弘中綾香アナ

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 最近、女性アナウンサーの中で何かと注目されている人物がいる。テレビ朝日の弘中綾香(28)だ。現在、彼女は「激レアさんを連れてきた。」という人気番組にレギュラー出演している。手書きの説明ボードや手作りの模型などの小道具を駆使して、一般人の珍しい体験談を紹介するプレゼンターの役目を果たしている。

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 ただ、最近の活躍はそれだけにとどまらない。2019年7〜8月にAbemaTVで「ひろなかラジオ」という番組が放送された。彼女にとって初の冠番組である。ラジオに憧れている弘中が自由にトークをしたり、いろいろなことに挑戦したりする番組だった。テレビではタレントの引き立て役に回りがちな若い女性アナウンサーが、ここまではっきりと主役を張る番組は珍しい。

弘中綾香アナ

 さらに、驚くべきことに、8月31日深夜には「弘中綾香のオールナイトニッポン0」(ニッポン放送)というラジオの冠番組が放送された。テレビ朝日の系列局ではないラジオ局で、テレビ朝日のアナウンサーが冠番組を手がけるのは異例のことだ。「オードリーのオールナイトニッポン」にゲスト出演した際のトークが評価されて、この番組が実現したのだと思われる。彼女はテレビ局に所属する会社員でありながら、その枠を超えた活躍をしつつある。

 だが、実のところ、彼女に対する世間の評価は大きく二分されている。週刊誌の「好きな女子アナ・嫌いな女子アナ」アンケートでは、「好き」と「嫌い」のそれぞれで上位につけている。はっきりと好き嫌いが分かれるキャラクターの持ち主なのだ。

 色白でベビーフェイスの外見とおっとりした話し方という特徴から、かわいらしくてちょっととぼけた性格であると思われやすい。だが、実際の彼女は一筋縄ではいかない強烈なキャラクターを持っている。

 入社試験の面接で面接官の1人として彼女と出会った人物が、ラジオでその衝撃を語っていた。「ロンドンハーツ』「アメトーーク!」などを手がけるテレビ朝日の名物プロデューサーの加地倫三だ。彼は面接時の彼女について「フリートークが抜群に面白かった。タレントになったら(「踊る!さんま御殿!!」の)踊るヒット賞を取るタイプ」と絶賛していた。数々の芸人やタレントを見てきた加地が、そのトークスキルに太鼓判を押している。

 弘中はもともとアナウンサー志望ではなく、アナウンサースクールに通ったりするような準備も一切していなかったという。それでもテレビ朝日で内定を勝ち取ることができたのは、それだけキャラクターとしての魅力が突出していたのだろう。

 弘中のトークが面白いと言われるのは、その主張の強さと大胆さによるものだろう。彼女が話すことはしばしば「女子アナらしくない」と言われることがある。その外見や女子アナという肩書きとは裏腹に、弘中はかなりはっきりとモノを言う。

 弘中は「女性らしさ」や「女子アナらしさ」を押し付けようとする世間の風潮に対しても、強い違和感を表明している。彼女は「夢は革命家」と公言している。ここで言う「革命」とは政治的行動のことではなく、自分の発言や行動を通して世間の風潮を変えていきたい、ということだ。見た目からは想像もつかない芯の強さを持っている。

なぜ嫌われるのか

 だが、弘中の革命運動には誤解がつきまとう。なぜなら、彼女が今こうやって注目されているのも、「女子アナなのに女子アナらしくないおかしなことを言っている」というところが面白がられているという側面があるからだ。「らしさ」を否定しようとする弘中の活動は、「らしさ」を押し付ける社会の中だからこそ風変わりに見えて目立っているのである。

 世の中では分かりやすいものの方が人気が出やすい。自分がブサイクであることに劣等感を持っている芸人がイケメンや美人に嫉妬して悪態をつく、というようなキャラクターは誰にでも自然に理解できる。

 だが、弘中のように、美貌にも社会的地位にも恵まれていると思われている人が、その特権的な立場に立ったままで「女性らしさを押し付けるのはおかしい」と正論を訴えても、意図が伝わりづらいし、共感されづらいのだ。彼女を嫌う人がいるのは、そういうところが原因でもあるのではないか。

 ただ、裏を返せば、そこがまさに彼女の面白いところでもある。私が思う弘中の魅力は、誰かが作ったお決まりのパターンに乗らず、思ったことをあっけらかんと口にすることができるところだ。タレントでもこういうことができる人はなかなかいない。

 弘中にとって不運だったのは、入社したテレビ朝日には系列にラジオ局が存在しないということだ。ラジオ局があるところに入っていれば、今頃はラジオの帯番組を持っていて、稀代のラジオスターとして名を馳せていただろう。

 最近になってようやくその個性が認知されつつある弘中の革命はまだ始まったばかりだ。「女子アナなのに面白い人」ではなく単に「面白い人」として、彼女の活躍を末永く見守っていくことにしたい。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)など著書多数。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年9月16日 掲載