊手を売るということも、これは関東一円なんですけど、関西には熊手というものはないんですけど、関東一円のテキ屋さんにとってはドル箱になっている組織もありますよということなんですね。
小口:
これは神社にせよ、お寺にせよ、そうやって販売をしてもらうことによってお互いに利益があったわけですよね。
宮崎:朝日新聞の夕刊の記事に、この中で書かれているのは、それぞれのお寺さんや神社の神主さんが非常に戸惑っていると。この暴排条例を受けて、屋台をどうしたらいいんだろうかとか。暴排条例によれば、屋台に利益供与してはいけないわけですから、屋台がヤクザだった場合には、罰せられるわけでしょ。罰せられなくても警告が発せられ、公表されて、最終的には50万円以下の罰金、一年以下の懲役になってしまうわけです。
じゃあお寺さんや神社の神主さんはいままでテキ屋に屋台を認めていたわけですよね。認めていたことが利益供与になるというようなことを言ってくると、完全に日本の祭りという文化が消し去られる状態になると僕は思います。
僕から言わせれば、お祭りというのは明るい側面と暗い側面が両方あるんですね。怪しげなところがね。それはテキ屋さんなんかは人相の悪い人たちがやっているみたいなところがあって、怪しげなんだけど、その対比が面白いということもまたあったんじゃなかろうかと思うんですね。
だから暴排条例が施行されて、テキ屋の問題がいろいろと出てくると思うんですが、まずいままでの有りようと、それからお祭りに行くのはテキ屋でもなく、暴力団でもない一般の人が行くわけですね。なおかつ神社の神主さん、お寺の住職さんは暴力団員ではない。この人たちにも今回の条例は網にかけられてしまう可能性がある。それはあまりにいかがなものかなと思います。
須田:9月末、一部実話誌系が報じたんですが、山口組から小車誠会という直径組織が除籍されましたというニュースが流れた。その背景に何があるのかというと、テキ屋の問題がありましてね。小車誠会は老舗のテキ屋なんですよ。伝統ある、格式ある。暴排条例に引っかかってこのままでいくと、自分たちの商売がまったくできなくなるだろうということで、除籍され、組が解散している。ただ、いままでやってきた人たちは相変わらずそういう商売をやるでしょ。やらないと生きていけないから。それを山口組系の組織がやるのはダメで、そうじゃなかったらいいんだっていうのは、すごく矛盾しているところだと僕は思います。
小口:秋祭り以外にもさまざまなことが私たちに影響を及ぼすんですね。
大谷:歴史的にも非常に身近なところにあって、たとえば男はつらいよの寅さんもそうですよね。
宮崎:そうです。テキ屋です。カテゴリからいえばね。
大谷:警察当局は法律をどんどん厳しくしていると。そこの意図と今後どうなるのかというところも聞いてみたいです。
暴排条例の施行は警察の天下り先つくり
宮崎:警察が立法措置をとって、あるいは法改正を行なって、今回のように各都道府県の条例を作らせるムーブメントをやった結果、来年の暴対法改正をやろうという流れになっている。結局、その歴史過程があるわけですよ。1922年に暴対法が施行されて、その時にどういうことが起こったが、その後も法改正が行われるたびにどういうことが起こったからということを、さっき申し上げた「誰が損をして、誰が得をしたか」という視点から見ていくべきだと思うんですね。
得をしたのは警察官僚ですよ。これが天下り先をたくさん手にしました。暴対法の施行により。たとえば1990年の暴対法施行のときに、警察官僚が手にした最も大きなものは、パチンコ景品交換の利権ですね。これは極めてグレーゾーンビジネスだったんですけど、それまではヤクザがやっていたことなんですよ。これを合法化して、そのかわりプリペイドカードに変えていく。そのプリペイドカードの運営会社の大半は警察官僚なんですね。
