by New America

Amazonが2021年6月30日に、連邦取引委員会(FTC)のリナ・カーン委員長を独占禁止法に関するAmazonへの調査から除斥するよう求める請願書を、FTCに提出していたことが分かりました。2021年6月に歴代最年少でFTC委員長に就任したカーン氏は、法科大学院生時代にAmazonを厳しく批判する論文で注目を集めるなど、反Amazonの旗手として知られている人物です。

Amazon Seeks Recusal of FTC Chairwoman Lina Khan in Antitrust Investigations of Company - WSJ

https://www.wsj.com/articles/amazon-seeks-recusal-of-ftc-chairwoman-lina-khan-in-antitrust-investigations-of-company-11625067962

Amazon seeks recusal of FTC chair Lina Khan in antitrust probes

https://www.cnbc.com/2021/06/30/amazon-seeks-recusal-of-ftc-chair-lina-khan-in-antitrust-probes.html

Amazon says new FTC chair shouldn’t regulate it because she’s too mean - The Verge

https://www.theverge.com/2021/6/30/22557456/amazon-lina-khan-recusal-petition-federal-trade-commission-antitrust

ジョー・バイデン政権は2021年6月に、コロンビア・ロー・スクールの法学者であるリナ・カーン准教授をFTCの委員長に任命しました。カーン氏はイェール大学の法科大学院生であった2017年に、「Amazon’s Antitrust Paradox(Amazon独占禁止法のパラドックス)」と題した論文を発表し複数の賞を受賞するなど、Amazon独占禁止法の問題に関する第一人者として有名です。

Amazon論文で知られる規制推進派学者が連邦取引委員会の委員長に就任 - GIGAZINE



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Amazonは、FTCに提出した(PDFファイル)請願書の中でカーン氏の経歴に言及し、「カーン氏はかねてから『Amazon独占禁止法違反の罪を犯してきたので解体されるべきだ』とたびたび公言しており、これは同氏がAmazonに対する調査に取り組む上で必要な公平性を欠いていることを示しています」と主張しました。

Amazonの広報担当者であるジャック・エバンス氏はCNBCの取材に対し、「いかに大企業であっても、公平な調査を受ける権利を持っています。カーン氏のこれまでの活動や公の場での発言は、同氏がFTC委員長として実施する調査が結論ありきだということを示唆しているため、今回のような案件に携わるべきではありません」と述べました。一方、FTCはコメントを控えました。

FTCの元顧問弁護士であるウェイン州立大学のスティーブン・カルキンズ教授によると、FTC委員の除斥に関する請願が成功したことはほとんどないとのこと。例えば、2007年にFTCの調査を受けたGoogleは、当時のFTC委員長の夫がGoogleの問題に関与したEUの法律事務所に勤務していることを理由に除斥を求めましたが、FTCはこれを却下しました。また2010年にはIntelが、FTC委員の1人が同社の法律業務に携わった経歴を持つことを理由にその委員の除斥を求めましたが、これも却下されています。

ただし、FTCの委員長が過去の経歴により調査から外された前例も少ないながら存在します。1966年に製薬業界の問題が取り沙汰された際には、当時のFTC委員長が議会のスタッフとして同様の調査に数多く携わった経験があることから、裁判所が調査に参加すべきではないと判断したことがあります。また1970年には、当時のFTC委員長が行ったスピーチの内容に虚偽広告問題に関する見解が色濃く表れていたことから、同じ問題の調査に参加すべきではないとの判決が下されました。

また、2021年6月29日にはFacebookを独占禁止法違反で訴えていたFTCが敗訴するなど、FTCの攻勢に対してIT企業が反撃に転じる場面も見られるようになっています。

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IT系ニュースサイトのThe Vergeは、「FTCがFacebookを相手にした裁判で明らかになったように、裁判所の判断次第ではFTCの力が大きくそがれることがあります。しかし、カーン氏はホワイトハウスと議会の両方の支持を得てチャンスをものにしたので、Amazonの旗色は悪いと言えるでしょう。従って、今回の請願書の真の目的は、Amazonにはことあるごとに立ち向かう気概があること示すことだと思われます」と指摘しました。