日本がホワイトリストから韓国の除外を閣議決定した8月2日、韓国では一日中、蜂の巣をつついたような騒ぎが続いた。日本のホワイト国排除に加え、北朝鮮からのミサイル挑発、株価暴落までが重なり、韓国人を衝撃と憤りに追い込んだ当日の事件を時系列で整理してみよう。

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北朝鮮のミサイルと株価下落で始まった一日

▶ 午前2時59分および3時23分
「北朝鮮が東海上へ2発の短距離ミサイルを打ち上げ」

 今年に入って5度目、6月30日の板門店(パンムンジョム)米朝韓会合以降、3度目のミサイル発射だった。

▶ 午前7時30分
「大統領府の鄭義溶(チョン・
ウィヨン)安保室長の主宰で係省長官議開催」

 この後、大統領府報道官は「新型短距離弾道ミサイル(SRBM)である可能性が高いと見ている」「関係長官は北朝鮮が再び短距離発射体を発射したことについて強い懸念を表明した」などの内容のメッセージで出入記者団に発送し、記者会見に代えた。大統領府は北朝鮮を非難する表現は極力自制するなど抑制的対応を貫いた。

▶ 午前9時
「株式市場開始」

 KOSPI(韓国総合株価指数)は前日より1%以上も下落した1995.31で取引開始。

 為替取引も開始直後、ウォン/ドルのレートが1196.5を記録し、ウォンが年初来安値を記録する。

▶午前10時21分
「日本の世耕経済産業大臣が記者会見。直前の閣議で韓国
をホワイトから外すことが決定されたことを表」

 韓国メディアが一斉に速報を出し、「日本の二次報復が始まった」と非難した。

▶午前11時
「韓国大統領府報道官が『深い遺憾』の声明文を発
表」

 声明文で「対話と疎通による問題解決のために韓国政府は最後まで開かれた姿勢で臨んできた」「今後は日本の不当な措置に断固たる姿勢で対応していく」と強調する。

「直後、韓の政界から日本を糾するが相次ぐ」

文喜相(ムン・ヒサン)国会議長:「深い遺憾であり、安倍内閣に対する失望を禁じえない。これから起きる外交的、安保的、経済的波及に対するすべての責任は安倍内閣にあることを明確にしたい」

共に民主党(与党):「韓国経済を揺さぶろうとする経済侵略行為で決して容認できない」「第2の独立運動を行う覚悟で断固と対応していきたい」

自由韓国党(野党第一党):「(日本の)誤った決定を韓国国民と共に厳しく糾弾し、これを直ちに撤回するよう強く要求する」

正しい未来党(野党第二党):「韓国国民は日本の妄動をこれ以上我慢しない。日本政府は今後発生するすべての事態に対し、相応の責任を負わなければならない」

「加害者・日本が居直って、大口叩く状況を座視しない」

▶午後2時
「大統領府が臨時閣議を開催
、テレビが初の生中継」

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は冒頭発言で「(日本の措置は)利己的な迷惑行為であり、国際社会の指弾を受けるだろう」「状況を悪化させた責任が日本政府にあることが明確になった以上、今後起こり得る事態の責任も全面的に日本政府にあるという点を明確に警告する」「加害者である日本が居直りで大口を叩く状況を座視しない」「日本政府の措置によって私たちも段階的に対応措置を強化していく」「二度と日本に負けない。我が企業と国民にはその困難を克服する力がある」などの対日強硬メッセージを発信。

 韓国メディアは、「文大統領が日本に対して全面戦争を宣布した」と評価。

▶午後3時30分
「株式市場終了」

 KOSPIは前日より0.95%(19.21ポイント)安の1998.13で取引終了し、2000線防御に失敗。

 国民年金などの年金基金が2011年以降8年ぶりに4000億ウォンの買い越しに回り、指数防御に孤軍奮闘したにもかかわらず、外資系の売り越しで、7カ月ぶりの安値を記録。

 外国為替市場もウォン/ドル、ウォン/円レートが高騰し、ウォン相場が数年ぶりに最低を記録。

 ドル相場は2016年1月以降、2年7カ月ぶりの最高水準である1198.0ウォンで、円相場は前日よりも3%以上急騰した1120.5ウォン(100円あたり)で取引を終え、2013年9月2日(1116.2ウォン)以降最高値を記録。