暴対法の前にあった商法改正は、たとえば総会屋というものを締め出す法律なんですけど、この商法改正で上場会社の総務に大量の警察官僚が天下りする。警察が関わる立法措置に関しては、その都度、警察の天下り利権との関わりが非常に深いものがある。国民の安心安全のためじゃなくて、自分たちの安心安全のためにやっているんですね。
国民の安心安全にはあまり興味ありません、日本の警察は。
須田:もう一つ、暴排条例によってどういう影響が出てくるかというと、いままで出てこなかったけど、密接者とか親密交際者とかいう烙印を押されますよね。実は暴排条例だけではそれほど厳しいペナルティはないんです。
たとえば銀行なんかはですね。この暴排条例と対にして、暴排条項というのを取引契約書の中に盛り込むんですよ。それを見ますとね、たとえば当座口座は強制解約しますよとか、融資に関しては期限の利益を喪失しますよと。一般の人には何言っているかわからないですよね。
当座預金を解約されると、手形を振り出すことができませんよ。期限の利益を喪失しますよとということは、貸したお金を一括して返してもらいますよ。これは企業にとっては死活問題だし、個人だって、あなたは密接交際者なんだから住宅ローン全額返せって言われたら、もうお手上げでしょ。場合によっては自己破産なんていうこともあり得ると思うんですよ。
これがどんどん適用されていたら、これはかなり大きな経済的ダメージを受けると思うんですね。このケースはどうでしょうか、このケースはどうでしょうかと一つ一つ警察にお伺いを立てなければならない状況というのが間違いなく出てくる。そうするとこれはこういうことですよ、うちにいい人がいるから専門家としてどうですかというやり取りが間違いなく起こってくると予想できます。それが先ほど宮崎さんが言っていたような天下り先とかにもつながってくるんじゃないかと思いますけどね。
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ということは官僚がしっかりしているということです。実は警察官は司法官僚なんですね。だから官僚なんです。その他の官僚とまったく同じなんですけど、警察官僚というのは特別な権限を与えられている。つまり人を逮捕するという権限を与えられているわけですよ。身柄を拘束して取り調べて、公判請求できるという特殊な権利を与えられている官僚なんですね。ところがかつての、これは須田さんの得意なところなんでしょうけど、経済的な政策を行なっていた旧大蔵省とか、旧通産省とかいうような経済官僚と違って、警察官は適当な天下り先がなかったんですよ。業務上の天下り先はそうなかった。
ところが1970年前後に大量の警察官を採用したわけですよ。70年安保に備えてということで。それが定年をどんどん迎えてきているわけですね。ところがその人たちの天下り先がない。ところが他の官僚は、経済官僚なんかは準備がいいから○○年には○○人くらいの定年退職者が出るだろうから、これくらいの天下り先を用意しようと、独法はこうしておこうというようなことをちゃんとコントロールできるわけです。だから警察官僚だけが適当な天下り先がない。だからかなり乱暴な形で網をかけてそれで天下り先を無理やり作ってきたという歴史があると僕は思うんですよ。
警察こそ、最大のヤクザ組織
今回もこの条例を見ると、ヤクザを対象としている法律としては、罰金50万円と懲役1年というのは、あまりにも軽いんですよ。だからヤクザは対象としていないんですよ。むしろ一般の人なんですね。特に建築関係とかお役所の仕事をもらっている会社は勧告を受けて、公表されれば、それで指名が停止されるわけです。指名停止する権限、勧告して公表する権限は、基準がこの条例の中に書かれていないんですよ。
なぜ勧告されるのか、なぜ公表されるのか、される側は聞く権利がないんです。非常に怪しげな条例です。
小口:なんでそんな怪しげな条例なんですか?って言わないんですか。
宮崎:誰が?
