そんなに買ってどうするの? 「渡航自粛要請」でも日本を訪れる中国人観光客の“お目当て”…ドラッグストアで爆買いする“2つの市販薬”とは
2010年代中盤以降、中国人観光客による「爆買い」がテレビのワイドショー等で多数取り上げられた。当時の専門家の分析では「日本製品は中国国内でステータスになっていて、それを知人・親戚に配ると大層喜ばれる」などとされていた。その後、中国のGDPも上がり、円安も相まって日本旅行がよりカジュアルなものになった。それに加え、中国製品の質が上がったため、最近の中国人観光客の旅の目的は、「爆買い」から「体験」に移ったという分析もされている。【中川淳一郎・ネットニュース編集者】
【写真】かつては大混雑も…渡航自粛要請で中国人観光客が減った「銀座」「新宿」の風景
大事なお客様ではあるが…
さて、中国政府による渡航自粛要請によって中国人訪日客はかなり減り、爆買いも落ち着いた印象があるが、そんな中、知り合いのドラッグストア店員から、「いえいえ、いまでも中国人は爆買いしていますよ」との話を聞いた。買うものは薬だけでなく、コスメ、オーラルケア商品、リップクリーム、湿布など様々だそう。それ自体は店にとっては嬉しいもの。免税店であることを示す表示もあり、外国人(特に中国人)の商品購入を促進する意図はあるだろう。大量の商品を一度にレジまで持ち込まれると、後ろに長い行列ができ、商品補充などを担当するスタッフまでレジ業務に駆り出す必要はあるが、ともあれ爆買い客は大事なお客である。

しかし、その一方で、困ることはあるという。というのも、中国人観光客には“特定の商品”が大人気で、大量に買われて、品切れになってしまうこともあるからだ。先の店員はこう語る。
「解熱鎮痛剤の『EVE』(エスエス製薬)と風邪薬の『パブロンゴールドA』(大正製薬)がよく売れます。どうやら中国のネットの掲示板で、この2つが良いと評判になっているようです」
どちらも指定第2類医薬品である。昨今は若者のオーバードーズ(薬物の過剰摂取)が問題となっているため、法改正(指定濫用防止医薬品制度)により、ドラッグストアでは年齢や他の店での購入状況、症状などを確認することが義務付けられている。また、過剰摂取を防ぐ国の指針に基づき、店側も原則として「1人1箱」の販売制限を設けている。だが、時に爆買いする中国人観光客はカゴに8箱入れたりするのだという。
絶大なる日本の薬への信頼
「“購入できるのは1人1箱まで”と告げると、家族3人が出てきて、『私たちは4人だ。だから4箱大丈夫だ』といったジェスチャーをする。それは良しとしましょう。しかし、会計を済ませて一旦店の外に出て、再び店内に戻るやもう4箱を持ってくる。あなた達はすでに買っているではないか、と言うと『私は買ってない。別の人だ』といったことを英語で言う。防犯カメラの映像を出すのもおかしいですし、あちらは鉄の意志で何としても買おうとする。国の規制に基づいたガイドラインであることを伝えても棚に返そうとしないため、根負けして売ってしまったことはあります」
大抵の場合は「1人1箱」を守ってくれるとは言っていたが、時にこんな客もいるようだ。筆者がこの話を店員から聞いた翌週、『パブロンゴールドA』をこの店に買いに行ったら売り切れていた。そこで、その店から一番近いドラッグストアへ行き、同薬を購入したのだが、店員に『〇〇(最初のドラッグストア)では売り切れていましたよ』と言ったら店員はこう言った。
「じゃあ、次はこちらにいらっしゃるかもしれませんね。足りますかねぇ……」
日本の薬への信頼性から中国人に人気なのは喜ばしいことだが、中には中国に帰ってから転売をする者もいるのだという。薬は突然の発熱などで必要に迫られることもあるだけに、ドラッグストアも品切れを起こさぬよう在庫管理を厳格にしているのだが、想定外の爆買いをされてしまうと本当に必要な人に渡らない、というジレンマもあるようだ。
ネットニュース編集者・中川淳一郎
デイリー新潮編集部
