「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「井戸」の「井」、まちなかを表す「市井」の「井(セイ)」。八月一日は限りある資源、水の大切さを再認識する「水の日」。八月七日までは「水の週間」です。かつて井戸は、さまざまな用途にあわせた水を、私たちに与えてくれました。



「井」という漢字は象形文字。

木で「井」の字型に組んだ井戸のふち、「井桁」の形を表しています。

ちなみに「刑罰」の「刑」という字も、かつてはこの「井」を書いていました。

そこで、区別するために「井」の真ん中に点を書き入れるようになります。

この点は、井戸の水を汲む甕を意味しているといわれますが、ご存知のとおり今では、「丼」という別の字として使われています。

古代社会の人々は、湧き水や近くの川の一部をせき止めた場所から生活用の水を得ていました。

地下水を使うため地面を掘り削ってつくる「井戸」は、七世紀から八世紀にかけて一部の人口密集地で作られ始めます。

それ以前、弥生時代から古墳時代末期にかけても、当時の遺跡などから「井戸」らしきものが見つかっていますが、これらは祭祀のために使われていたという説があります。

八百万の神を信じた、いにしえの人たち。

彼らは、大地から穀物の芽が出てくる様子を見て、命を育む神が地下の世界に居ると考えます。

そうした神々を招いて豊作を願い、収穫への感謝を捧げるためには、この世への通路をつくらなければならない。

そう考えて井戸を掘ったのです。

ではここで、もう一度「井」という字を感じてみてください。

農耕儀礼を中心とした祭祀に使い、井戸から汲んだ元日の「若水」で一年の邪気を払い、禊のために水を浴びて心身を清める。

神さまの力を得るための井戸は、やがて、暮らしを支える水源として使われるようになり、庶民の日常風景に欠かせないものになっていきます。

女たちの井戸端会議に子どもの水浴び、スイカを吊るして冷やす夏。

井戸水の温度は一年を通じて十七度前後、夏はほどよい冷たさを保ちます。

家庭で使う井戸を作る職人が少なくなった今、井戸は贅沢な装置のひとつ。

この夏、旅先や故郷で井戸を見つけたら、中をそっとのぞいてみてください。

ひんやりとした水の匂いと神さまの気配が感じられるかもしれません。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

『ものと人間の文化史 150 井戸』(秋田裕毅/著 大橋信弥/編 法政大学出版局)

8月4日(土)の放送では「次」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。



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聴取期限 2018年8月5日(日) AM 4:59 まで

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<番組概要>

番組名:感じて、漢字の世界

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/