U-23日本代表の森保一監督【写真:Getty Images】

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【現地発・識者の視点】U-23アジア選手権で史上初のGL敗退 「失敗したのは森保本人」

 U-23日本代表は現地時間12日、U-23アジア選手権のグループリーグ第2戦でシリアと対戦し、1-2で敗れた。

 初戦のサウジアラビア戦(1-2)に続く2連敗で、1試合を残して大会史上初のグループリーグ敗退を喫した。

 東京五輪イヤーの幕開けとともに日本の“緊急事態”が訪れたなか、かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を6大会連続で取材している英国人記者のマイケル・チャーチ氏が現地取材。森保一監督にとって国際大会の舞台は「力量を超えていた」と指摘し、「遅いタイミングでの変化が必ずしもネガティブだとは限らない」と解任を推奨。そのうえで、「同じ轍を踏まない確約が必要」と後任選びに慎重な判断が求められることを強調した。

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 2020年の東京五輪に向けたチーム作りにおいて、U-23アジア選手権の2連敗でより一層の熱を帯びた世間の論調を踏まえても、森保一監督が今後どのように役割を全うしていくのかを見守ることは難しくなった。日本は今大会「最も刺激的なグループ」に組み込まれており、森保監督が困難な仕事に直面していたのは間違いないが、それを考慮しても今回の結果によって指揮官が“呼び出し”を受けることには正当性があるだろう。

 仮に森保監督が欧州組の主力を招集でき、より強いチームを連れてきていたとしても、タイでの戦いを容易く乗り切ることはできなかっただろう。サウジアラビアは2年前にインドネシアで行われたU-19アジア選手権の王者であり、その大会でも日本を撃破。当時のメンバーが今回も名を連ねていた。

 カタールもまた、ホスト国として迎える2022年W杯に向けて準備を進めており、若手メンバーの飛躍により、アジア大陸のリーダーの一角であることを証明している。決して過小評価されるべきではない国だ。

 しかし、こうした任務の難しさに関係なく、失敗したのは森保本人だ。彼自身で承認したわけだが、より良いチームを選択すべきだった。欧州でプレーする選手たちを招集するために、JFA(日本サッカー協会)にもっと掛け合う必要があったのだ。

森保監督の指導力に疑問符 「グアルディオラでさえやるのに…」

 だが、問題は他にもあった。森保監督の戦術は崩壊状態にあった。サウジアラビア戦の黒星に関してはポジティブな要素も数多くあった一方、2試合とも敗戦に直結するミスがあった。シリア戦においては、日本は平凡だった。FWは活気がなく、動き出しの欠落はシリア側にあまりにも簡単に余裕を持たせすぎた。インテンシティー(プレー強度)もなく、推進力もなく、アタッキングサードの脅威もなかった。

 シリア戦に向けた森保監督の采配は、不十分な点があまりにも多かった。彼は対戦相手を見くびり、サウジアラビア戦の黒星による悪影響を考慮することよりも、オプションをテストすることに集中しすぎた。敗戦という結果によるグループリーグの立場に対して臨機応変に対応するのではなく、元々のプランに固執していた。

 これらの問題は、指揮官が浸透させた文化によるところが大きい。

 対照的な指揮官であるフットボール純粋主義者のジョゼップ・グアルディオラ監督が分かりやすい例だが、彼ですら選手たちに戦術的ファウルを容認している。対戦相手のリズムを崩し、脅威を排除するためだ。グアルディオラでさえやるのに、森保監督が選手たちにイエローカードを覚悟するプレーを教え込むことに、一体なんの害があるというのだろうか。特にシリア戦の終盤で起きた結末のように失点するよりも、よっぽどマシだ。

 また、森保体制は他の指揮官なら浸透させることのできるスマートさに欠けている。Jリーグで残した功績に対しても、どんどん懐疑的な視線が向けられ始めている。「結果がすべて」の国際舞台は、彼の力量を超えていた。A代表と五輪代表の掛け持ちを彼に託したことは間違いだった。

 現在の問題は、彼が務めている役割の一方、または両方を剥奪すべきかどうかだが、五輪代表を解任されるような人物がA代表でも継続性を発揮できると考えるのは難しい。一つの役割を取り払い、もう一つは維持することになっても、ロッカールームでの彼への信頼は失墜するだろう。

日本代表の“政権交代”を推奨 「ハリルホジッチの時のように…」

 もちろん、両方ともにポストを空けることは、A代表以上に五輪代表で大きな混乱を引き起こすはずだ。日本はW杯アジア2次予選で4連勝しており、最終予選に進むことが実質当確しているが、3月と6月に予定されている残りの4試合は、新監督の“準備期間”に充てられる可能性もあるだろう。そして、西野朗監督がバヒド・ハリルホジッチ監督の後を引き継いだ時のように、遅いタイミングでの変化が必ずしもネガティブだとは限らない。新鮮なアプローチは、選手たちを後押しすることができる。

 しかし、森保監督の解任を決断した場合、同じ轍を踏まない確約が必要で、両方の役割を満たせる人物が求められる。どちらのチームにも、ひたむきな舵取り役を据えなければならない。

 五輪代表監督として、もしJFAがタイサッカー協会から引き抜くことができるのなら、西野監督が有力候補になるだろう。JFAの幹部もU-23アジア選手権に帯同しタイにいるため、西野監督と話し合いの場を設けること自体は容易いはずだ。唯一の問題は、西野監督自身が再び五輪代表監督として、押し寄せる注目や期待に自らを晒したいのかどうかだろう。

 A代表はどうするのか? 長々とした候補者リストが用意されていることに疑いの余地はなく、W杯アジア最終予選が9月から行われることを踏まえると、適切な判断を下すのに十分な時間がある。急いで抑えておく必要はない。過去数年にわたり犯したミスは、まだ取り戻せる。(マイケル・チャーチ/Michael Church)