小口:誰かが。
宮崎:あなたが言えばいいでしょ。
小口:私が言ったところで変わらないですよ(笑)
須田:そこは明確な基準を設けないほうが役人にとって都合がいい。胸先三寸でやれるわけですから。要するにさじ加減なんですよ。お前のところはいいよ、お前のところはダメだよと。そうするとみんな警察官僚の方を向くじゃないですか。そこが狙いです。
大谷:震災で原発事故が話題になりましたけど、経産省における保安院という安全基準を決める人。そこと東電の関係とよく似ていますね。
宮崎:まったく同じ構造ですよ。よく似ている。よく似ている上に問題なのが、当然民間企業の場合は競争があるわけですよ。一方の側についたら、もう一方の相手側が潰される可能性があるわけです。そこまでの権限をこの条例では警察が持つわけになる。
小口:そっちの方がヤクザみたいですね。
宮崎:そうですよ。日本最大の暴力団は警察です。人の身柄は拘束できる、ピストルは持っているわけですし。それははっきりしていますよね。
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もし日本からヤクザがいなくなったら…
小口:じゃあ排除条例でもし本当にヤクザがなくなってしまったとしたら、日本はどうなってしまうんですか。海外マフィアが入ってくるんじゃないかとか、むしろ無秩序になるんじゃないかとか言われていますけど。
宮崎:だから、日本でヤクザがいなくなった時代を歴史に見なければいけない。それは全然の戦争が一番激しかった時代と、終戦直後の米軍進駐軍が進駐した時代。この時くらいなんですね。
その他は連綿とヤクザは歴史とつながってきています。それがあって、どんな時代でもヤクザは形を変えて生きていかざるを得ないと思います。ただ比較的、世界史の中でヤクザがいなかった一番わかりやすい例は、ポル・ポト政権下のカンボジア。これヤクザいなかったんですよ。
大谷:なぜですか。
宮崎:殺されちゃったからでしょう。それほど強権的な大量虐殺とかがあるとんでもない国ではヤクザがいなかった例はあるんですけど。だからものすごく逆説的な言い方をすれば、ヤクザがいるかどうかが文明の高さとも関係してくるのではないか。こう逆説的に言えるのではないか。
大谷:突き詰めると人権とか宗教の自由とかとも関係してくるのですね。
宮崎:今回の条例は、憲法が保障している基本的人権とか結社の自由とかいろいろなところに抵触すると思います。
僕が例を出したポル・ポト政権下のカンボジアというのは何も認められない国だった。だからヤクザも生きていくことができなかったということなんだろうと思います。
小口:ある意味、文明を図るものさしでもあるのではということなんですが、では番組をご覧の皆様からの質問をご紹介します。
大谷:千葉県の男性からです。どうして暴力団には在日外国人の方が多いんですか。
宮崎:社会方ドロップアウトした人たちが、結局食っていくために集まってくるときに生まれたのがヤクザだとした場合に、その中に在日の外国人の方とか、あるいは日本における差別を受けている人たちとかが多くなってきた。それは歴史的な流れにおける事実だと思います。日本社会の構造ゆえにあったと思います。
須田:そういったいろいろな意味での弱者。経済的弱者とか、あるいは社会的弱者であったりとか、そういった人たちがさきほど宮崎さんが言われたようにドロップアウトして、アウトローになるわけですよ。その組織的受け皿になってきたのが、ヤクザだったという経緯はありますよね。
大谷:それがなくなってしまうと困りますよね。
須田:闇社会という言葉自体はあまりいい言葉ではないですけれども、秩序立った闇社会という状況をよしとするか、あるいは混沌としたカオスな状況をよしとするのか、というところは選択肢としてあるんじゃないか。つまりヤクザを排除すれば全部清潔な、きれいな世の中になるかというと、決してそうはならないと思いますけどね。
大谷:東京都の男性からです。原発で働く被曝しているような労働者の斡旋や派遣をヤクザ関係の人がやっているという一部報道や噂があります。これは本当なんでしょうかという質問がきていますが。
宮崎:実際にそういうヤクザがいるかどうかは私は知りません。知りませんが、ただ私の父親はヤクザだったものですから、その経験から言います。家の近くで火事が起こったら、私の親父はふんどし一つで駆けつけて、水をかけるということをやりました。それはその後の仕事がもらえるかもしれないということもあるんですよ。
それと同時にやっぱり近所の家が燃えているのを見て、黙っていられるかいという気持ちもあっただろうと思います。
だからヤクザというものは、ある種そうした事故とかが起こった時に、それが拡大することを防ぐために利益を見ながら働くという行動様式はあったと思います。例えば今回、福島原発の問題でこういう事態に至ったときに、ヤクザがヤクザとしての本来的な機能を果たしていれば、もっと止まっただろうと思います。
