ゆったりしたロングドライブに似合うキャラクター

 なぜいまSUVが流行っているのだろうか? 販売現場やメーカー、はたまたオーナーの声を聞く限り、走りと積載性、居住性などのバランスが取れている「マルチに使えるクルマ」というイメージ、ミニバンやワゴン系軽自動車、コンパクトカーなどに比べて洗練されたイメージがある点などが、その理由として語られる。もちろん、そこまで確固とした狙いがなくクルマを選ぶ人にとっては、人気が高いものを選んでおけば間違いないという考えに至り、だからSUVが売れる、というサイクルに入っていることもあるだろう。

 だが、当然SUVにはシッカリとツール然としたメリットがある。そうはいっても百花繚乱状態のSUVゆえ、車種によってではあるのだが。そんなSUVならではのよさを、今回三菱RVRに乗って感じた。えっ? RVR? エクリプスクロスじゃなくて? なんて声も聞こえてきそうだ。確かにスバルと双璧を成す4WD王国の三菱にあって、やや影が薄いモデルであることは否めない。

 だが、初代が1991年に登場し、一時途絶えるも、30年に渡ってその名前を維持してきたクルマだ。ましてやSUVのなかでも、今流行のクロスオーバーSUVとしてのポジションを最初からキープしてきたモデルである。他モデルの影に隠れるのはなんとも寂しすぎる、というわけで、今回少し遠出をし、RVRは本当に注目されずにいていいクルマなのかを考えてみた次第。

 結論から言ってしまえば、RVRはもっと注目されるべきクルマであった。では詳細をお伝えしよう。

 東京都内を出発し、二泊三日で長野県を巡るというスケジュールのちょっとした取材旅行。場所もそうだが時期的に微妙なため、タイヤはスタッドレスをチョイスした。出発時点の登場はシトシトと雨がふり、路面はウエットだ。首都圏に在住のクルマ乗りはご存じのことと思うが、首都高速は曲がりくねった上に路面は荒れ、ある意味クルマの評価にはもってこいの道路である。たかだか60km/hという制限速度でも、4輪がギャップやアンジュレーションに晒され、クルマによっては安定感を損なう。

 そんなシーンでのRVRはゆったり感を伴う乗り味で、ドライバーに忙しさを感じさせない。路面追従性に優れたスポーティモデルの安定感とは違うが、誤解を恐れずにいえば多少のギャップをギャップと感じさせないようないなし方をする。ウエットゆえに、低速でもコーナリング中の継ぎ目ではわずかにタイヤが外側へとスライドするが、それさえもゆとりをもって対処できるような懐の深さがある。簡単にいえばシャープではないが動きが掴みやすい。シャープでないからといって、ステアリングのセンター付近が甘かったり、切り出し時のノーズの動きが緩慢だったりはしないのでご安心を。

 じつはドライバビリティに優れたスポーティな走りをこよなく愛する私なのだが、こうした乗り味もまた、アリなのだなと感じさせられた。着座位置&視界の高さ、運転席から感じられる雰囲気と走りのテイストがマッチしているからなのだろう。自然とガンガン走るというより、ロングツーリングを楽しもうという気分にさせられた。

 搭載されるエンジンは1.8リッターのNA。そう、いまでは結構珍しいといっていいNAエンジンなのだ。エクリプスが1.5リッターのダウンサイジングターボと2リッターディーゼルターボをラインアップするため、このあたりも大きな違いだ。このエンジン、決してパンチはないが、日本の道なら必要十分。NA特有のおだやかな特性で扱いやすく、実際2名乗車+カメラ機材や2泊2名のスーツケースを積んだ状態でも志賀高原を上まで登ったのだが、とくに不足は感じなかった。

 組み合わされるトランスミッションはCVT。エクリプスクロスの8速ATに比べて少し寂しい感じがするかもしれない。確かにダイレクト感などを考えれば8速が有利だろう。だがこのCVT、6速のMTモードが用意されており、たとえば高速走行中に前が近づいたシーンや、ワインディングでコーナーに進入する際、パドル操作でシフトダウンをしたときのエンジンブレーキの利きが非常によかった。そういった意味ではドライブをイージーにしてくれるのだ。

悪路走破性の高さは「足を伸ばそう」という気持ちを後押しする

 そして今回、志賀高原を登っていくと、雪解けのウエット、シャーベット、そして一部圧雪路にも遭遇した。ここで効いてきたのが4WDを含めた悪路走破性だ。RVRにはボタン式のドライブモードセレクター装備されており、FF、4WD、4WD LOCK(センターデフロック)の3つが選択できる。今回はさほどの雪ではなかったので、4WD LOCKの出番はなかったものの、やはりイザというとき気軽に4WD切り替えができることは安心感に繋がる。たとえ都市部であっても、雪の上り坂で信号停車した際、4WDモードがあるとないとでは大違いだと言えよう。

 そんな4WDモードと共に、RVRの魅力といえるのがアプローチ&ディパーチャーアングル、そして最低地上高だ。アプローチアングルは20.1度、ディパーチャーアングルは31.4度、さらに最低地上高は205mm(Gグレード)という数値。長野の観光スポットを巡るなかで、駐車場への段差や、ハードな砂利道なども走行したが、気を遣わずともクルマを擦ることのない頼もしさは、より色々なところに行ってみようという気にさせる。ちなみにエクリプスクロスの最低地上高は175mmなので、ほぼ同じようなボディサイズでも、RVRはより悪路寄りのキャラクターといってもいいだろう。

 さて、クルマ好きが長野で走るといえば、美しい景観が楽しめる山道、「ビーナスライン」は外せない。周囲の山は若干白いものの、志賀高原と違い路面は完全ドライ。ダイナミックにアップダウンのあるコーナーを堪能することができた。最低地上高も高く、全高も高めに設定されているSUVゆえ、やはりキビキビとした走りとはいかない。だが左右コーナーの切り返しでも、グラッと不安定になるような動きはない。また、上り下りのコーナーであまりステアリング特性が変わらない点も好印象だ。結果、美しい景色を望みつつ、ゆったりとドライブを楽しむことができた。

 さて、そんなRVR。現行モデルは登場からすでに10年が経過していると聞くと、そんなに経つ? と感じるのが正直な印象だ。実際、その間のマイナーチェンジなどにより見た目は大きく変わり、先進安全装備&運転支援装備が採用され、スマホ連携ナビがオプションで設定されるなど、もはや別モノといっていいクルマに進化している。そう、現行デリカD:5が登場したときに、これでフルモデルチェンジじゃないの? と感じたものと同じである。

 使い勝手に関しても、特筆すべき飛び道具的なウリはないものの、ラゲッジの使い勝手や収納力、インテリアの収納などに何ら不満はない。しかしながら販売台数でいえば2020年3月で、240台と非常に寂しい。SUVブームのいま、中身を知ればもっと売れていいというのが正直な印象だ。

 三菱のデザインコンセプトである「ダイナミックシールド」に基づいた、男臭いともいえる力強い見た目、それを裏切らない悪路走破性をもち合わせた走り。SUVに何を求めるかは人それぞれで構わないし、メーカーがSUVという括りをどう捉えるかも幅があって問題ない。だが、いざというときの「本物」がもつ安心感は、ユーザーにとって大きなメリットになる、そんなことを感じさせてくれたRVRだった。