▶午後3時30分
「国会本
議開催」

 ファスト・トラック法案処理問題をめぐる与野党の葛藤で4月以降中断されていた韓国国会が、日本に対する「糾弾声明」と補正予算処理のために118日ぶりに開会。

▶午後5時
「日本の『ホワイト国
排除』対応に対する関係部署の合同ブリフィング開催」

 洪楠基(ホン・ナムキ)副首相兼企画財政部長官は、日本に対する対応措置として、‘本をホワイト国から除外する手続きを開始、日本への観光、食品、廃棄物などの分野の安全措置を強化、WTOへの提訴や世論戦を通じた国際社会の共感形成に努力、ご覿犯鏗欧鮑脳化するための政府支援策作りなどを発表

▶午後5時30分
「大統領府の金鉉宗(キム・
ヒョンジョン)安保2室長ブリフィング」

「(日本と)敏感な軍事情報共有(GSOMIA)を維持することが正しいのかを含めて総合的な対応措置を取る」「政府は大企業、中小企業、そして国民と力を合わせ、今回の危機を日本に対する『鵜飼経済体制』(韓国が日本から核心素材や部品を輸入して完成品を輸出しても利得は日本に奪われる体制)の輪を断ち切る機会としたい」

▶午後8時56分
「2019年度補正予算案が100日ぶりに国会
通過」

 5兆8269億ウォンで最終可決された補正予算の中には、日本のホワイト国排除による企業被害支援予算2732億ウォンのほか、1兆8000億ウォンの目的予備費、別名「日本対応用の補正予算」が含まれた。

 このほかにも、ソウル江南区の17カ所の通りにかかっている万国旗から日章旗を取り下げる姿、左派市民団体が中心となった「安倍糾弾市民行動」が日本大使館前で記者会見を開き、激しく日本政府を糾弾する模様、労働者の町・蔚山(ウルサン)に「NO安倍通り」が造成されたというニュース、韓国の子どもたちに人気のアニメーション映画「ドラえもん」の韓国公開が延期されたというニュースなどが韓国メディアを飾った。

 韓国メディアから見る限り、8月2日は一日中、韓国社会の全域で反日の狂風が吹き荒れたように思われた。

それでも賑わう和風居酒屋

 しかし、この日の午後、韓国の若者のメッカの弘大前(ホンデアップ)では、この狂風とは全く違う韓国若者の姿が発見できた。

 夕方6時を少し過ぎた時刻、友人と一緒に日韓カップルが経営する弘大前の「オクタ」という居酒屋を訪ねた。20人程度が座れるこじんまりとしたこの店は、日本現地の雰囲気を味わえるメニューと酒で韓国の若者に人気の店だ。メニューは日本語をそのまま韓国語で表記してあるだけで、料理に対するいかなる説明も書かれていてない。中央のカウンターには日本各地の地酒がずらりと並んでいて、カウンターのまん中に置かれた小さくて透明な冷蔵庫は日本製のビールでいっぱいになっている。

 私たちが入店した時はがらんとしていた店は、30分も経たないうちに満席となった。7時を過ぎると店の外で待っている客も現れ始めた。客の大半は、日本料理が好きな韓国の若者だ。

 隣のテーブルに座っていた20代前半の若い女性は「日本旅行で食べた羽付餃子が食べたいときによく訪ねる」と言った。最近の日本製品不買運動について聞くと、「確かに私も周囲の雰囲気に圧倒されて日本旅行は控えている」と言いながらも、「居酒屋には親しい友達と密かに来られるので、噂されることもなく大丈夫」という返事が返ってきた。最近、韓国の若者の間ではひそかに日本文化を楽しむ「シャイジャパン」現象が巻き起こっているという韓国メディアの記事が、ふと頭に浮かんだ。

 午後9時ごろ、店を出て「韓国のジャパンタウン」の異名を持つ弘大前を一回りしてみた。「京都」「男」「東京夜市」「ゆめの横町」など、日本語の看板が不夜城を成す弘大前の居酒屋の中を一通り覗いてみたが、金曜の夜らしく客でごった返していた。

 韓国のロッテアサヒの関係者によると、スーパーなどに入る日本ビールの注文量は大幅に減少したが、居酒屋などの飲食店への注文はほとんど変わっていないのだという。社会からの「反日」の圧力が猛威を振るう中、韓国の若者たちの間では「シャイジャパン」族の台頭が当分続くように感じた。

筆者:李 正宣