神戸の大震災の時に、最初に動いたのはヤクザですから。ヤクザが動いて街のみんなが協力した歴史がありますから。ところがそれが1992年の暴対法以降、日本のヤクザはある面ではすごい規制を受けてきた。規制を受けて、そういうヤクザの持っているいいところを発揮できるまでに至らなかったというのが今回の実情なんじゃないかなと僕は思いますね。
須田:私はさきほど申し上げた、ヤクザ=トラブルシューターという構図を思い浮かべてもらったらわかりやすいと思うんですけども、やっぱり原発事故は巨大なトラブルですよ。そうすると、そこに人を派遣してくださいって言っても普通にやっていたんじゃ数が集まらない。作業が間に合わない。そうするとやっぱりヤクザに頼んだ方が、よりスムーズに一定の人員を確保できるわけですよ。その裏でお金が動いているのか、あるいは何らかの貸し借りの関係があるのかはわかりませんよ。ヤクザに頼んだ方がよりスムーズにそういった人集めができることを考えると、やっぱりどうしても依存せざるを得ないという状況があったんじゃないかなと思います。
宮崎:仮にいま原発で働いている、危ないところの人をヤクザの人たちが手配していることがあったとしたら、それはヤクザが悪いんじゃなくて、頼んだ方が悪いんですよ。そういう危険な作業を、危険とわかりながら頼む方が圧倒的に悪いわけです。危険については東電が一番知っているわけです。そんなヤバいことをやる奴は金で買うしかないんだという発想が彼らの中にあるからやっていることであって、ヤクザは買われている方なんです。そこはよく見ておかないといけないところだと思います。
大谷:東京都の男性から。ヤクザにはフロント企業があると言われています。そうった企業が一般の社会にかなり食い込んでいると聞きますが、見分け方はありますか。またどういった業種に多いんでしょうか。
須田:かつてはそもそもヤクザの仕事の中で土建屋さんとか金貸しとかありました。ところがいま貸金業についても認可制になっている。申請を持っていったときに暴力団組員の経験がある人が役員に入っていたら、ダメですよとか。あるいは土建屋さんについても、そういった人たちが入っていたら、公共事業は受注できませんよとかいう状況になって排除されたわけですよ。そういった排除をクリアするために暴力団組員を全部除いておいて、これはピカピカの会社ですよとしたことが、そもそも企業舎弟の始まりなんですよね。
排除をどうクリアしていくか。かつては暴力団やヤクザの人たちに近い職種に多かったんですけど、最近はまったくそんなことはなくて、さまざまな業界、私が知っているだけでもマッサージチェーン店とか。花屋さんのようなメルヘンチックなところに進出が進んでいます。
大谷:規制が厳しくなればなるほど余計見えにくくなることですね。
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暴力団は完全になくすべきか
小口:そろそろアンケートにいきましょうか。暴力団は完全になくすべきかというのが今回のテーマなんです。1.完全になくす、2.いまくらいでいい、3.もう少し大目にみる、4.増やす。どういうふうにお考えなのか。4つの中からクリックしてお答えください。ここは宮崎さんにもお伺いしていいですか。
宮崎:僕は暴力団と呼ばれる人たち、ヤクザとも呼びますが、「ヤクザもいる明るい社会」というのが、理想とする社会です。
小口:なんか国道沿いにそういう標語があったらドキっとしますね。はい、アンケート結果が出ました。「完全になくす」が4割、「いまくらいでいい」が35%。須田さん、いかがでしょうか、この数字は。
須田:息苦しい社会になるんじゃないかと思います、完全になくしてしまったら。そういうアウトローの人たちがいて、もちろん悪いこともする、必要悪として存在する方がむしろ一般市民にとっては生活しやすい社会になるんじゃないかなという感じはしますけどね。
宮崎:いまの数字はけっこう衝撃なんですね。「完全になくす」が過半数を割っている。いまの状況から考えると僕は6割~7割が「完全になくす」というアンケート結果が出てくるんじゃないかと思っていたんですね。ものすごい勢いで、この条例を作って、メディアも協力しながら、反暴力団、反社会勢力のキャンペーンを張ったわけですよね。その影響をあまり受けていないというふうにも思えますね。
ヤクザが悪いことをしたら見逃してくれと言っているわけではないんですよ。やっぱり厳しく、法に基づいて処すべきだろうと思うけれど、例えば紳助問題のように違法行為が明らかになっていないのに、それ以上の過分なバッシングはやっぱりすべきではない。言ってみれば人権はあるわけですよ。その辺への配慮は必要で、その配慮を破ったらそこには利益が待っているわけですよ。週刊誌が儲けた利益が。
