凍える海で多くの命が失われた船の事故で、運航会社のトップに実刑判決が下った。

 現場にいなかったとしても安全管理に責任を負うべきだとする当然の司法判断だ。

 北海道・知床半島沖で2022年4月、乗客乗員26人を乗せた観光船が沈没して全員が死亡・行方不明となった事故で、業務上過失致死罪に問われた運航会社社長桂田精一被告に、釧路地裁は禁錮5年の実刑判決を言い渡した。

 判決は法定刑の上限にあたる。裁判所は、取り返しがつかない事故の被害を重く見たのだろう。

 弁護側は、事故を予見できなかったとして無罪を主張した。被告は公判で「船長から『海が荒れる前に引き返す』と聞き、大丈夫だと思った」と述べたが、当日の気象情報の確認状況などは「覚えていない」と繰り返した。

 これに対し、判決は「強風や高波が予想される状況で運航すれば、死亡事故が発生することは容易に予見できた」と認定した。そのうえで、「自己の責任の重さを真摯(しんし)に受け止めているようには見えない」と厳しく指摘した。

 事故の責任を死亡した船長に押しつけるような態度は、職責への自覚を欠いている。遺族も反発しており、強い非難に値する。

 長野県軽井沢町で16年、大学生ら15人が死亡したバス事故では、運行会社の社長を禁錮3年とする実刑が確定している。裁判では、運転手の技量を確認せずにバスを運転させた過失が認定された。

 旅行や観光に携わる企業の経営陣が、安全管理を現場任せにするようなことはあってはならない。人の命を預かっているという職責を改めて自覚する必要がある。

 知床の沈没事故を巡っては、事故の3日前に国が実施した船の検査で、ハッチの不具合を見逃すというミスもあった。船はこのハッチからの海水流入で沈没した。国も責任を免れない。

 国は事故後、安全管理を怠った運航事業者に対する罰則の強化など、66項目の再発防止策をまとめた。小型船については、事業を登録制とし、監督権限を強めた。

 にもかかわらず、沖縄県名護市辺野古沖で3月、高校生18人を乗せた船2隻が転覆し、女子生徒らが死亡した事故では、船長が必要な登録を怠っていたという。

 夏休みが迫っている。各地で観光事業の安全点検を徹底することが重要だ。知床事故の教訓を今一度、思い起こさねばならない。悲惨な事故を繰り返さないことが、遺族の切なる願いであろう。