「急がば学べ」、北陸能開大パネルディスカッション「ロボットの進化でものづくりはどう変わるのか」で富山大・不二越・YKKの3氏が講演
記念式典のあと、筆者こと森山和道による記念講演に続き、パネルディスカッション「ロボットの進化でものづくりはどう変わるのか?未来を切り拓くエンジニアのために」が行われた。パネリストは、富山大学工学部教授 神代充氏、株式会社不二越 上席執行役員 国崎晃氏、YKK株式会社執行役員 工機技術本部 製造技術開発部APグループ長 澤田喜和氏の3氏だ。
筆者は今回、基調講演のほか、司会としてパネルディスカッションに携わったので、あくまで司会の目から見たレポートということになるが、パネリスト3氏のお話をざっくりまとめておきたい。壇上でのメモを元にした、やや不十分なレポートである点はおわびしておく。
●人に優しい動作、自由に動ける移動技術で人と共存するロボット

また、今や世界の工場である中国においても少子高齢化が進行中で、今後は生産年齢人口が減る。だが誰かがモノを作らなければならず、それはロボットであると産業用ロボットの価値を述べた。
いっぽう自動化の進展という観点でロボットを見ると、従来は単純作業を行なっていたが、ロボットは徐々に複雑な作業をこなすようになっている。

一方、ロボットの技術向上に頼るだけではなく、製品設計やプロセスを改善し、自動化しやすくするアプローチも進めている。また、ロボット運用技術は人に依存するので、社内教育にも力を注いでいるとのことだった。

布地やテープなどをハンドリングする技術は内製で開発
YKKならではのファスナーの布地や、窓につける部品などは形状も材質も異なり、ロボットにはハンドリングがしにくいワークだ。そのハンドリング技術はYKKで内製開発しているとのこと。今後も産学官で開発されている様々な技術を取りこんでいきたいと講演を締めくくった。
●パネルディスカッション 原理原則、実地経験、チームワークが重要

パネルディスカッションの様子
このあとは議論となった。富山大・神代氏は主に企業と大学との立ち位置の違いについてふれた。YKK澤田喜和氏は「人とロボットの共存がこれからの流れであることを確信した」と語り、不二越・国崎晃氏も、ほぼ同じ悩みを共有していると述べた。
また実際に手足を動かす実習を重視している北陸能開大の学生たちが学ぶべきこととして、国崎氏は「本当に身になるのはOJT。実地で手を汚す経験なしでは力はつかない」と述べた。YKK澤田氏は、YKKは(海外で製造するアパレル企業に部品を提供するため)海外の拠点が多いと紹介し、「様々な得意分野を持つ人が集まってチームワーキングで仕事をするときにも原理原則を学んでいないとその力を集めらない」と述べて、原則を学ぶことの重要性を強調した。富山大学・神代氏は、いつも「ギブアンドテイク」が重要だと学生たちを指導しているという。ロボットはシステムだ。システムを作っていく上では一人ではカバーしきれない数多くのスキルを持ち寄り、得意不得意を互いに補う必要がある。そのときに「ギブアンドテイク」が必要になるというわけだ。それは社会に出たあとでも重要であり、サークル活動などを通した分野を超えた交流の重要性を伝えているという。
このほか、基礎的な機械工学の重要性や、「答えのない問題」にチャレンジするマインドの重要性、夢を持つことの大事さ、そしてロボットならではの信頼性高いものづくりや、家族の一員としてロボットを迎えられるようになればといった未来の夢など、幅広い話題が展開するディスカッションとなった。
●実習ではロボットによる自動化を想定した機材改良も

北陸職業能力開発大学校の教え「急がば学べ」
会場では北陸職業能力開発大学校での総合制作・開発課題実習などによる成果が展示された。いずれも学生たちによるもので、実習を通して機械そのほかへの理解を深めることを目的としている。なおロボットについては、実際の産業用ロボットSIerの仕事に限りなく近いようなカリキュラムを通して学んでいるとのこと。

ロボットハンドリングを想定した、NC旋盤への材料取り付け過程での着座ミスを防ぐためのパワーチャック3爪治具の最適化

CADを使って検討し、3度の傾きが良いと判断したとのこと

くり抜きもできるように工夫したNC発砲スチロールカッター。

将来的には建築用模型を自動で簡単に作れるようにするとのプランで「第10回とやまビジネスプランコンテスト」で学生部門優秀賞を獲得

魚津市民バスロケーションシステム。現在は教員が開発・改良・保守を続けているとのこと

GPSを使ってバスがどこにいるのか、いつどこを通過したのかウェブで閲覧可能にした
●システムエンジニアはまだまだ必要、簡単なロボットも
ロボット導入にはシステムエンジニアが必要だ。筆者も出席した懇親会では「省人化・自動化ニーズは高いが、現状のロボット技術では『エンジニアの数=ロボットが導入できる数』になってしまっていて、ボトルネックがある。エンジニアの育成と、誰もが簡単に使えるロボットが必要だ」といった議論が続けられていた。北陸能開大「生産ロボットシステムコース」の学生たちがその一端を担ってくれることを期待している。
(森山 和道)