大谷:質問がきています。自分の同級生には父親がヤクザの人がいるんですが、どういうふうに付き合っていけばいいんですか。
宮崎:同窓生にヤクザがいた場合に、同窓会に行ったらそれは密接交友になるのかという問題もあるんです。だから今回の条例は間違いなんです、こういうことで人の行動を規定するのは。人の行動は原則自由なんです。人と付き合う自由というのがないとですね、だめなんです、この国は。
須田:こういう考えじゃだめですか。ヤクザだろうが一般市民だろうが悪いことをしたら罰せられますよと、悪いことをしたら同列に処罰されますよということじゃだめなんですか。別に何もいまヤクザだけが優遇されていて、我々一般市民が不利益を被っているわけではなくて、何か悪いことをしたら罰せられる、そういう社会でいいじゃないですか。なぜそこだけ、ヤクザだからということだけで、過剰な罪を被せられるのか、不利益を被るのか、僕は一番よく理解できないんです。
小口:須田組組長がお怒りですよ、このあたりは。もう1問、編集長いきましょう。
大谷:東京都の女性から。指を詰めたくない場合、どうすればいいですか。
小口:こういう場面というのは宮崎さん、見たことはあるんですか。
宮崎:ヤクザにはヤクザの掟があって、その掟に違反した場合、指を詰めて謝罪するのも1つの表現方法として、習慣としてあるわけですね。それは自主的な意思がない限り、指なんて詰められないですよ。押さえつけて切ったら傷害じゃないですか。自分の意思があってこそ初めて成り立つ話であって、無理やり押さえつけて切ったりしたら、それこそ刑事事件になりますよね。
小口:宮崎さん最後に、何か言い残したことはありますか。
簡単に言いますと、警察はヤクザは7万人いると言っています。奥さんや子供、兄弟、お父さんお母さんもいるでしょう。そう考えると7万掛ける6~7人の人たちが関係者なんです。つまり50万近い関係者がいるわけです。その社会的な階層を排除しようとする考え方は非常に危険な考え方だと思いますね。ある意味ではナチス統治下のユダヤ人排斥法と根本では非常に似通っているものだろうと思います。それが日本の警察官僚によって行われていることが一番問題だと思います。
須田:さきほど宮崎さんがちらっと言ったことですが、なぜヤクザがいるのか、それはヤクザを必要としている人がいたから、あるいはヤクザを利用してきた企業や一般市民がいたから、いまヤクザがいるんだろうと思います。ですから特定の集団だけを批判するのではなくて、その社会構造そのものに根ざした問題ではないのかなと思います。そこだけを問題視して立法しても解決には繋がらないと思います。
小口:編集長、今日はお疲れ様でした。お付き合いいただいた皆様ありがとうございました。宮崎学さん、須田慎一郎さんでした。
■ 出演者プロフィール
画像を見る宮崎学
作家。1945年、京都府生まれ。早稲田大学法学部中退。1945年、京都・伏見のヤクザ、寺村組組長の父と博徒の娘である母の間に生まれる。早稲田大学在学中は学生運動に没頭し、共産党系ゲバルト部隊隊長として名を馳せる。『週刊現代』(講談社)記者を経て、家業の解体業を兄とともに継ぐが倒産。その後、 グリコ・森永事件では「キツネ目の男」に擬され、重要参考人Mとして警察にマークされるが、事件は2000年2月13日に時効を迎え真相は闇に消えた。1996年10月、自身の半生を綴った『突破者―戦後史の陰を駆け抜けた50年〈上〉 (幻冬舎アウトロー文庫)』で、作家デビューした。2005年には英語版『TOPPA MONO』も翻訳出版された。近年は、警察の腐敗追及やアウトローの世界を主なテーマにした執筆活動を続けている。近著に、「近代ヤクザ肯定論 山口組の90年 (ちくま文庫)」、「暴力団追放を疑え (ちくま文庫)」など。
画像を見る須田慎一郎
経済ジャーナリスト。1961年、東京生まれ。日本大学経済学部卒。経済紙の記者を経て、フリー・ジャーナリストに。「夕刊フジ」「週刊ポスト」「週刊新潮」などで執筆活動を続けるかたわら、テレビ朝日「ワイドスクランブル」、「サンデーフロントライン」、読売テレビ「たかじんのそこまで言って委員会」、ニッポン放送「あさラジ」他、テレビ、ラジオの報道番組等で活躍中。 また、内閣府、多重債務者対策本部有識者会議委員を務める(現職)など、政界、官界、財界での豊富な人脈を基に、数々のスクープを連発している。
・須田慎一郎の政経コンフィデンシャルブログ
画像を見る小口絵理子
アナウンサー。1998年、ニッポン放送入社。翌年から、朝のニュース・情報番組「高嶋ひでたけのおはよう!中年探偵団」昼のバラエティ「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」のアシスタントを担当。退社後は長野県庁の派遣研修員として中国・河北大学へ1年間留学。
大谷広太
BLOGOS編集長。1981年生まれ。2009年、「BLOGOS」を立ち上げる。
