全日空のビジネスクラスのドア付き個室座席。幅を従来の2倍に広げた(3月、東京都港区で)

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 航空、鉄道各社が、広々としたシートや個室タイプなど新型の座席を相次いで導入している。

 「タイパ」(時間対効果)を意識する人が増えたのを背景に、移動中にしっかり休息を取ったり、仕事を済ませたりしたいといった、需要の多様化に対応するためだ。人口減で乗客数の大幅な伸びが期待できないため、客単価を引き上げる狙いもある。(仁木翔大)

横幅2倍

 全日本空輸は4月、国際線の中型機の座席を刷新した。エコノミークラスのリクライニング幅を1・5倍の約15センチに拡大し、快適に座れるようにした。ビジネスクラスのドア付き個室型座席は、横幅を2倍の約1メートルに広げ、乗客がゆったりと眠ることができる。

 JR東日本が2027年春に首都圏〜北東北で運行を始める予定の夜行特急列車は、全席を1〜4人用の個室にする。室内の床は平面のスペースにもでき、足を伸ばしてくつろいだり、寝転んで休んだりできる。

 ビジネス客の利便性向上を図る取り組みもある。JR東海は10月から、東海道新幹線で1編成あたり2室の個室を導入する。周囲を気にせず、オンライン会議に参加しながら移動するといった利用を想定する。日本航空は、国内線では主要路線だけだったファーストクラスを、27年度から国内全路線へ拡大。ビジネス客や訪日客の需要増に対応する。

需要変化

 新型座席導入の背景には、新型コロナ禍を経て、客層や需要が大きく変化したことがある。例えば、オンライン会議の普及によって出張客が減った一方、移動中もオンライン会議に参加したいという需要が増えた。こうしたニーズを拾い上げ、満足度を高められれば、乗客が減っても客単価を引き上げて収益を確保できる。「豪華な座席を設けることで、ブランド価値が向上する」(日航広報)との声もある。

 競争環境や各社の稼ぎ方が変わったとの見方もある。東海道新幹線の個室は、03年に廃止して以来、23年ぶりの復活となる。廃止当時は、より多くの座席数を確保する方が収益につながると考えられていた。「かつては均質な座席でより速く、より多くの客を輸送することが競争の中心だった。今は多様化した需要への対応がより重要だ」(JR東海広報)という。

 宇都宮大の古賀誉章准教授(環境心理学)は「移動中の選択肢が広がれば、利用客はよりニーズに合った移動体験ができ、満足度も高まる。稼働率や収益の改善につなげられる可能性がある」と指摘している。