オフィシャル誌編集長のミラン便り(9)

「明日は明日の風が吹く」とは映画『風と共に去りぬ』の有名なセリフだが、試合前夜のミラン、そして本田の気持ちは、毎回こんな感じかもしれない。きっと明日の試合こそ、やってやるぞと信じて......。

 今日3月11日(日本時間3月12日未明)、ミランはチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝進出をかけてアウェーの地でアトレティコ・マドリードと戦う。ホームの1戦目を0−1で敗れているミランは、最低でも2ゴール以上を決めて勝利を収めなければいけない。しかし過去のデータを見てみると、CLにおいてミランがホームで負けた場合、これまでただの一度しか次のステージに駒を進めていない。それも1995年、オーストリアのザールブリュッケンに対してだ。

 加えて土曜日のリーグ27節、ウディネーゼ戦で負けた(0−1)ことが、ミランの選手たちによりプレッシャーをかけている。このウディネーゼ戦に向けてセードルフはほぼ1日しか準備期間がなかった。多くの選手が3月5日の各国での代表戦に出場していたので、選手たちが本当に全員揃ったのは前日の金曜日だったのである。我らが本田圭佑も10時間以上をかけて日本とイタリアを往復したあとのフル出場となったが、やはりどこか疲れが残っていたようだ。

 本田は確かにマックスの調子ではない。しかしそれは決して彼だけのせいではない。ミランというチーム自体の不調が彼に大きくのしかかっている。このコラムを読んでくださっている皆さんから多くの質問をいただいている。非常に嬉しい限りだが、その質問のほとんどが「なぜミランはこんなに弱くなってしまったのか?」というものである。シンプルだがなかなかに根本的な疑問だ。

 この現象が始まったのはそう遠い昔のことではない。ミランが最後にスクデットを勝ち取ったのは2010〜2011シーズン。この時のミランにはチアゴ・シウバ、イブラヒモビッチ、ピルロ、ネスタ、セードルフらそうそうたるメンバーがプレイしていた。その翌年もアッレグリ監督のもと、ミランはシーズンのほとんどを首位でひた走っていたが、終盤に来てトーンダウンし、最後に優勝をユベントスに奪われてしまった。

 このシーズンの終わりに、UEFAは、クラブチームの収支のバランスをとるように定めた、ファイナンス・フェアプレイを導入した。これにより、ミランは赤字削減のためパリ・サンジェルマンにイブラヒモビッチとチアゴ・シウバを売らなければならなかった。その前年に、ミランはピルロの契約を更新せず、直接スクデットを争うライバルであるユベントスに移籍金ゼロで彼を渡してしまうというミスも犯していたのに、またもチームの看板選手を失ってしまったのである。

 つまり今の不調の原因は、経済的な問題から、テクニカルな選手が少なくなってしまったことにある。彼らが抜けた穴の補強は、エル・シャーラウィ、デ・シーリオ、バロテッリなど、優秀だが経験が少なく、チームが成長させていかなければいけない若手選手が中心だった。ただその方向性は決して悪くなかったと思う。昨シーズン、3位になることができたのがそのなによりの証拠だ。シーズン後半には今のチームにあった戦術も見つけることができた。

 しかし今シーズンに入ってから、アッレグリはまずそのシステムを4−3−3から4−3−1−2に移行、その後チームと彼の間に齟齬(そご)が生まれるようになった。このことが、もともとあった問題と相まって、今シーズンのこれほどの不調を呼び起こしてしまったのだ。

 いつもの年に比べれば、今のミランが非常に不甲斐ないのは確かである。この25年間、世界で最も多くのタイトルを勝ち取り、本田がそうであったように、多くの選手たちがロッソネロのユニホームを着ることを夢見てきたのがミランというチームの本当の姿だ。しかしミランは絶対このままでは終わらない。そのためには本田に一日も早くチームに慣れ、調子を上げてミラン復活に貢献して欲しい。

ステーファノ・メレガリ(『Forza Milan!』編集長)●文 text by Stefano Melegari
利根川 晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko